寝子島☆飛行船の浪漫譚？！｜リアクション

寝子島☆飛行船の浪漫譚？！

　――ファルコ窃盗団・アジト

「サキリは！？　サキリはどうして帰っていないの？！」
「お、お嬢様落ち着いてください！！」
「きっと無事です！　彼の事ですから、きっと戻ってきます！」
　鷲尾礼美が取り乱し、それを戻ってきた鬼崎あやめと添木牡丹でおちつかせる。だが、牡丹もけがをしており、礼美は涙を必死に堪えていた。
　身内には心優しい礼美は、自分の部下として大切にしていたサキリ達の無事を祈っていた。しかし、サキリは今、ここにいない。
　メイドが入れた紅茶を飲み、少し落ち着いた所で食事をとらせていた牡丹とあやめから詳細を聞く。そして、１つ命令を下した。
「貴方たちは、今は休養なさい。ほかの面々はサキリの捜索！　飛行船の事はまだ後回しでいいわ」
「お前らしいな、礼美」
　穏やかな声がして、振り返る。と、礼美は息を飲んだ。裏の社会でも有名な父親、鷲尾孝道が朗らかな笑顔でいたのだ。礼美は慌てて淑女の礼を取ろうとしたが、孝道は手で止めた。
「サキリは、私にとっても大事な子だ。私が探そう。礼美は、飛行船の計画を進めなさい。サキリは見つけ次第君のところに連れて行こう」
「お父様……」
　礼美が心配そうな声を上げると、牡丹とあやめは礼美の傍に控える。孝道は部下に２、３何か言うと真面目な顔で言った。
「ファルコ窃盗団の活躍、楽しみにしているよ」
「心得ております、お父様」
　礼美が一礼する。牡丹とあやめもそれにならうが、ちらりと孝道の表情を窺った。

　それから３日後。
　刀とリッカルドは近くを通りがかった漁船に助けられる。だがその時、すでにサキリの姿はそこになかった。
　サキリは孝道率いる一団に救出され、同時にリッカルドを放置せよという命令を受けた。身代金は入手できなかったものの、【ファルコ窃盗団】の名はさらに広がった故の措置だった。

　――数日後・寝子島、臨海市街。

「……のんきにご飯食べている場合じゃないんだけどね」
「とりあえず、食べよう」
「でもなぜオラまでここにいるっちゃ……」
　呉井陽太と須崎蒼志、鈴野海斗の３人は、なぜかフグ鍋を囲んでいた。そして、その傍には、リッカルドの秘書である島岡雪乃がいる。
「遠慮なくお食べ下さい。支払いは、私共が行いますので」
　雪乃の言葉に「では遠慮なく」と蒼志はフグの身をはふはふと幸せそうに食べる。しかし、海斗は傍らの茶を飲みながら小さな声で問いかけた。
「なんのつもりっちゃ？」
「まぁ、それはあるよね」
　陽太も気になるな、と湯気で曇った眼鏡を拭きながら頷く。雪乃はそうですね、と小さな声で２枚の手紙をそっと渡す。ただし、あて先は伏せられた状態で、帰宅後に確認するように、と言った。
「これはリッカルド様の、というより私の実家……雨宮家の意思です。ご一考を」
　雪乃はそれだけ言うと、「食事にしましょう」と笑顔で言った。とりあえず、微妙な空気の中海斗と陽太もフグ鍋を食べる。
（結局、カモメはわからなかった。しかし、【十三夜】からは期限がないと言われている。焦らずやるっちゃ）
　海斗は内心で苦笑しながらも、上質の味を堪能した。

　だが、３人は後にこの手紙の内容に愕然とする。
　それは、雨宮家当主であり、政界でも大物と言われる雪乃の父親からの手紙だった。

　――【ファルコ窃盗団】の裏をかけ。　決戦は、近い。
　　　君たちの働きに期待している。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
大変お待たせいたしました。久々のスチパン！！
……ですが、飛行船です。スチパン要素がでているかちょいと不安です。

まずは、ガイドに登場してくださった御巫時子さん、誠にありがとうございます。
そして、参加してくださった皆さん、誠にありがとうございます。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

今回の判定も悩みましたが……軍人たち及び乗客に軍配があがりました。
しかし、今回は窃盗団側に飛行船の設計図が渡りました。
今後、【ファルコ窃盗団】はより行動範囲を広げる事でしょう。

ちなみにちょっとお時間いただきますが、あと１回だけスチームパンク風な世界観にお付き合いくださいませ。

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