サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～

　畑中華菜子は、サンタ服に着替えていた。
　ラーメン屋台な為か、サンタ服はチャイナバージョン。
　普段から着慣れた赤いチャイナ服の襟元と袖口に、サンタ服らしいふわふわもこもこがあしらわれている。
　頭には左右でくるくると巻いたシニヨンに、サンタ服とおそろいの布で作られたお団子ネット。白いふわふわもこもこで縁取るのももちろん忘れていない。
　すべて、ラーメン屋台にセットされていたのだ。
　当然のように葛西一義の分もあった。
「おっさんもそれなりに見えるかね」
　サングラスはそのままに、ビシッとサンタ服を着込む一義。
「完璧アル。さあ、急いで作るアル、そろそろ夜もふけて、夕食の時間アル」
　うなずく葛西に、華菜子はいそいそと汁の用意をする。
　サンタの屋台には、すでに汁の仕込みもバッチリ終わった寸胴が置かれていたが、華菜子はレンゲで一口味見してみて、頷く。
　昔ながらの醤油ベースの汁だった。
（鶏がらから出汁をとって汁を作る時間はちょっと無かったから、助かったアル）
　本来なら、汁を作るだけでも数時間かかるのだ。
　だがそこはそれ、サンタの屋台。
　華菜子が欲しいものも、葛西が必要とするものも、きっと揃ってる。
「サンタさんが用意してくれた食材の産地はどこアルかなぁ？」
「フィンランドだろ」
「なぜアル？」
「サンタっつーたら、フィンランドに住んでるって有名だろ」
「鶏や葱やナルトに麺まで揃っているアルか？」
「まぁ、サンタだし、この際サンタの国ってことにしとくか。おじょーちゃんなら、どこの食材だろうと美味しく料理できるだろ？」
「もちろんアル！　きっとサンタさんが丹精込めて育てた小麦で麺は打たれているに違いないアル。より一層美味しくなるアル」
「肉体労働は任せておきな」
　ビッと親指を立てる一義に、華菜子は頷いて食材を切り分ける。
（サンタさんひとりでラーメンはいっぱい配れないから、私たちにサンタになってって事アルね）
　サンタクロースが二人の前に現れてくれたことを、華菜子はそんな風に思う。
　みんなに幸せを届けよう、そう思いながら、華菜子は手馴れた手つきで仕込みを終えてゆく。
　一義は華菜子が準備を追える瞬間を見計らって、チャルメラを吹いた。
　続いて華菜子もチャルメラを吹き、町行く人々に呼びかける。
「サンタさんのクリスマスラーメン、ただいま無料配布中アルよ～、御代は要らないアル～！」
　そんな二人のラーメン屋台に、どっと人が押しかけた。

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