THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　一方、こちらは星ヶ丘寮。
　旅鴉月詠は用意されたトラックの荷台に乗り込んだ。
　愛用のスケッチブックを抱えて空を眺める。
「ふむ、もうすっかり冬だな。こころなしか空気が澄んでいる気がする」
「旅鴉、本当に荷台でいいのか？」
　このトラックの所有者である八神修が旅鴉に声を掛けた。
　お金持ちはスケールが違った。
「この荷台、寝子祭の射撃部新聞部合同イベに使った資材が積み込んであるから、狭い上に揺れるぞ」
　八神の言う通り、ダンボールや木材が荷台に括りつけられている。
「別に構わないさ。たまには荷物の気持ちになって揺られるのも悪くないよ。違った視点から物事が見えることで、また新たな描写ができるだろうからね」
　早速、彼女は収まりのいい場所に猫のように潜り込むと、鉛筆を取り出して目に入ったものをスケッチしだした。
「私としては、所有者が荷物同然の扱いを受けているのに助手席にちゃっかり座る厚かましいことなんてできない」
「俺を気遣ってくれるのか、ありがとう、旅鴉」
「礼なんていらないよ、八神。これは君の所有物なんだから、大手を振って助手席に座りたまえ」
　それ以降は絵に没頭する旅鴉。
　八神は「旅鴉らしいな」と呟くと、意気揚々に助手席へ乗り込んだ。
　自分の使用人に運転させ、２人もまた猫鳴館へ向かうのであった。