紫陽花屋敷の噂｜リアクション

紫陽花屋敷の噂

＊後木真央は歌う

「真央ちゃんはー♪ 元気な子ー♪ 雨にまっけなーい♪ つよーい子ー♪」

ざくざくとレインブーツを踏み鳴らしながら、真央は園芸用のシャベルを片手に紫陽花屋敷に向かっていた。
彼女の目的はただひとつ。

「ねこったーに特ダネを投稿するのだ！」

そのために最近噂になっている紫陽花屋敷へ向かっていたのだった。

やがて紫陽花屋敷に到着すると、屋敷の方には目もくれず庭に咲く紫陽花の根元をぺたぺたと確認し始めた。

「不法侵入で通報は勘弁なのだ。そんなことより、紫陽花がいっぱいなのだー！」

ちなみに昨今の法律では明確な線引きのある敷地内に入ることも不法侵入に含まれるのでお気をつけて。

「掘り返して紫陽花さんを痛めちゃうのも、おうちの人に見つかって怒られるのも困るのだー」

そう言って紫陽花の根元をぺたぺた。
更に移動してぺたぺた。これを何度も繰り返す。

「このあたりを掘ってみるのだ」

そう言ってシャベルをさしたのは青い紫陽花から少し離れた地面だった。
すぐ根元では紫陽花を傷つけてしまうという配慮だったのだろう。

ざくざく、ざくざくと掘り進み、泥まみれになって額の汗をぬぐう。

「人が埋まってるなら青だと思ったのだ…外したのだ」

一度掘った穴を埋め、別の色の紫陽花の近くをまた掘る。
しかしほしい結果は得られない。

「１人だからだめなのだ。こんなときのがおーなのだ」

泥だらけの状態で立ち上がると、雨の降る空に向かって高らかに。

「にゃにゃにゃがおー！！！」

ろっこん「にゃにゃにゃがおー！」によって三毛猫、がおーが召喚される。
降りしきる雨に少しいやそうな顔をしていることについては見なかったことにしておこう。

「がおーに手伝ってほしいのだ。穴掘りなのだ」

がおーにひとつだけお願いをかなえてもらう。
真央のろっこんは幅広い用途に使え、三毛猫がおーに癒される素敵なものだった。
がおーは小さく鳴くと、真央とは違う場所を勢いよく掘り始めた。
真央はその様子を満足げに見ながら、自分も別の場所をぺたぺた、ざくざくと掘りすすめていった。