熊の霍乱？！　風邪にご用心！｜リアクション

熊の霍乱？！　風邪にご用心！

「あおい……」
　霧吹き作業を終えた修はあおいへ声を掛けた。あおいは先ほどより熱が上がったのか、少し頭がぼんやりしているようだ。直ぐに冷却シートを額に張り、様子を見る。
「ののこちゃん、大丈夫かな……」
　どうやらあおいは、ののこが心配で眠れないらしい。修はあおいに、つとめて優しく言った。
「野々には連絡しておいたよ。彼女はまだ動けるっぽいし、大丈夫だよ」
「うん」
　あおいは小さく笑って、目を閉ざす。毛布を掛けなおすと、今度は熊吉の様子を見に行った。彼はちかを迎えにいったメンバーが気になるのか、妙にそわそわしているようだった。
「先生、ちかちゃんの為にもゆっくり安静にしていてくださいね。彼らなら大丈夫ですから」
「あぁ。……ありがとうな」
　熊吉は苦笑しながらそういい、再び目を閉ざした。修はぺこっ、と一礼してから他に出来る事は無いかあおいの傍で周りを観察した。
　そこへ美咲紀がやってきた。彼女は修の様子を見、思わず口を開く。
「シュー君も熱があるみたいですよ！　休んでなくて大丈夫ですか？　潤んだ瞳が熱出しているっぽいですよ？……それとも、あおいちゃんの傍にいるからです？」
「俺は大丈夫だよ」
　修が苦笑していると、美咲紀はそれとなく彼の額に触れる。が、判らない。自分も熱があるためだろうか？
「ともかく、ハニージンジャーティーがありますから飲んでください！　動ける人も交代で飲んでますから！」
　美咲紀はそういって紙コップを渡すと、彼女は空コップを回収に出かけていった。
　修と熊吉が話していた頃、ちかの迎えにいっていたメンバーは無事、幼稚園に到着していた。全員が寝子高の制服を着ていたことと熊吉からの連絡とメモのお陰で先生との対応がスムーズにいった。
「ちかちゃんのお父さんに、おだいじにとお伝えください」
「わかりましたっ」
　４人を代表して年長である竜司が頷く。微妙にテンションが高いのは……気にしないでおこう。ちなみに出発前、まゆ先生からドリンク剤を手渡され嬉しさのあまり吐血（？）したとかなんとか……。
　だが、幼稚園の先生は彼の様子を見て「先生から信頼されたのが嬉しいのだろう」と思っていた。その為特に竜司を怪しんだり不審者と見たりはしていなかった。
「ちかちゃ～ん！熊吉センセの代わりに迎えに来たのだっ」
「あっ、真央お姉ちゃんっ！」
　バッグ作りの際会っていた事を覚えていたちかは、真央の姿を見てぱっと顔を輝かせた。夏夜は彼女の様子を見て風邪を引いていない、と判断する。
「お父さんは風邪で熱をだしてしまって、今、学校の保健室で休んでいるよ」
「だから、俺たちが迎えに来たんだ」
　夏夜と竜司が説明すると、ちかは心配そうな顔になる。だが、そこでたおやかな笑みを浮かべた蛇那伊が言葉を続けた。
「だから、ちかちゃん。お父さんの看病をしてみない？　今から必要な物があるから会に行くけど、一緒にいきましょ？」
「うんっ！」
　蛇那伊の言葉に、ちかは頷いた。
　幼稚園へ行く前、４人は色々話し合っていた。そこで出たのが『ちかに父親の看病をさせてみる』という事だった。風邪がうつらぬようマスクをし、誰かがそばについて手伝う、という条件付で、ではあるが。
　買出しに関しては夏夜と蛇那伊がお金を出すと言うも、結局４人で出し合う事に。また、必要な物については竜司が牡丹に連絡を取って確認し不足分を追加で購入する、という事も行っていた。この辺りは出発前に保健室にいるメンバーも含め話し合った結果だった。
　日も暮れてきた故、急ごうと４人はちかと共にドラッグストアへと向かおうとした。だが、そこでちらり、と蛇那伊が先生の様子を見る。対応した先生は僅かに咳き込んでいるように見えた。
（時間の経過で、ここにも神魂の影響が広がったのかしら？　ちかちゃんの具合にも注意をしたほうがよさそうね）
　蛇那伊はすぐさま３人にも話し、急いでその場を離れるのだった。