寝子島っ子集まれ！　餅つき大会｜リアクション

寝子島っ子集まれ！　餅つき大会

○調理とおしゃべり

　猫型の餅を手に、さてどうやって食べようか……と調理コーナーにやってきたジェレミアは、そこで八神修の姿を見かけた。
「八神君、こんにちは」
「こんにちは、ジェレミア先生。見事な猫だ」
　猫の姿の餅を見ながら修が微笑む。餅を焼いているところのようだ。
　ジェレミアは修の周りを見まわした。
「今日はペットは一緒じゃないんだね」
　修は頷く。
「今日はペット達はつれてこなかった。食べて事故になると困るから」　
「そうだね、賢明な判断だ。ずっと目を離さないというわけにもいかないし」
　ジェレミアと修はイベントで知り合った知人で、猫絡みの関わりも多い。
「自宅では自分で調理なかなかできないから、こういう機会は作る側で楽しみたくて」
「何を作るんだい？」
「餡餅、オロシ餅、磯辺巻きに餅ピザを」
「たくさん作るんだね」
「ピザと磯辺を焼いている間にオロシと餡のは小鉢に入れるだけなので一人で四種類もけして多くないんだ」
「磯辺巻き……って海苔をつけた食べ方だよね。海苔は海藻で出来た紙のように思えるのだけれど」
　ジェレミアの表情に修は苦笑する。
「海苔で巻いて醤油つけて炙るだけ……なんだけどこれが美味い。焼き海苔や粉海苔を使い、磯辺に打ち寄せるワカメを連想させるので『磯辺』と名付けられたそうですよ」
「たしかにこれがあれば白黒猫模様も作れてよりバリエージョンが膨らむよね」
　ジェレミアは手元の猫型餅をじっと見る。
「さ、どれ食べます？」
　話しながら修は餅を焼き続ける。
「お醤油との相性も良いと話には聞くけど」
　周りをきょろきょろ見ると、翠響が磯辺焼きを美味しそうに食べていた。
「カロリー？　そうね、終わったら、寝子島スポーツセンターへ行って、軽く運動してプールで泳ぐから大丈夫」
「確かに海苔巻いて食べている人は多いね」
　翠響の食べっぷりを眺めたジェレミアは。
「少し試してみようかな」
　焼きあがった小ぶりなお餅に海苔をぺたりとつけ、お醤油を付けて。パリッ、もぐもぐもぐ……と頬張った。
「どうですか？」
　パリッとした食感に磯の香り。それは香ばしい焼き餅と醤油味に、不思議にマッチした。
「ん、悪くない。イケるかも。もぐもぐ」
　その間に修は餅を薄く延ばして、野菜とトマトソースとチーズを乗せてフライパンで蒸し焼きを始めていた。
　辺りにチーズのいい匂いが広がる。　　
「さあ次は、ピザの国の人に餅のピザを食べてもらおう」
　そう言って修は餅ピザを取り分けた。
「日本は何でも取入れて別の物に変身させるんだ。たとえば、スパゲティのナポリタン。日本で言うナポリタンは、本場のものとは全然違う。アメリカ人が慣れ親しんだコシのない缶詰スパゲッティから来ているという」
「なるほど。うん、これは美味しいね」
「ピザ餅、美味しい！」
　ジェレミアが頷き、翠響もピザ餅を堪能する。
「俺も食べるとするか」
　修が磯辺を箸でつつくと、海苔が二つに分かれた。
　そこからみるみる、七夜あおいの姿に変化する。
　じっと見ながら、修は固まった。
「これは、どうしようか……」
　スマホを取り出す。
「とりあえず……撮るか」
　なんだか暑いのは、餅を焼いていたせいだけではなさそうだ。
　撮影した後は、人に見られないようそっと容器にしまいこんだ。

このページにイラストを設定する