お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

「尚さん、シャンパンはお好きですか？ ……あれ、うまく開かないな」
「貸してみてください、ちょっとしたコツで開きますよ―――あっ」
　ぽん、という小気味よい音とともに、コルクの栓が勢いよく飛んだ。栓は放物線を描いて、寧々子の前のスープに着水した。

「……ご、ごめんなさい！」
　大橋先生が頭を下げた。
「いえ、大丈夫ですよ」
　寧々子は顔に着いたスープの雫を拭きながら、笑顔を作って答えた。
　
（あの女性のうっかりミスのとばっちりなんて、やってられないわ）
　寧々子のイライラは頂点に達しつつある。
（というか、あの二人の周りにギャラリー的なものがいるような……何、コントなの？）
　気にしないよう意識して食事に戻る寧々子。隣のテーブルでは―――
「このドレッシングは振らないといけないんですね」
「待って尚さん！蓋がついてない！」

「……ご、ごめんなさい……」
　大橋先生と一緒に、高良も頭を下げた。
「いえ、気にしてませんよ」
　寧々子は顔にかかったドレッシングの雫を拭きながら、引きつった笑顔を作って答えた。

「我慢……できるかぁぁぁ！なんなのよ、一体！」
　手洗いに立ったとき、寧々子は思わず怒りを口に出した。
「それには、色々と事情があって……」
「え？」
　店内の隅のテーブルの人々に話しかけられ、寧々子は振り向いた。

「実はあの女の人は、俺たちの先生なんだ」
　龍目豪が、スコーンを食べながら事情を話す。
「なんとか相手の人とは会えたけど、そのあとがまだ心配で」
　と、羽生碧南が続ける。
「きっと神魂の影響で、急にミスを連発するようになったみたいなんスよ」
　と、霧桐舞衣。
「もし協力してくれたら、食事代はおごるよ！この人が」
　八十八旗信彦は、隣の桜栄理事長を指さした。理事長はすっかり出来上がって、引率の体をなしていないが―――
「そういうわけで、店としても黙認してるんだ。協力するかはご自由に……」
　店長の七條蛟も口を挟んだ。
「おごりだなんて、そんなことで……。大体神魂って何……？」
　急に色々なことを言われて、寧々子は混乱する。
「ごめんね、巻き込んでしまって。でも、皆大橋先生のことが心配なんだ。自分なら女性のうっかりも『可愛いな』と笑って受け止めるけど、相手の人はどうだろう？」
　ニコ・ライニオが穏やかに話すのを聞いて、寧々子も力を貸す気になってきた。大橋先生の気持ちを考えると、ちょっと涙腺がゆるくなる。
「そう、先生も大変なのね……よし、私だって応援しちゃうから！」