【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

50.

　信頼する先輩は、ライオンの人形を着ていた。

　演劇部【ぶち組】は、あまり攻撃的なスタイルを想定していなかった。
　とくに由貴奈に関しては、敵を過度に追い求めることもせず、ぶらぶら校舎内を彷徨して、なろうことなら攻撃というくらいの消極的な気分であった。
　それが、支援部の後輩と出会い、こうして生物部とも出会えた。
　ついている、といってもいい。

　壬生由貴奈と、屋敷野梢。
　友人であり、尊敬する先輩と後輩。
　それだけではない。
　ものの見方。世界の捉え方。斜交いの視線。
　いざとなったら、非情にも酷薄にもなれる、自分という存在。
　
　明晰さゆえに漂う、人間存在の昏さと、それにうしろめたさを感じるやさしさ。
　似た者同士なのだ。　

　由貴奈は、ふっと笑ってみせる。
　
　――演劇部【ぶち組】。戦いの場では、ずっと「こっち側」の人間。

　新聞部・生物部の二組を相手にして、余裕を見せる由貴奈。
　さらにまだ、姿を見せない残り二人。

　先手必勝とばかり、プレパラートブレードを構え、跳躍する梢。
　斬った……と思った瞬間、ライオンの姿は消え去っている。
　屈みこんで尻尾を振るライオン。
　
　ともかく風船を守り切る。
　かといって、逃げ切ることは不可能。
　由貴奈の戦法は、大胆にして不敵。
　あえて相手の目の前に姿をさらす。
　紙一重で躱していく。
　反応と防御に集中した、尖ったスタイルだ。
　
「フラッシュで目くらましなのだっ！」デジカメを取り出すより早く、ライオンの口を開けて、中に仕込んだ照明で幻惑する。
　まるで天井の月をあざ笑うかのように、ゆらゆら揺れる尻尾の風船。
　
　ふわりと闇から現れるのは、恵御納夏朝。
　彼女もまた、回避に集中したスタイル。
　攻撃をさそい、にやにや笑いを残して、影に溶け込む。
　逃れたと思いきや、背後からナイフで切り付けてくる。
　小道具の、刃が飛び出すタイプのナイフだが、この状況では特殊部隊の使用する単分子ナイフなみの恐るべき性能を誇っている。
　無数の仮面があざ笑う。
　フードをヘアピンで三か所とめた夏朝の笑みが、妖しくひらめく。
　魔道の幻惑空間。人の心に通じ、人の心を知りたいと願う、夏朝ならではの技。

　ひょいと現れるのは、桃川圭花。纏っているのは普通の制服。
　由貴奈、夏朝に翻弄されつくした生物部、彼女に向け殺到する。
　その瞬間、ずばっとテントが展開。
　入口に『着替え中！　ＫＥＥＰ　ＯＵＴ！』と書かれた看板が飛び出す。

　驚く間もなく、テントの扉から飛び出す圭花。
　チョッキにジーパン、見事な木こりの扮装。
　取り出されるのは、巨大な斧。

「そう、こ・れ・が・演劇部よ！
　あーはっはっはっはっは！！」

　笑い声が殷々と響き渡り、圭花が跳躍。
　攻撃特化の彼女。大斧を振り回し、そのまま突撃。
　マキ割りだとしたら、ダイナミック！
　
　防御特化、回避特化、攻撃特化。
　どのような理由か、それとも天意によるものか。
　演劇部の【ぶち組】三人、それぞれ尖り切った作戦で挑んでいた。
　個人技が主体だが、個を生かせば、全体が生きる。
　信頼があっての、重層的な攻撃だった。

　じりじりと追い詰められる生物部、新聞部。
　
　なーん。
　一匹の猫が、美野梨の傍に這い出してきた。