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【お三夜】午前三時のコンビニエンスストア
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誰かが廊下を忍び足で歩いている。
深夜の猫鳴館では、どれだけ離れていても、どれだけ殺していも、足音が響き渡る。むしろここでこれだけ静かに歩ければ大したものだ、と
神代 千早
は口元を微かに和ませた。
猫鳴館のいいところのひとつは、深夜徘徊が比較的自由に出来ること。
うなじで束ねた黒髪が肩を滑り落ちる。
セル黒縁眼鏡の弦を指の腹で押し下げ、数列を追い続けて疲れた眉根を押し揉む。ぼやけた視界に窓の外、大きな月が見えた。大きく伸びをすれば、思っていたよりも空っぽな胃袋に気がついた。
手直ししてもどこかガタつく古い椅子を引き、立ち上がる。先ほどの足音の主に倣って、出来るだけ足音を忍ばせ月明かりばかりが白く眩しい廊下を渡る。
(冷蔵庫に有ってすぐ作れるものとなると……)
ガラクタとも何とも判別のつき難い多種多様で雑多なナニカで溢れた廊下の端、簡単な流し台と火力の弱いコンロ、あんまり冷えない冷蔵庫にかつての住人の作品らしい個性的な陶芸品が混ざる食器棚があるばかりの簡素な台所に辿りつき、遠慮会釈無く軋む冷蔵庫の扉を開く。
まず目に入ったのはボウル山盛りの卵。
「厚焼き玉子……」
冷蔵庫のドアポケットに差し込まれた白出汁醤油を使って、お手軽出汁巻きを作ろうか。野菜室を見れば使いさしの大根の切れ端もある。
金色の出汁巻きに、たっぷりの大根おろしを添えて、醤油を少し垂らして、
(それもいいけど、米が食べたい気分だ)
そこまで思い描いて、ついでに炊き立てご飯まで想像してしまった。考えてしまえば、どうしても白い飯が恋しいけれど、今から米をといで炊くのも時間が掛かりすぎる。
冷蔵庫の扉を開けて短く思案していて、ふと、卵満載のボウルの隣、『ご自由にどうぞ』と書かれた器が目に入った。興味を惹かれ、シリコンラップをそっとめくり、
「……ッ?!」
中から現れた料理と呼ぶも恐ろしい理解不能な芸術作品的物体に、千早は息を呑む。
(……そっとしておこう)
開けたときよりもそっと、そーっと、蓋をする。
(この時間ならやはりコンビニか)
全部見なかったことにして冷蔵庫の扉を封印し、立ち上がる。
とはいえ、猫鳴館はお世事にも交通の便が良いとは言い難い。通学に使う獣道じみた近道もあるけれど、夜道に使うにはどの道を通るのが良いだろうか。
一度自室に戻り、ベージュのダウンジャケットを羽織る。戸口に掛けた懐中電灯を手にもう一度廊下を渡り、玄関から外に出る。
地面に己の影が落ちていて、月の明るさに気付いた。月の大きさを確かめようと振り返れば、立派なお化け屋敷にしか見えない建物が、青白い月光を浴びて不気味に佇んでいる。
不穏な空気さえ醸しだす己の棲家に、何となく口元が緩んだ。
青白い月明かりと闇色した森を背負った猫鳴館の屋根の上には、冬も間近な星の空。白々の輝く月光に圧されて、見える星の数は少ないけれど、それでも北の空を見遣ればカシオペアやペルセウスの並びを見つけることが出来た。
(……オリオン)
冬の夜空の代名詞を森の梢の隙間に見る。吐き出した息に白く煙るオリオン座から、月明かりに淡い銀色帯びて見える夜道へと視線を下ろす。懐中電灯の真直ぐな光を舗装のほとんど剥げた道に差し伸べて歩き出せば、数式や化学式で凝り固まった頭の疲れがじわりと溶けて緩んだ。
月夜の森を散歩がてら下り、高校の脇を過ぎる。
街灯と街灯の間の静かな闇を手元の光で照らし照らし、旧市街側にあるニャーソンへと足を向ける。
冷たい月の光が広がる空を見仰ぎ、人気の絶えた深夜の道を何気なく見回す。道々に建つアパートの窓も、家々の窓も、大抵の窓から光は失せている。
町並みのずっと向こうに見える寝子島街道にも、今は車のヘッドライトは極稀にしか通らない。
耳を澄ませば海鳴りの音さえ聞こえそうな気がして、千早は息をそっと潜める。眼鏡越し、茶色の瞳を僅かに伏せて、――海鳴りよりも近く、軽やかな足音を聞いた。
瞳瞬かせて視線上げれば、目的地であるニャーソンの眩しい電灯を白銀にも見える長い髪に浴びて、ワインレッドのドレス纏うた少女がひとり。
夜風に揺れる雪色の髪を手袋と黒いコートの袖に包んだ指先で押さえ、少女は畳んだ日傘を曲げた腕に掛ける。
いつだったか、翠の迷路と化した植物園で顔合わせたことのある少女の白い横顔を真夜中に認め、千早は僅かに首を傾げた。白銀の髪に紅色の瞳、透き通るように白い肌、色素をほとんど持たぬ彼女は、きっと太陽が沈んでから、それでも手放せぬ日傘を手に外へと出たのだろう。
日暮れから夜にかけての散歩のはずが、こんな夜更けにまで長引いてしまったのは何故だろう。
少女を視界の端に映りこませながら、コンビニへと視線を移す。
そうして、凍えそうに白い息を吐き出しつつコンビニへとタイツに覆われた足を向けようとする少女の傍ら、まるで寄り添うように肩を寄せる、闇の粒子の集まったが如きおぞましい気配帯びた黒い影が眼に入った。
少女が影にそっと話掛けている様子さえ見た気がして、千早はちらりと眼を瞠る。
「……ん」
ろっこんにより呼び出した自分の影の、こちらの言葉に答えないまでも発する、どうにもおぞましい気配に気を取られていたせいで気付かなかった近づく人の気配に、
桜 月
は細い顎を上げた。
自分の意思で動かせると理解してこの方、呼び出した自分の影に怯えることはなくなったけれど、たとえ不審者避けになると解っていても、影の気配には未だに慣れることができない。
他人の気配を感じると同時、呼び出していた影を元に戻す。何気ない風を装って視線向ければ、いつだったかに見たことのある青年が眼鏡の奥の瞳を瞠ってこちらを見ていた。
「どうかした?」
「あ、……いえ、失礼しました」
真直ぐに視線を合わせて問えば、恥ずかしがり屋らしい彼は気まずげに瞼を伏せて口ごもった。
「あなたの他に、誰か居た気がして」
「気のせいじゃないか?」
私は独りだったよ、と何食わぬ顔でとぼけてみれば、青年は控えめな安堵を眼鏡の目元に浮かべた。
「あなたも、コンビニですか?」
「ああ」
青年の問いかけに短く頷き、月は煌々と光灯す二十四時間営業の店舗に目を向ける。知識として知ってはいたが、利用したことはなかった。
(だって)
星ヶ丘寮にいると、メイドに言えば大体のものは用意してもらえた。それに、散歩の途中に寄る店は基本的に専門店ばかり。
(……でも)
日傘を差してのいつもの夕暮れ散歩の途中、海辺の小路で突然、デザインのイメージが浮かんでしまった。小路に設けられた東屋の長椅子に腰を据え、常時携えているデザイン帳を開いて筆を走らせ続け、気付けばいつの間にか周囲は真っ暗闇だった。
夢中になりすぎて、東屋の脇の街灯と月明かりを頼りに描いていることに気付いた時は正直慌てた。
(夜遊びはいけません、ってメイドに怒られちゃうな)
もしかしたら、寮には見えない星ヶ丘寮の扉の前で待ち受けているかもしれないメイドの叱責を思い、今夜はこっそりと忍び込むように帰るしかないか、と心に決めた。
(ろっこんを使えばいけるよね?)
そう思えば、案外心は楽になった。
(温かい物でも買おう)
寄り道を考える余裕も出来た。
暖かい格好をしてきてはいるが、これだけ月が高く空が澄めば、空気は凍てつく寒さとなる。
小さく会釈して先にコンビニに入る青年の背を追う格好で店のドアを潜る。
「っしゃいまこんばー」
奥の棚で品物を並べていたらしい店員が謎の暗号を放つ。
いらっしゃいませ、こんばんは、と言ったらしいと月が思い至るまで数秒。その数秒のうちに、先に入った千早は手慣れた様子で店員に軽く頭を下げて買い物籠を手にしている。買いたいものは道すがらに決まっている。真直ぐにおにぎりが並ぶコーナーに向かう。
寒空の下から暖かい店内に入った瞬間に曇った眼鏡の硝子をダウンジャケットのポケットから出したハンドタオルで拭って掛け直す。かじかんだ指先が店内の温度にじんわりと温かくなってきて、思わずほっと息を吐く。
(塩、梅、鮭、高菜明太、)
いくつも並ぶおにぎりの内から好みの幾つかを籠に入れる。変り種の出汁巻き玉子おにぎりを見つけて、小さく笑う。
(これなら玉子を焼く必要もないな)
それも籠に入れて、おにぎりコーナー隣の惣菜コーナーに移る。お湯を注ぐだけで出来るカップ入りスープの並びから選び取ったのは、ニャが谷園のお吸い物とゴボウサラダ。更に横移動してホットの缶珈琲も籠に入れる。
迷い無く食べ物を籠に入れて、最後に目についたのは、パンコーナーの端の端に何故か身を潜めて居た蝋燭。
店内に賑やかに流れ続けるクリスマスソングを耳にしつつ、蝋燭の箱の前にしゃがみこむ。視線を上げれば、パンコーナーに燦然と掲げられたクリスマスケーキご予約チラシ。けれど千早が見ているのは大きなケーキのその背景でキラキラと光放つクリスマスキャンドル。
「……作ってみるか」
蝋を溶かして色を付け型に流し込むあたりまでを考えて、楽しくなってきた。期末テストが終わったら、早速取り掛かってみよう。何ならテスト勉強の息抜きに型から造り始めてもいい。一時期作りこんだ七宝焼きの中にキャンドルホルダーに出来そうなものはあっただろうか。
蝋燭一箱を籠に放り込み立ち上がろうとして、棚の向こう、いつのまにかしゃがみこんでいた和服姿の男と目が合った。
「……」
「……」
ずっと見られていた気がするのは気のせいだろうか。
気のせいに違いないと決めて、千早は男からぎこちなく視線を外す。
「……」
眼鏡越しの茶色の瞳を人見知るように軽く伏せ、小さな会釈ひとつしてレジへと向かう男子高校生のうなじで束ねた黒髪を、
山野 無花果
はまるきり不審者の風情で棚と商品の間から眺める。
男子高校生が向かったレジには、ワインレッドのドレスを纏った白銀の髪の少女が背筋を凛と伸ばして先に立っていた。籠を手にデザートコーナーに足を逸らす男子高校生を、少女は衣服の色彩よりも鮮やかな紅の瞳で振り返る。小さく、けれどひどく優雅なお辞儀をひとつして、レジに立つ店員から専用カップ入りの紅茶を受け取る。
仕立てのよさそうな小銭入れを取り出し支払いを済ませ、店員のなおざりな挨拶にも鷹揚に応じる様子の良さに、イートインの椅子に掛けて紅茶を口に含む妙に絵になる佇まいに、
(星ヶ丘の住人か)
無花果はそうあたりをつける。だとしても、こんな夜中に何故星ヶ丘のお嬢さまが旧市街のコンビニなんかに居るのだろう。
(……深夜には違いない)
レジの壁に掛けられた時計を確かめる。
自宅の文机で原稿用紙に最後の一文字を書き付けて万年筆を置いたのが確か丑三つ時と言って良い時間。空腹を訴えて鳴る腹を押さえて台所に行き冷蔵庫を開けるも、食べられる物は無かった。
買出しをしそびれていたことを思い出し、致し方ないと袂に財布を携え、家の何処かで丸くなって眠る猫を起こさぬようにと足音を忍ばせて家を出た。肌刺す冬の空気に首をすくめ背を丸め、こんな時間に開いているのは酒を出す店かコンビニくらいのもの、どうしようかと歩を進めて、やっと見つけた灯りにこれ幸いと飛び込んだ。何か目新しいものがあるかと店内をうろついていたものの、今が深夜であることに変わりは無い。
深夜のコンビニのイートインに座す深窓のお嬢様然とした少女と、眼鏡ばかりが存在を主張する大人しげな男子高校生の取り合わせに、大学生と少女向け小説家の二足の草鞋を履く無花果は黒い目をこっそり好奇心に輝かせる。
入店時の様子から鑑みて、少女と男子高校生は全くの見知らぬ者同士というわけでもなさそうだ。
温かい紅茶に一息吐く少女を窺う。白い頬はほとんど無表情に近いが、紅茶の味と香りはともかく、温かさは外の寒さに冷えた身体を暖めるに丁度いいに違いない。
(星ヶ丘の住人ならメイドのひとりも居るだろう)
たとえば、メイドの淹れた紅茶が恋しいな、などと考えていたりするのだろうか。
惣菜コーナーの棚へと足を向けつつ、少女小説家の青年は今度はデザートコーナーに立つ男子高校生の様子を探る。そう言えばさっき、籠の中に蝋燭を入れていた。あれは何のために使うのだろう。
(……ああ)
めぼしいものの少ない惣菜コーナーの前、無花果はひっそりと嘆息する。店に入る前にもう少し外に居れば良かった。そうして耳をそばだてていれば、少女と男子高校生の会話が、小説のネタになりそうな話が聞けたかもしれない。
商品を物色する風を装い、菓子の棚に移る。
デザートコーナーに立つ男子高校生は、何を考えているのか、クリスマス期間限定の色彩鮮やかなデザートを見つめ続けている。
冬の時期はチョコレート菓子が隆盛を誇る。アルコールを含んだもの、クッキー生地に染み込ませたもの、苺味に抹茶味、数え切れないほどのチョコレート菓子の中、無花果は『つちのこの里』と書かれたパッケージを手に取る。
(文具屋の娘がこういうものをよく摘んでいるな……)
イートインコーナーで姿良く夜を見つめる少女を横目に雑誌の棚を覗いて見れば、気になる文芸雑誌が意外と置かれていたりする。
(定期購読で届く)
伸ばしかけた手を引っ込め、視線を逃した先には、
「……と」
(これは何だ……?)
見たことのない奇妙なかたちしたキャラクターのグッズ。一棚を埋めるちんちくりんなキャラグッズに興味が湧いた。
(これが若い婦女子の好む『ぶさかわいい』だろうか)
「くじ……?」
よくよく棚を見れば、キャラグッズを手に入れるにはくじを引かなければならないらしい。
特等はキャラクターの絵柄のついた鍋、ハズレくじはキャラクターがノック部分についたシャープペンシル。用に足ると思えるものは一切無かったが、
(ヒロインもこういうものに興味を示すだろうか?)
己が代表作である『恋する猫シリーズ』のヒロインの行動を考えて、気がつけば引換券を一枚、手に取っていた。
次はとばかり、冷凍ものの棚の前へと移る。
(原稿の後はこれが欲しくなるんだ)
寒くなったが、それとこれとは関係ない。小豆のアイスを一つ、手に取る。
(ついつい無駄買いをしてしまうな……)
手の中に納まる菓子やアイス、極めつけのくじ引換券を見下ろして、無花果は思わず戦慄する。食料を求めて来ただけなはずなのに、気づけば関係のないものばかり買おうとしている。コンビニとはなんと恐ろしい場所であろう。
こうなってしまえば速やかな撤収が一番、とレジに向かえば、待ち受けていたのは湯気あげるおでん鍋。思わずじっくり眺めて吟味してしまう。後から来て並ぼうとする男子高校生に道を譲ろうとする無花果に、高校生は慣れた仕草でお先にどうぞと示す。
「ありがとう」
気難しげな表情を微塵も崩さず、少女小説家はレジ前に立つ。手に持った商品をレジ台に置き、
「大根と餅巾着、……あと、厚揚げももらおうか」
無愛想に今日の夕飯を注文する和装の男と、食料満載の籠を手に静かに佇む青年に向け、体を温め終えカップを片付けた深窓の令嬢が日傘を手に見栄えのする一礼を見せる。
夜闇に一抹の怯えも表さず、少女は己の影をまるで親しい友人とするかのように闊達な足取りで星ヶ丘への道を歩いて去る。
支払いを終え、凍える夜道を旧市街へと向かう無花果を追いかけるかたちで、千早は懐中電灯を点ける。道を走る光のもとを辿って不思議そうに振り向く同道者に、ほんの微か、笑いかける。
「冷えますね」
「……ああ、冷えるな」
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3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
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シナリオガイド公開日
2015年11月06日
参加申し込みの期限
2015年11月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年11月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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