THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

【転】

「ふぉぉぉぉ、神・降臨なのだ～！」
　雪かきならぬ“布団かき”の作業人数不足で招集された後木真央は、羽毛布団の山を見上げて歓喜した。
「冬の怪人コタツムリに勝る万人の使役者冬の超越者にして何物もその支配から逃れられぬ邪神オフトゥーンさまが大・量・降・臨！　勿論貴方の支配下に入りますのだヨロコンデー！」
　後木は全力疾走ののち、大跳躍！
　そのまま邪神オフトゥーンに体を投げ出した！
「いあいあ！　オフトゥーンいあいあ！　あ～温いのだ～♪」
　羽毛布団特有の軽さと保温性に、後木の正気度は一気に葬られていく。
「そこぉ！　遊んでないで作業に加わってくれたまえ！」
　班長の伊賀の怒声が飛ぶ。
　後木は布団の山に潜り込むと、オレンジと緑の柄の羽毛布団一式を迷うことなく強奪。
「ありがとうございましたオフトゥーンさま、真央ちゃんは平信者として勤めを果たして参りますのだいあいあ♪」
　そう言って足取り軽やかにそれを寮内へ運んでいった。
　おそらく、自分の部屋で使うのだろう。
「おい、後木。悪いことは言わない。まずは天日干しするんだ。あと、カバーは洗ってキレイにしないとな。汚いオフトゥンで寝るとあとが辛いぞ～？」
　虚金の言葉に妙な説得力があった。
　どうやら彼は以前、汚れた布団で寝起きをしていたらしく、大変な目に遭ったそうだ。
　それを聞いた後木は神妙な顔付きに。
「む、虫さんとか付いてるのだ……？」
「付いてるかもなぁ？」
　虚金の言葉に、虫嫌いの後木は飛び上がった。
「ま、真央ちゃん、邪神オフトゥーンさまの身を一度清めるのだ……！」
　後木は慌てて洗濯場へ向かっていった。
「あとで雑木林に縄張って、即席の物干しスペースを作っておくか」
　あまり体を動かすのは苦手な虚金。
　これ幸いと口実に、彼は黙々と布団干しスペースを拡大していくのであった。