THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

【承】

　猫鳴館の鍋パーティの連絡を聞いた者たちも、足早に冬空のもと食材を抱えて動き出した。
　御剣刀は青いツナギにブルゾンというガテン系ファッションに身を包んで家を出た。
「あの夢以来、青いツナギに目が吸い込まれる……。それに妙に寝付きが悪い……。美味い鍋をたらふく食ったら寝付きが良くなるかもな」
　潜在意識が彼の眠りを妨げていた。あんなことやこんなことがあったことをうっすら覚えたまま現実世界へ戻ってきてしまったからね、仕方ないね。
「またあんな夢見るんじゃないかって思ったら、寝るに寝れないよ……」
　寝不足で気怠い身体に気合を入れると、参道商店街で豚肉と鶏肉を大量に購入。
「俺も含めてたくさん食うだろうからな。多めに買ってくか」
　気前よく肉をたくさん買い込んだあと、出汁用の昆布を乾物屋で購入。
「坊主、美味い味噌が欲しけりゃキャットロードのここへ寄りな！　いいことあるかもな！　ＹＯＹＯ！」
　白ひげをたくわえた眼鏡のおっさん（店主）が親切に住所を書いてくれた。
「……ありがとうございます　意味分からないけど」
　妙に馴れ馴れしい乾物屋の店主に紹介された味噌専門店で味噌を買い込むと、いよいよ猫鳴館へ向かおうとする。
　その時、ふとケーキ屋のノボリが目に留まった。
「……新しい寮長が決まったからお祝い持っていった方がいいな。クリスマスシーズンだしケーキでも持っていくか。苺ショートを買っていこう」
　いいことってこういうことか？
　御剣は思っていた以上の出費は今日は目を瞑り、これから起こるイベントに心を躍らせていた。
　そこへ、空のリアカーを引っ張りながら走る日暮ねむるが御剣の後ろを猛スピードで追い抜いていった。
「日暮！？　そんなに急いでどうした！？」
　思わず呼び止めてしまう御剣。
　神魂事件ならばすぐにでも出向いて行こうと思ったのだ。
　日暮は急ブレーキをかけると、呼吸も乱れずに笑顔で御剣に声を掛けた。
「やぁ、御剣くん。奇遇だね。……もしかして、御剣くんも猫鳴館へ？」
「ああ、食材とこれ、新自治会長就任のお祝いを持参して」
「さすが御剣くん、気配り上手だね……。僕はそんなところまで気が回らなかったよ」
「何かあったのか？　神魂事件か？　まさか……」
「おっと、そんな怖い顔しないでよ、御剣くん。うん、まぁ、神魂の影響かどうかは定かじゃないけど、サンタからのプレゼントのおこぼれを貰いに行くところなんだ」
　御剣は怪訝な顔で日暮の顔を見詰めてしまう。
「サンタ？　マジでサンタか？」
「うん、本物らしいよ、サンタだってさ」
「……サンタぱねぇな」
「ほんとぱないね……」
　神魂があるならサンタもいるか、と思ってしまった２人は思わず苦笑い。
「でもそれとリアカーが何の関係が？」
「御剣くん、僕はさっきいったじゃないか。おこぼれを貰いに行くって」
「リアカーで運ぶものなのか、それ？」
「うん、だって羽毛布団だってさ、プレゼントって」
「なんだと……！？」
　御剣は衝撃を受けた。
「乾物屋の店主め……、いいことってこのことだったのか！」
　まさか乾物屋の店主の正体がサンタだったかもしれない可能性なんて、御剣はこれっぽっちも思っていなかった。
　御剣のテンションは一気に急上昇！
「寝不足の俺に布団ゲットのチャンスが到来！　日暮、こうしちゃいられない。一刻も早く猫鳴館へ急ぐぞ！」
「う、うん……、わかったよ」
　御剣のやる気に気圧されながらも、日暮はリアカーを引きながらキャットロードを御剣とともに駆け抜けていった。

「「待ってろー！！　羽毛布団ーッ！！」」

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