サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～｜リアクション

サンタクロースの贈り物～クリスマススペシャルラーメン～

「さーて、今日もいい汗かいたな」
　御剣刀は流れる汗をタオルで拭う。
　夜の公園で剣術の腕に磨きをかけていたのだ。
　竹刀をしまい、ブランコに座らせておいた人形のルヴィアを抱き上げる。
「今日の練習はどうだった？　昨日よりも速度が上がった気がするんだが」
　ルヴィアに話しかけると、どこと無く嬉しそうに見えた。
　肩に乗せ、岐路につく。
　素振りを終えた直後は汗をかくほどに熱かったのに、５分も歩くともう寒さが刀をふるわせた。
「寒いな。流石にこの時期は冷え込むもんだ」
　空を見上げると、夜空がやけに綺麗に映る。
　空気が冷えて、澄んでいるからだ。
　ルヴィアの瞳にも、夜空が映り込む。
　その瞳を、綺麗だなと思いながら、刀は岐路を急ぐ。
　と、どこからか、懐かしい曲調が流れ出す。
　チャルメラだ。
　音はどんどん近づいてきて、目の前の曲がり角からクリスマス仕様のラーメン屋台が曲がってくる。
「クリスマスラーメン、無料配布中アル！　暖かくて、美味しいアルよ～！」
　一義が屋台を引き、華菜子が呼び込みをしていた。
「よう畑中、猫島軒出張か？」
「サンタのラーメンアルよ」
「何にしてもありがたいよ、一杯もらおう」
　寒さで凍えた身体が、屋台の熱気で一気に熱を帯びる。
（ルヴィアは、カウンターの上で大丈夫か）
　カウンターの隅に座り、刀はルヴィアをカウンターの上に座らせる。
「エプロン使うといいアルよ」
「助かります」
　華菜子が気を利かせて子供用の紙エプロンを刀に手渡す。
（これならルヴィアも汚れないな）
　きゅきゅっとエプロンをルヴィアに巻いてあげて、刀は出来上がったラーメンを口に運ぶ。
「うん熱い、美味い！　流石だな畑中」
「そういわれると作った甲斐があるアル。サンタさんのくれた食材を余すとこなく使うアルよ」
「昔ながらの醤油ラーメンだな。味噌や豚骨も美味いけれど、醤油のこのコクも捨てがたいよな」
「ラーメンはみんなを幸せにする最高の料理アル♪」
「違いない。ラーメンお代わり、それと、餃子とかある？」
「もちろんアル。から揚げとおにぎりだって完璧アル」
「じゃあ餃子を一皿、それとチャーシューも追加で」
「了解アル」
　スープを一気に飲み干して、刀はふと、視線を感じてそちらを見る。
　そこには、なんだか不機嫌そうなルヴィアが。
「あー……いや、その。忘れていたわけじゃないぞ？」
　美味し過ぎてついつい、ルヴィアを見ずに食べ続けていたとか何とか。
　どことなくジト目をしているルヴィア。
　冬の寒さとは違う何か別の寒気が、ツツーっと刀のこめかみを伝う。
「ほら、これなら文句ないだろ？　エプロンもあるし、大丈夫だろ」
　ルヴィアをカウンターの上から、刀の膝の上に抱き下ろす。
　足をぱたつかせるような雰囲気で、ルヴィアが嬉しそうにしている気がした。
「可愛いお嬢さんに、これはおまけアル」
　華菜子がイチゴのムースを取り出した。
　ピンク色のムース地に、ルビーのように赤いゼリーがかけられ、イチゴとミントがちょこんと乗っている。
　より一層、ルヴィアが喜んでいる気がする。
「可愛いな」
　刀の言葉はデザートにか、それともルヴィアにか。
「そして、お代わりと餃子、出来上がったアルね」
「お、早いね。頂きます！」
　さっきよりもさらにペースを上げて食べる刀。
　育ち盛り食べ盛りの男子高校生には、この位は朝飯前なのだった。　

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