中学生の僕がハジメテのオツカイをするので手伝ってくれませんか｜リアクション

中学生の僕がハジメテのオツカイをするので手伝ってくれませんか

　結局エリセイとレナートも揃ってミルクホールへ帰宅する事になってしまったものの、旧市街についてからは、夏休みにこの辺りの祖母の家で過ごしていたと言う時子が行き当たる店の説明などをイリヤにしてくれた為、兄弟が必要以上に争ったりする事もなくまったりと道中を過ごす事ができた。
　そして駅で別れた翠響に続き、つくしは、途中の道で別れる事になった。
「今日は本当に有難う」
　イリヤに感謝の言葉を向けられ、「いいえ」と静かに答えて、つくしは改めて会釈した。
「それでは定食屋「おにざき」に遊びに来てください。少しくらいならサービスしますよ」
「また学校で！」

　こうして、イリヤが様々な出会いを持って帰って来たのは、４時を少し過ぎた辺りだった。
「俺の門限……」
「リーセのは早すぎるよ」
　そう言うレナートの指定した時間も早いのでは……と、衿花が内心で思っていると、休憩の為に事務所に入ってきた英二が「うっわ……」と声を漏らした。
　どこかで見た禍々しい笑顔を浮かべたみかん宇宙人のフィギアが、テーブルの上にドーナツの箱と一緒に鎮座していたからである。
「なんですそれ」
「皆にお土産、休憩時間に食べるかなーって思って」
　ドーナツの箱に黒いマーカーで『ひとり１個どうぞ』と書いてるレナートが言う。
「有難うございます、じゃなくて……」
　英二が再びみかん宇宙人へ視線を戻すと、エリセイがわざわざフィギアの背後からキャラクターっぽい声を出してきた。
「みかん宇宙人だミ！」
「いや、知ってますけど」
「リーセが取ったんだー、やっべー、グロかわいいー」
「それマジで言ってます？」
　呆れ顔でいる英二にレナートが「こいつの目絶対ビームとか出るよね」と評したことで、エリセイがふざけ始めた。
「喰らえ英二！　ビビビビー」
　フィギアで背中を突っついて、英二が「うわ止めてくださいよ、ちょ！」と慌てるのをケラケラ笑っている。
　まあここは事務所内なので、直ぐに入室したばかりの康子から「こら、店で暴れない！」と叱られてやめたものの、真顔になったエリセイの口からはこんな言葉が飛び出した。
「英二の所為でおばさんに怒られた」
「いやいやいや」
　今のは完全にエリセイが悪い。しかし英二が突っ込むより前に、エリセイは反転して事務所横の階段を一段登り始めていた。
「俺もう寝る。疲れちゃった！　おやすみ皆、また明日？　明後日？　一週間？　ふふ」
　自由すぎる。と言うかどれだけ寝るつもりなのだろうか。呆気にとられている皆へエリセイはヒラヒラ手を振って階段の先へ消えてしまった。
　と、思った矢先に上から声が響く。
「レーナ、お茶欲しい。こないだ買ったいちご味が良い」
「Ладно.（はいはい）」
　双子の弟の投げやりな返事も聞いているのかどうか、上で扉が閉まる音が聞こえた。
　そこでイリヤがずっと気になっていた質問を康子へする。
「伯母様、ジュニパーベリーって何だったんですか？」
「スパイスよ、分からなかった……ああごめん、私説明してなかったわね」
「うん、それでね——」
　——実はこんな経緯があったのだ、とイリヤたちが話すと、康子は楽しそうに話しを聞いて笑う。
　慣れない場所での買い物を承諾したもののと心配をしていたが、こんな風に皆に助けられるとは思ってもみず、考えている以上に恵まれた立場にある甥を見て、彼女は嬉しげに何度も頷いていた。
「——それから、時子さんが調理実習の三角巾を作るのを手伝ってくれるって」
「事務所のミシンを使ってもいいですか？」
「まあ本当？　有難う助かるわ！」
　康子が制服などの繕い用に常備してあるミシンを時子と取りに行く間、イリヤはエリセイが買ってきていたドーナツの箱を見て、レナートへ顔を向けた。
「レーナ、リーセのドーナツどうしよう」
「クリームの入ってるのだよ」
　レナートの答えを聞いて、イリヤはクリーム入りのドーナツを二つ包んで渡した。後になってイリヤが皆に話したところによると、あの双子は味覚に関しても同じものを持っているらしい。
「それじゃ皆、ゆっくりしていって」
　兄にお茶を淹れた後も下に戻っくるつもりはないらしいレナートは、皆へ別れの挨拶して「ああそうだ」と動きを止め、イリヤに袋を押し付けた。
「これ、買い忘れてたでしょ」
　文具店の袋の中には、ラインマーカーと下敷きが入っていた。あれ程メモを見ていたのに、すっかり忘れていたらしい。
　ハッとしているイリヤの頭を撫でて、レナートは「Молодец.」と微笑みを残して二階へ消えて行った。
「お疲れ様」
　と時子が声をかけるのが、ワンテンポ遅れてしまった程に慌ただしい双子だ。
「レナート先輩、今なんて言ったの？」
　英二に聞かれたイリヤは、気恥ずかしそうに撫でられた自分の頭に手を滑らせている。
「頑張ったね？　偉いね？　何と言うのかな……、褒められました。
　やっぱり兄さんたちには敵わないな」
　はあっと大きなため息を吐いて、しかしどこか嬉しそうなイリヤの背中を叩いた英二は、言うべき言葉を一瞬逡巡し、笑顔を向ける。
「何というか色々とお疲れさま！」

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あとがき

担当マスター：東安曇
ファンレターはマスターページから！

　シナリオをご覧頂いた皆様、ご参加頂きました皆様、有難うございました。東安曇です。

　前回のシナリオや地図を見ていて、寝子島には魅力的な場所や人がいっぱい居るなあと感じ、折角だからPCさんたちに紹介して頂けたら……と思いながら今回のガイドを作りました。
　予想以上に楽しいアクションを有難うございました！　

　また今回からＮＰＣエリセイ、レナート、イリヤ、紅緒がキャラクター登録されました。今後とも宜しく御願い致します。

　＊沢樹マスターから衝撃的ビジュアルのゆるキャラ『みかん宇宙人』をお借りしてきました、有難うございます。

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シナリオ

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