INFINITE†NIGHTMARE｜リアクション

INFINITE†NIGHTMARE

「ゾンビとかまじありえなくね！？」
「先輩話しは後で、今は走って！」
　呻くゾンビたちの動きは遅いが、それが集団になると脅威に変わる。
　今、校庭では、二人の生徒がゾンビの手から逃れるべく走り続けていた。いきなりの事でどこへ逃げれば良いのかも分から無い。
　ただ闇雲に走れば体力を奪われるだけだと危惧し始めた時、　
「こっちです！」と耳に飛び込んだ声に導かれ、二人は校舎の中にあった倉庫へ逃げ込んだ。
　扉を閉めて錠を下ろした直後、バンッバンッと外から乱暴に叩かれる音が内部に響いた。だがいくらゾンビたちでも、簡単に入り込む事は出来ないだろう。
　明かりもないため倉庫全体の様子はよく見えなかったものの、声の主が点けてくれたスマートフォンの光が二人を安堵させた。
「もう大丈夫です。この倉庫は、何故か食料や武装まであるんです」
　にこりと微笑んだ生徒は、彼らの年下——中学生のようだ。このマンモス校では、クラスや学年が違えば顔も見た事がない者も多い。そんな相手と相対した時は、挨拶から入るのが礼儀だ。それがどんな状況でも……。　
「俺は八神修。ここにいる種田先輩の一つ下の高校一年生さ」

「あたしは種田凜乃、射撃部」

「イリヤです」
　簡素な自己紹介が終わり、早々に本題に入る。
「あの化け物は、どこから出てきたんでしょうか」
「地震の時に校舎裏の祠が壊れて、そこに暗い穴ができて、湧いて出てきた。俺と種田先輩は部活中に遭遇して、ここへ逃げ込んだ訳さ。
　……それにしてもこの学校はおかしいな」
　修は言いながら凜乃を振り返る。
「うわこれ実銃！？　しかも夢だから超軽いし、魂アゲしちゃうし」
　凜乃は倉庫の中に備えられていた銃を二丁拝借し、装備していたところだった。
「食料だけでなく武装まである。まるでこのことを予測していたかのようにな。
　ところで先輩、その装備は？　まさか使うって言うんじゃ……」
「その通り。そう、あたしはガンスリンガー、二丁拳銃で戦うＪＫ『銃王無尽のリノ』なのさ！」
「……ここから逃げ出すんですね？」
　引っかかる部分は全て投げて、イリヤが次の展開を示した。面倒なところは飛ばすに限る。

　こうして三人は倉庫から飛び出していった。彼らの登場を待ち構えていたゾンビが、倉庫をぐるっと取り囲んでいる。ここから逃げ出すのは簡単ではないだろう。
「敵が多いな」
「いくよ、八神！　あんたが居ればあたしらは無敵さ蹂躙してやろう」
　その宣言通り、凜乃と修のコンビの活躍によって、ゾンビたちは倒れ道が切り開かれる。敵は『まるで円になって同じ俳優たちがぐるぐる何度も登場するかのように』湧いて出てきたが、修は倉庫から弾薬箱も持ってきていた。
「こんなこともあろうかと予備の弾装はたんまりあるんだ」
「あたしのベレッタとイーグルが火を噴くよ！　ファイヤー！」
「このまま脱出だ。先輩、街に出て安全を確保しよう！」
　
　そして三人が走って辿り着いた駐車場——、しかしあと少しのところだったのに、立ちはだかる者がいたのだ。
　年の頃は三人と変わらない……つまりこの学校の女子生徒だったが、彼女の周囲には妙な空気が漂っている。
「学校から脱出しようって言うの？」
　彼女の笑顔は、見た者の心を凍らせる笑顔だった。