熊の霍乱？！　風邪にご用心！｜リアクション

熊の霍乱？！　風邪にご用心！

「あのっ、七夜あおい、ちゃん、は居ます、か？」
　咳き込みながら問いかけると、美咲紀は頷いて彼女をあおいが寝ているベッドへと案内する。と、ちょうど修があおいに症状を聞こうとしていたところだった。
「あおい、具合はどうだ？」
　修がそう問うと、あおいは貰ったくず湯をゆっくり飲んでから答える。
「ん……、まだ気だるくて熱っぽいかな。ちょっと頭が痛いかも」
　そうか、と相槌を打っているとののこに気付く。軽く挨拶をしようとしたがののこは激しく咳き込んでしまう。
「野々は咳が酷いのか？」
　修が問いかけるとののこは頷き、どうにか喉が痛い、と声を搾り出した。僅かに聞き取りづらいが、声が出しづらいのかもしれない。
「……２人とも、病院に行くか？　それとも帰宅する？」
　あおいとののこは修の問いかけに顔を見合わせ、寮に帰る事を選択する。修は頷くと起きようとするあおいを手伝い、帰り仕度を整えるべく教室へ向かう事にした。
「あのっ、お世話になりました」
　あおいが保健室でテキパキ動く面々に頭を下げ、修、ののこと共に退室する。修は申し訳ないけど、と後のことを皆に託し、２人をエスコート。その後、車を手配し２人を桜花寮まで連れて帰る。その車内で、あおいは修に申し訳無さそうに頭を下げた。
「ごめんね、修くん。迷惑、かけちゃったね」
「そんなことはないよ」
　修は気にしないで、と言いながらも内心でぽつり。
（大切な人が苦しんでいる姿なんて、みていられないからな）
　そう言いながらも、あおいの顔を直視できないのは、恥ずかしいからだろうか？　ののこも何か言いたそうだが、こちらは咳が酷くてそれどころではない。
「あまり部屋を乾燥させないようにした方がいい。特に野々は喉が辛そうだからな。あと、蜂蜜を入れた紅茶とか飲むといいかもしれない」
　修は添木牡丹に頼んで水筒にハニージンジャーティーを分けてもらっていた。それを２人に渡すと喜んでもらえた。
　桜花寮の前で別れ、修は病院へ向かう。今まで気を張っていた分が回ってきたのだろう。あおいとののこの姿が見えなくなると、身体が鉛のように重くなった。
（点滴を打ってもらおう）
　そう思っているうちに、修はうとうとと転寝を始めるのだった。

　吉田熊吉は、聞きなれた声を聞いた気がして目を覚ました。よく見ると、傍らにちかがいる。
「クマセン、ちかちゃんが来たのだ」
　真央がそういってちかを前に出すと、ちかは心配そうに「パパ……」と見つめる。熊吉はにっこり笑うと優しくちかの頭を撫でる。
「心配掛けてごめんな。パパはもう少し休むよ。ちかも、もうちょっと待っていてくれ」
　お兄さん、お姉さんに迷惑を掛けないように、と言うとちかも頷く。竜司が「まかせてください」といえば熊吉は苦笑して頷いた。
　真央と竜司はちかを家庭科室まで連れて行くと蛇那伊と夏夜にバトンタッチ。そこに紫も加わってみんなでおかゆを作る。
　下ごしらえなど包丁を使ったり危ない作業は高校生の３人でやり、味付けの手伝いや卵を割ったりと簡単な作業をちかに手伝ってもらう。
「上手ね」
「うん。パパのお手伝いしてるもん」
　蛇那伊の言葉にちかが得意げに胸を張れば紫も夏夜もちょっとほっこりした気持ちになる。４人は少しでも熊吉や風邪を引いている人が元気になれば、と思いおかゆを作った。

　高峰一馬や雅人、美咲紀、林檎、牡丹、そこに加わった真央と竜司がゴミの回収や新しく来た人への対応、帰宅する人へのフォローなどを薦めていく。その様子を、臨時保健室の片隅で桜庭円は見ていた。自分も熱があるのか、頭がぼんやりする。けれども、テオとにゃーくんの看病をこまめにやっていく。綾辻綾花もまたスポーツ飲料を円に飲ませたり、下敷きでテオとにゃーくんを扇いだりと看病に勤しむ。
（珪先生には怒られてしまうかも）