前回のあらすじ
五十嵐博士が書いた飛行船の設計図をファルコ窃盗団が狙っていた。しかし、仲間の協力を受け五十嵐博士は設計図を守り抜くことが出来た。
しかし、新技術の軍事利用を目論む陸軍に情報が知られることとなり、一方のファルコ窃盗団も雲隠れしてしまった……。
* * * * *
――落神二年 霜月
「みなさま、お集まりいただき真に有難うございます!」
資産家の
中沢 リッカルドが集まった人々の前で頭を下げる。その後ろには、真新しい飛行船が何本もの紐で止められていた。
半硬式飛行船で全長75m。重要な薬を運べるよう、揺れに強い構造となっているそうだ。
技師であり、博士でもある
五十嵐 尚輝を中心としたメンバーによって作られた高性能の飛行船が、いよいよ処女航海を迎える。これにより、寝子島特産の薬草によって作られた難病の薬がより多く運び出せるだけではなく、観光にも役立つだろう。
それだけではない。最近巷をにぎわせている【ファルコ窃盗団】のアジトであろう島は潮の流れが速く、なれた人間でなければ船で行く事が出来ない。だが、空からならばスムーズに攻める事も出来るだろう。
リッカルドは技師たちに感謝を告げ、集まった尚輝たちもまた力を尽せてよかった、と安堵しているようだった。
式典に参加していた
御巫 時子もまた、ようやく飛行船がお披露目となり安堵すると同時に心から喜んでいた。彼女が敬愛する尚輝の夢がまた1つ実現するのだ。
(けれど、なんだか遠くに感じます)
時子はどことなくもの悲しい気持ちで尚輝を見つめる。今の彼は、時子には少し遠い存在に感じられた。それでも首を振り、笑顔を浮かべる。今日はお祝いなのだ。彼にとって、嬉しい日なのだ。だから、笑顔でいよう、と。
式典も終り、いよいよ飛行船に乗り込む。
今回は寝子島に鎮守府をおく海軍と、鎌倉に基地をもつ陸軍の兵士達も乗っている。海軍側からは、寝子島鎮守府の提督代理である、
永田 孝文准将を含む数名、陸軍からは駐屯基地のまとめ役である
黒崎 俊介准将を含む数名である。
「無事に、ここまできましたか」
「そうですね。ぜひとも戦力的に欲しいものです、なんてね」
俊介としてはジョークとして言ったのだろう。孝文は眼鏡をかけなおしつつ静かに笑顔を浮かべるものの、内心では俊介を推し量ろうとしている。
陸軍も海軍も、飛行船はほしいところである。これがあればなにかと便利である事は両者ともに他国との情報交換で知っている。
「では、お互いに今日の日を楽しみましょうか」
「ええ。更なる国の発展を望める祝いの日ですからな」
俊介と孝文は互いに笑顔で一礼しつつその場を離れ、其々飛行船に乗り込んだ。
その様子を見ていた時子は、少しだけ胸の奥がもやもやする。だが、尚輝に呼ばれた。不思議に思っていると、尚輝はわずかに目を細める。
「時子さんも、飛行船に乗りませんか? きっといい景色が見られるはずです」
「いいのですか……?」
戸惑いながら問うと、彼はやんわりと笑う。
「リッカルドさんのご厚意ですよ。ほら、早く」
「は、はいっ!」
時子は笑顔の尚輝にエスコートされ、飛行船の中へと入った。
ゆっくりと浮き上がり、目的地である熱海を目指す飛行船。ところがその時、黒づくめの服装の男達が操縦士に銃を突きつける。
「動くな」
リーダーだろう男が静かにいう。そして、彼は辺りを見渡しながらこういった。
「我々は【ファルコ窃盗団】。我らがレディのために飛行船をいただきに来た! 死にたくなかったら、我々に従え」
(は、ハイジャック?!)
おもわず時子が息をのんでいると、リーダー格の男はリッカルドをにらみつけた。
銃を突きつけられた者たちは、ただ動くべき時を見計らっていた。リッカルドは歯を食いしばり、時子は身をすくませる。尚輝は彼らを庇おうと前に出る。
「貴方がたは、何が目的なのですか?」
「身代金と……この船。そして、あなただ、五十嵐博士」
リーダーの男は静かにそう言うと、船内放送を入れる。
「お集まりの紳士、淑女の皆様方に申し上げる。この船は我々【ファルコ窃盗団】がいただいた。命が惜しければ、私の命令に従っていただこう」
その船内放送を聴いていたリッカルドの秘書・
島岡 雪乃は眼鏡を正し、表情を引き締める。そして、貴方がたへこう言った。
「皆様へ、リッカルド様からの伝言があります。
どうか、手を貸していただけませんでしょうか?」
雪乃の言葉に、俊介と孝文が眼を光らせる。彼らはあなた方を含め、戦えるだろう者達へ通達する。
――【ファルコ窃盗団】から人質を救出し、この飛行船を取り戻せ。
【ファルコ窃盗団】の主である
鷲尾 礼美はくすり、と笑いながら飛んでいく飛行船を見送る。
「全て任せたわ。飛行船、うまく奪って頂戴ね?」
彼女は小さな声でそう言うと、優雅に紅茶を飲んだ。
菊華です。
大変お待たせいたしました。スチームパンク第二弾、です。
今回は飛行船の処女航海パーティーかーらーのーハイジャックと相成りました。
皆様、奮ってご参加ください!
前回の『寝子島☆蒸気と帝都の浪漫譚!』とは違う立場での参加もOKですっ。
難易度:★★★
※難易度について、くわしくはマスターページをご覧ください。
※この世界の年号は『落神』です。
夢の中では『落神二年』となっています。
概要
皆さんは飛行船の処女航海に参加していました。
ところが【ファルコ窃盗団】が飛行船を乗っ取ってしまい大パニック!
皆さんはどう動きますか?
*今回の敵
【ファルコ窃盗団】
鷲尾 礼美率いる窃盗団です。
今回、礼美の命令に基づき飛行船をのっとりました。目的は『リッカルドの身代金』と『飛行船そのもの』、『五十嵐 尚輝の身柄』です。
*現在の状況
現在人質は操縦室近くの倉庫に3人、操縦席にリッカルドと尚輝の2人と操縦者2人
が捕らえられています。倉庫の見張りは1人、操縦席の見張りは2人です。
また、乗船者の中にも窃盗団メンバーは混じっており、不穏な動きを見せればすぐに行動します。
操縦者2人は見張りとリーダーの男にせっつかれながら操縦中です。
目指している場所は今のところ(現実で言えば)小笠原方面です。
燃料に関しては満タンなので現状は問題ありません。
アクション
*PCさんについて
軍人をやりたい方は必ず【陸軍】か【海軍】を選んでアクション冒頭に記入してください。
雪乃を通じて、「成果を挙げたほうに飛行船の設計図をお譲りします」との事。
アクション次第ではどちらかに飛行船の設計図が渡されるかもしれません。
もちろん【陸軍】【海軍】双方協力して動く、でもOK!
ファルコ窃盗団側で動きたい方は必ず【窃盗団】とアクション冒頭に記入してください。
ハイジャックの実行犯として動きますか? それとも乗客に紛れて動きますか?
もちろんどちらでもない乗客になる事も可能です。
ただし「人質希望」の方は【囚】のタグを忘れずに。
リアクションに登場(予定の)NPC
中沢 リッカルド
資産家で、寝子島の発展のために人生をささげています。ハイジャックでは人質としてリーダー格の傍に捕らえられています。
五十嵐 尚輝
技師であり、飛行船を設計した1人です。処女航海に参加していましたが、ハイジャック犯に人質とされてしまいました。
島岡 雪乃
リッカルドの秘書です。現在はまだ人質になっていません。彼女は飛行船内部の地図を持っています。
PL情報:ハイジャック犯は、雪乃を探しているようです。
というのも……実をいうと、彼女は公爵令嬢だそうです!
(苗字は本来の物ではない模様)。
永田 孝文
寝子島鎮守府の提督代理を務める海軍将校です。
黒崎 俊介
鎌倉にある駐屯基地の代表を務める陸軍将校です。
それでは宜しくお願いします。