INFINITE†NIGHTMARE｜リアクション

INFINITE†NIGHTMARE

「誰に断って、外へ出ようとしているのよ」

　女子生徒――篠原翠響は、三人に微笑みかけるが、それは嘲笑で、内にあるのは残酷な感情だ。何故なら彼女はこの学校の中で、一般生徒を嘲笑う事を許された、特別な立場にあるからだ。
「あなたは生徒会の……！」
「『衆人自治組織によって支配され、治安崩壊した学校の弱肉強食の世界を体現する学校で、暇つぶしも兼ねた殺しあいとか奨励する悪の生徒会』の中でも『自ら前線に立って反逆者狩りを大いに楽しむ軍隊の階級で言えば准将あたり』の『戦闘主義者と書いてバトルジャンキーと読む』篠原翠響が何故ここに！？」
「うわ八神すご」
「よく覚えられましたね……。作った彼女は『下手な悪役』って言ってたけど、そうなんですか？
　あの設定は、複雑すぎて、聞いた直後に忘れてしまいました」
　舌を噛まずに説明台詞を言い切った修に、二人は色んな事を忘れて正直に賞賛していたが、翠響は演技を続けていた。

「脱出はこの生徒会執行委員会委員長のあたしが許さない。反逆者狩りよ！」

　片手を前に突き出して翠響が命じると、ゾンビが這い出してくる。３対多数の戦闘が始まった。条件は先ほどと変わりがないものの、翠響という優秀な指揮官がついてしまうと、戦況はがらりと反転してしまう。
　自分の才能に酔うほど頭脳明晰な策士である悪の生徒会執行委員会委員長によって、三人の逃亡者は、一気に劣勢に追い込まれた。
「あははは！　反逆者は粛正よ！」
「くっ……あと少しで車に乗れたのに」
「生徒会執行……執行…………」
「執行部長？　でしたっけ」
　イリヤが台詞に詰まった凜乃へ小首を傾げた。
「執行委員会委員長」
　修が小声で訂正し、凜乃は演技を続ける。該当部分は修が言ってくれたので、飛ばした上で。
「——なんかに叶いっこないし」
「なんとか車までたどり着ければ！」
「校庭のど真ん中で惨めにゾンビ共に食われ、見せしめになるといいわッ！」
　三人の息が耐えようとしていた時だった。

「そこまでだ悪の生徒会よ！」
「誰ッ！？」
　翠響が振り向いた方向は、逆光を受けた二つの影が立っていた。夕日が完全に落ちると、その姿——二人の和風ゴシックな魔法少女が露わになる。
「光の姫巫女と堕天使が、その夢を叶え、闇を祓ってみせましょう！」