お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

　瓢のろっこん〈悋気の独楽〉が発動し、店内に局所的な竜巻が発生する。
「いけない！」
　瓢を警戒していた刀や豪たちが慌てたが、遅かった。持続は短かったが、二人のテーブルにまで、皿やコップが落ちたりする被害が及んだ。

「すぐ掃除しますから！」
　店長の七條蛟は、すぐにモップを持って飛び出した。
（いけない、雰囲気が台無しだ……）
　心配して二人の様子を横目で見ると―――

「怪我はありませんか？コップが割れたから注意して……」
「大丈夫ですよ、高良さんは？」
「私は平気です。さっきのは一体なんでしょう、砂みたいなものまで……」
　高良は、床に落ちた砂を拾う。瓢のろっこんで飛んできた黄砂だった。
「これは……黄砂ですね」
「なぜ、こんな時期に室内に？」
「それは、わかりませんが……」
「私、前から不思議だったんです。どうして、空から黄色い砂が降ってくるのか」
　高良が、指についた砂を眺めて言った。
「黄砂というのは、中国大陸の内陸部の砂が風に乗って運ばれてきたものです。砂の発生源の一つが黄土高原なのですが、黄色い土砂が川の水に混じって黄色く見えることから、黄河の由来にもなりました。黄河が文明のゆりかごだったせいか、黄色は中国では皇帝の身に付ける高貴な色とされていて―――」
　黄砂の話から脱線し始めた大橋先生を見て、高良はくすっと笑った。
「あ、私また余計な話を……」
「いいんです、好きなことが関わると夢中になる。それが貴女の素敵なところです。それに」
　高良は店内を見渡した。
「貴女のために、一生懸命になってくれる人たちが大勢いる―――生徒たちに慕われている証拠です。うっかりが多いくらい、気になりませんよ」
「高良さん……」
「さっき言いそびれたことを。貴女さえよければ、お付き合いをお願いします」
　大橋先生は驚いていた。正直、もう自分の中では今回のお見合いは失敗したものと思っていたからだ。先生ははっきりと、しかし一語一語を大切にしながら答えた。
「―――私でよければ、喜んで」

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