体力をつけよう　～初冬編～｜リアクション

体力をつけよう　～初冬編～

　――テニスコート

　テニスコートでは小柄な男性が何人もの人の前で元気な声を上げていた。北玄である。今回、彼はテニスやバドミントンのコーチを行いつつもテニスラケットの販売も進めている。この商品を作っている会社のホームページは、玄が勤める会社が作っておりそのつながりだったりした。
（今日はたくさんの人が来ているですよ。アルバイトしつつ売り上げに貢献ですよ！）
　スポーツセンター側にも許可を貰っており、その上製造会社の人も一緒である。玄は張り切ってラケットの宣伝とテニスのコーチをがんばろう、と気合を入れた。
　初心者向けのコーチングをしている時、ラケットの部位について説明していると参加者の１人からこんな質問がきた。
「あの、なんでこの網をガットというんですか？　確か『腸』って意味ですよね？」
「その通りですよ！」
　玄は指を鳴らして頷く。と、彼はラケットの網がよく見えるように持ち方を変える。
「ラケットの糸、昔は羊の腸を使っていたからガットって名前ですよ！　ガットは、柔らかくて手首や肘にやさしいナイロン製と、硬くて耐久性の高いポリエステル製があるですよ！」
　玄はそういいながらガットがナイロンの物とポリエステルの物と二種類のラケットを用意した。そして実際に触ってもらったりラケットを振ってもらったりして参加者に体感してもらう。
「太いガットは耐久性が高めで、細いガットは回転がかけやすいですよ！　扁平断面のガットは面でボールに接するから、円形断面より摩擦が高くて回転をかけやすいですよ！」
　説明しつつボールをラケットに軽くつけて説明すれば、参加者の理解も深まる。一通り説明が終わると、打ち方などのコーチングに入った。ここでも玄はハイテンションではあるが、的確にアドバイスをしていた。
「ラケットを選ぶ際のコツってありますか？」
「コツ？」
　そう言われ、玄の脳裏にはある事がすぐに出てきた。彼は手にしたラケットを見、質問をしてきた参加者に聞いてみる。
「このラケットはガットが固めですよ！　ラケット自体はどんな感じです？」
「やわらかめ、ですかね」
　参加者がラケットを触りつつ答えると玄は１つ頷く。
「硬いラケットに硬いガットを張ると手首や肘を痛めやすいですよ！　それに、ガット自体にも適正テンションがあるですよ！　高テンションは、手首や肘に負担をかけやすいですよ！」
　そう言いながら手首と肘に触れ、最後に自分が持っていたラケットのガットを参加者に触れさせる。
「これ、ちょっと緩めですね」
「そうですよ！　こんな風に緩めに張ると、スイングスピードやパワーがなくてもよく飛ぶですよ！　おすすめですよ！」
　玄の熱心な説明に、参加者は「ありがとうございます、参考にします」と笑顔で頷いた。

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