寝子島高校救出戦｜リアクション

寝子島高校救出戦

●●●劣勢は朗報と共に●●●
　手の傷をかばいながら、その場にあった剣を持ち、ピエロへと向かっていく碧南。
　本物の剣、その重みを感じながらも強く握りしめる。

　人間…地球人とピエロは言っていたが、碧南達が侮られていることは分かっていた。
　風邪で熱っぽい事もあれば、手の痛みもある。
　けれど、あのピエロを倒せれば、解決する事が何となく理解できていた。

　持ち前の機動力を遺憾なく発揮し、突きの要領で突撃していく。
　ピエロは嫌らしい笑みを浮かべながら蛇那伊を見ている。
　今ならいけるはず、そう思って行くが、違和感を覚えて攻撃をやめた。

「ウッフフ、地球人のくせに勘はいいみたいだネェ！」
「それはどうも、不細工なピエロさん」

　ピエロは碧南の方をゆっくり向いて、碧南の目を見ながら言葉を吐く。
　売り言葉に買い言葉、碧南も言い返せるだけの元気はあったようだ。
　その返答もおかしかったのか、甲高い笑いをしながら碧南に向かって用意していた指を鳴らす。
　それが攻撃なのだと、直感的に理解した碧南は武器を捨て、体勢を低くして違和感のある場所を避ける。
　ほとんどを避けたと思ったところで、ピエロが笑いかける。

「攻撃が一発だなんて、言ってないヨォ？」
「くっ…」

　再び指を鳴らしたピエロから衝撃波が飛んでくる。
　避けきれずに足が切り刻まれてしまう。
　してやったりと、ピエロが笑うが、その後ろに蝶が舞う。
　そして、その蝶は人へと姿を変える。

「これは、あのネズミ達の分です」

　冷たく響く声が聞こえ、振り返る間もなくピエロの背中はカッターで装飾される。
　何本かのカッターが刺さったままに顔を歪ませるピエロ。
　幻影でもみたかのように、梢の冷たい顔が浮かぶが、そこには何匹かの蝶しかいない。

　梢にとってピエロは、すでに許されぬ存在。
　どんな手を使っても追いつめて倒す、その決意に溢れていた。
　カッターを再度蝶と化しながら、攻撃の機会を伺う。
　閉鎖されたこの空間であれば、有効な手段であろう。

　閉鎖された空間、そして生徒達はピエロが操っているのではないのではと蛇那伊も感づいていた。
　ならば、と蛇那伊が取った行動は咆哮を上げることだった。
　閉鎖されているのであれば、音の反響で黙視できない敵を発見できるのではないかと考えたためだ。

　すでに相手取っている男子生徒も三人になっていたため、それ事態は難しくなかった。
　しかし、想定外は常に存在する。
　再起不能にさせたはずの男子生徒が足を掴み、蛇那伊の体を揺らした。
　たったそれだけの行動だが、音の反響での判別をつかなくさせたのだ。

「ちっ…侮れないわね」

　倒れていた男子生徒を足下から放り、同じ事をさせないようにした蛇那伊は悪態をつく。
　放るとき、男子生徒の手のあたりに紋様がついていたので、ついでに消しておいた。
　今の行動が偶然でなければ、咆哮を上げただけの行動は、その意図まで読まれていたということになる。
　しばらくの苦戦を強いられるだろうと思っていたところに、朗報が訪れる。

「クソピエロ、お前調子に乗り過ぎだ」
「無事か！？」
「やれやれ…また巻き込まれたか」
「…」
「リベンジにしては、性質が悪いと思うんだよ？」

　先ほど走ってきていた刀とザ・ストレイト、運悪くこの教室に入ってしまった橘勇。
　病院から直行してきたヨハンに、テオから呼び出された円。
　計五人の到着で形勢は大きく変わることとなる。