【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

48.

　美野梨は、梢を見た。

　この圧倒的危機にあって、彼女は何も諦めていない。
　軒昂たる意思、凛とした瞳の光。
　そこにいるのは、どこにでもいる心優しい、ちょっとドジないつもの梢ではない。
　生物部部長として、寝子校副会長として、敢然と胸を張る少女の姿があった。

「この私が、生徒会副会長ではなく、部長としてここにいるんです……」

　美野里に一瞥も加えることなく、敵に視線をそらすことなく、梢がつぶやく。

「生物部、普通科１年１組、屋敷野梢さん……」

　自分たちが、なぜここにいるのか。

「『私が参加したからには、敗北は許しませーん！
　生物の神髄は多様性にあり！
　多様な戦法、とくとご覧あれー！」

「――分かりましたね？
　負けましたじゃ、ダメなんです！」

　ひどく静かに、梢がつぶやく。

　――！

　その言葉が、電撃のように美野梨を打つ！

　生徒会副会長の、勅令、下る！
　
　――おお！

　見よ！

　すっくと立った美野梨、その肩に留まらせた鳥が、一瞬の内に炎を吹き上げたのだ！
　神秘のメタモルフォーゼ。
　進化をつかさどり、進化を超える、生物部のみに許された暴挙。

　進化圧がオーバーブレイクし、あらゆる文明レベルの階梯を駆けあがり、鳥が神話レベルに進化を開始する！

　そこにいるのはただの鳥ではない。
　黒煙を吹き上げ、生命の光を波動のように放つ、不死の炎の鳥だ。
　命の鳥、フェニックス……いや、この凶眼は、人を屠るモノの目。

　禽獣に君臨する、夜のみだらな鳥……。生と死の王。

　静かに怒りの波動を放つ美野梨を見て、梢は頷く。

　そして、
（これからは、あんまり怒らせないようにしよう……）
　心の中で、そっと決意する。

「こ、これはスクープですよ！」
　ここが戦場であることも忘れ、無心にシャッターを切る美咲紀。
　
　悠然と羽を広げ、とびかかろうとするフェニックス……。

　突然飛び出す、猫の一団。
　先ほど、修のライフルから飛び出した奴らだ。

　慌てたフェニックス、さっと焔のオーラを消した。
「僕、フェニックスなんて知らないでんねん！　僕、普通の鳥でんねん！」とでも言いたげな風情で、美野梨の肩に止まる。
　
　生物部にいう事ではないが、チクショーのふがいなさであった。
　あるいはまた、多様性といってもいいのかもしれない。
　ともあれ、気迫で怯ませることはできた。
　風船を一つ押しひしいだ。それは評価されてもいい。

――やるみたいだねぇ。

　傍らから、声がかけられる。
　梢は、そちらを振り向く。

　見なくてもわかる。
　尊敬する先輩。

　演劇部、壬生由貴奈。