【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

26.

【水泳部／水泳部】

「ごめん、なさい……水泳部の、ため、です」
　飛吹勘助がホースを向けると、輝く水流のレーザーが薙ぎ払った。
　先端を微細に制御し、風船に攻撃を集中させる。
「く、くらえっ！　ホース、攻撃……」
　無数の虹が生まれ、スペクトルが周囲を幻惑する。
　慌てて、範囲外に逃れる敵。

（本当は、こんな、手荒なこと、したくない、けど……）

　射程外に出た敵は、深追いしない。
　防御に専念しつつ、周囲のフォローに回る。

　意気上がる周囲に反して、勘助のテンションはいつもと変わらない。
　穏やかで柔和な気質は、コメディエアー程度ではそう変わらないのだ。
　そんな彼の性格を反映してか、ホース攻撃も、相手をせん滅するのが目的ではなく、あくまで防御を主体とし、風船だけを狙っていく、派手さの薄いもの。
　ゴーグルを持ち上げ、仲間の紫と荒太郎を伺う。

（来年も、水泳部が、続けられる、よう、頑張らない……と！）
　優しく、気弱な彼。
　あまりアグレッシブには出られない。
　けれど、それがよい、と言われた。
　むしろその方が、のちのち「有利になる」。

　荒太郎の『秘策』を、勘助は思い出す。
　想像を絶する荒業。
　確かにそれが可能なら、戦局は一変するだろう。
　だが、果たして……。

　ジャッジの鋭い目を感じ、勘助は再びホースの栓を開ける。

　ホースレーザーから逃れ、上空からの攻撃を狙う高跳び同好会に、追撃するのは仙藤紫。
　紅一点。競泳用の水着姿が眩しい。
　部活は引退したものの、時折気分転換でプールを使わせてもらっている。
　荒太郎の『秘策』を聞いて、自分が力になれるなら……と参加の意思表明をしたのだ。

　さっとイルカさんビート板を構える。
　空中では敵の攻撃は拘束される。
　特殊状況下で、相手の攻撃の選択肢を狭め、反応を自由に引き出す。
　心理学に通暁した、彼女らしい戦い方。
　コメディエアーの影響を受けているといって、落下の恐怖に人間は耐えられない。
　咄嗟の判断で、右側に動きが集中する。
　あらゆる要素を総合し、最も可能性の高い解をはじき出す。

　高跳び棒の軌道が、過たずビート板で防がれる。
　ゴーグルの下には、、鋭い視線。
　重力のくびきにとらわれ、あえなく落下していく。

　もう一人、こちらのわき腹を狙ってくる。
　そこが弱点と見たのか。
　だが、そこはダミー。
　釣り込まれ、逆にゴーグルのスイングで叩き落される。

　近接戦闘に圧倒的な力を誇る紫。
　だが、いつまでもつかわからない。
　やはり、決め手は『秘策』。
　発動のタイミングはいつか。

（それまでは、持ちこたえて見せるから……）

　プールサイドに追い詰められる紫、間一髪で身をかわし、相手をプールに突き落とす。

「ピッカピカに磨いてやるんだよー！」
　プールサイドにたむろする敵を、荒太郎は次々になぎ倒す。
　盛大な水柱が巻き起こった。
　デッキブラシを翳し、にっこりと笑う。
「プールサイドは、走らない！」

　荒太郎の武器はタフネス。
　ベトナム空手でも鍛え上げていた肉体は、小兵とはいえ頑丈。
　プールの水と汗で、精悍に輝く。
　近距離戦用にイルカさんビート板。直線射程のデッキブラシ。
　さらに、衝撃緩和用の浮きも完全装備である。
　かなりの長期戦を堪え切れる。

　だが、コメディエアーの渦中にある者ならまだしも、不思議に思う者はいないだろうか？
　コメディエアーで、なぜ長期戦の備えが必要になる？

　荒太郎、何を考えてるか悟らせぬ。
　秋も深まった。不意に立った風に、胴震いをする。

「寒っ！」しかし、その風を彼は見逃さない。「……でも、頑張るよ！」勘助と紫に、合図を送る。

　水泳部の攻撃は、一見すると、理に適っている。
　プールの傍で、ヒット＆アウェイを繰り返す。
　絵的に地味で、コメディエアーの加護もそれほど期待できないが、確実だ。
　
　だが……。
　それだけの部活なのか？

　――その時、校舎から、必死に走る一団が飛び出してきた！
　刀、円、雅人の逃亡者三人組。

　そして後から追いかける、恐怖のジャッジ軍団！