【お三夜】お猫様の大掃除にゃん！｜リアクション

【お三夜】お猫様の大掃除にゃん！

　羽生碧南は、今年は割とマジでお猫さまパタパタを狙っていた。
　年に一度のお三夜祭り。碧南は毎年お猫さまパタパタを狙ってるけれども、なかなかうまくいかない。
　去年ももう一歩のところで逃してしまった……で、今年こそは！　と例年以上に気合を入れての参加となった。

「……今年は切実なのよね、家が火事になって結構経済的に厳しいし……」

　そう碧南が言うのには訳があった。
　今年は寝子高入学直前にシーサイドタウンにあった自宅が火事で全焼した上（桜花寮に住んでるのはそのためだ）、火災保険がおりたものの、自宅の再建には思ったより費用がかさみ、しばらく時間がかかりそうとのことで、現在両親と大学生の姉は鎌倉の父方の実家に身を寄せている状態なのだ。

　お猫様をパタパタすれば向こう一年は御利益ありまくり……とのことなので、例年以上にそれにあやかりたい気持ちでいっぱいだ。
　もしかすると年末ニャンボ宝くじで１等当たるかもしれないじゃない！
　碧南は期待に胸を膨らませていた。
　そんなわけで、お猫様をどうパタパタするか思案した碧南は、調べてきた必勝法で接近を試みる事にした。

　まずはターゲットのお猫様を発見。ロックオンして脅かさないようにゆっくりと近づく。
　次に腰をかがめて、目線をお猫様と同じ高さまで低くする。
　碧南に見つめられたお猫様は、何が起きるのかと興味津々な様子で碧南を見返してくる……
　そこで碧南は両目でゆっくりウィンクして、高い声で鳴いてみた。
　全神経を集中して完全に猫になりきった演技だった。
　すると、相手のお猫様も高い声で鳴き声を返し、トテトテと碧南にすり寄ってきたではないか。
　これは絶好のチャンス！　とばかりに、碧南はそっとお猫様の背中をパタパタとはたいた。
　成功だ！　碧南は無事に『お猫様パタパタ』を完遂する事が出来た。きっと今年は何かいい事があるに違いない。
　碧南の胸は喜びに弾んだ。