ラン・ラン・ラン！　｜リアクション

ラン・ラン・ラン！　

　駅前のドラッグストアは、無国籍な人ごみであふれかえっていた。
　日が暮れて、お互いの顔もわからなくなるような時刻にも関わらず、人が絶えることがない。
　近頃ブームの爆買いなのか、それとも寝子島が気に入ったのか。
　あらゆる人々が入り乱れ、カオスと化していた。

　誰もが誰も構いつけぬ買い物客たち。
　そうした中で、八神修は無言のまま、大型量販店に入っていく。
　正装のきっちりしたスーツ姿。両手には衣料品の袋。
　顔に焦燥の色も浮かべず、まっすぐ店内に入っていく。北口。

　ほどなく、反対側、駅前口から一人の少年が出ていく。
　ミリタリージャケットにジーンズ、目深に被られたハットにスクールのロゴ。
　黄昏の色に紛れ、彼が先ほどのスーツ姿の少年であると気づくものはいない。
　
　油断なく周囲を伺いつつ、修は雑踏に身を紛らわせる。
　できればスーツはコインロッカーにでも隠したいところだが、それも状況を見て。
　極力、目立たないようにしたい。服装も、ありふれたアメカジに統一した。
　ライダーズジャケットが目を引いたが、匿名性を重視した。
　あえてのデチューン・ファッション。

　彼もまた――追われていた。

「誤解を解くのは……至難だな」
　家の用事で本土に戻っていた修は、駅前で警察の誰何にあった。
　あからさまに妙な様子。何が原因だかわからないが、まともにつきあうだけ此方が不利になる。
　修に躊躇いはなかった。
　あっさり逃走を選択。
　走りながら逃走経路を確認し、目立つスーツ姿を攪乱に利用するため、途中で着替える策を思いつく。
　手慣れた感じで警察から逃れるわが身を思い、苦笑した。