合法的におっぱいを触れるお仕事がありました｜リアクション

合法的におっぱいを触れるお仕事がありました

序：乳絞り、しよう！

「皆、来てくれてありがとう」
　三田さんは、呼び出された寝子島の住人達に頭を下げる。彼は「単刀直入にだが」と前置きした上で今回の指令を下す。
「寝子島の住人から搾り取らんと夢魔の大群が押し寄せる。今回は彼女らを退散させるべく牛乳を情熱的にたくさん搾っていただきたい。やり方がわからない人は私が教える。何か質問はないかな？」
　三田さんの問いかけに最初に手を上げたのは小柄な恵御納夏朝。彼女は澄んだ瞳でこんな質問をしてきた。
「何で夢魔対策に牛乳……？　タマクライのミルと何か関係があるのかな？」
　三田さんは無言でしばらく考え、「誰だこんな純粋な子連れてきたのは」とがっくりと膝をついた。
「ともかく、牛乳を沢山運ぼう！」
　やる気があるのは実によいことである。
「夢魔は牛乳大好き？　夢魔……エロス……牛乳……はっ！？」
「そこまでだ」
　夏朝の横でツインテールを揺らし、何かを悟った猫屋敷姫がぽん、と手を打ち何か言わんとした時点ですかさずつっこみを入れるのは御剣刀。だが、彼の内心は……？
（おっぱい触れるって話だったが牛のおっぱいでした、か。うん仕方ないね）
　はあ、とため息をつく辺り武士道な彼も思春期の少年なのである。
　そして、その桃色な思考を隠そうとしないのが横嶋下心。彼は牛がのんびり草を食むこの牧場の中心で、大いに叫んだ。
「わーい、おっぱいもみもみできる～！　と思ったら牛さんでした。ちっくしょー、うったえてやる！！」
　一連の動きが熟練したコメディアンのように見えたのは、きっと気の迷いだと思いたい。だが、次の瞬間には気分を切り替え、爽やかな笑顔になる下心。
「ちょっと思っていたのと違うけれども、あんな風にお願いされたら断れないよね！」
　彼は「桃色破廉恥小隊隊長、横嶋下心！新しい扉を開いてまいります！」と気合十分。因みに誰を訴えるのかは未知数である。

　と、ここで約一名強張った表情の女の子が１人。とある神魂トラブルで下心と色々あった羽生碧南である。

　――えっ、『おっぱい触り放題』ですって……？！

　話を聞いて過去の事を思い出し芋づる式になにか間違った方向に妄想しているらしい。彼女はきっ、と下心を睨みつける。
（女の子のおっぱいは夢と希望と謎と神秘が柔らかく包まれてるのよ！　それを下心満載なエロ男どもの獣欲にまみれたごつごつとした邪悪な手で蹂躙されるなんて……！！）
　ぎゅっ、と手を握り締め怒りに燃える碧南。何故か睨みつけられ、妙に慌てる下心。彼は必死な様子で碧南を宥めようとする。
「み、碧南ちゃん落ち着いて！　ほら、牛さんたちが脅えてるよ！」
「う、牛さん？！」
　ここで、初めて周囲で美味しそうに草を食んでいる牛さんを見る碧南は、はっ、となった。そして三田さんの事情を説明すれば、自分のじゃなくてよかった、と顔を赤くしつつも心からほっ、とする碧南なのであった。
（うん、君のおっぱい揉み放題だったらすっごく良かっ……いや、ナンデモアリマセン）
　そして下心はふと湧いた言葉を飲み込み、平静を装うのだった。
「乳絞り？　だったら任せてくれないか？　バイト先は自動搾乳機だけど手絞りも教わったんだ」
　おーっと！　ここで頼もしい発言が飛び出した！　現在進行形で牧場でアルバイトをしている鎌八まもるだ。ちょっとカオスになりかけたがここで軌道修正されるのか？　しかし何故か手がわきわきしている。
「いきなり牛相手も緊張するだろ？まずにゃんこたんので試してみよっ」
「えー、そんなにポニテビンタが欲しいの？」
　と、ばっさり突っ込んだ響タルトの笑顔に、まもるの表情が強張った。因みに言った側からポニテが顔面にぶち当たってまもるが悶絶したのだがこれはこれでしょうがないだろう。

このページにイラストを設定する