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◆四章「過去と言う名の鎖、憎しみと言う名の呪い」
意識を失ったティアを抱えるとキュイスは走り出した。
「そう、悪くないのです。貴女は……」
誰もいないくらい通路をティアを抱えたキュイスが走り抜けていく。
彼の背後に追手――――サキリが現れた。
「どうやら、一人の様ですね。あなただけで私を止められるとでも?」
「思っちゃいないよ、後ろからも仲間が来るんだ。僕が一番早かったからね」
キュイスは床にティアを寝かせると腰の長剣を抜き放った。
「そうですか」
そう言い切ったと同時に踏み込み、キュイスの神速の突きがサキリの腹部を狙った。
身を捩じらせて、彼はそれを躱すと長剣を打ち落とそうと肘打ちを放つ。
しかし放たれた肘打ちは空を切った。
しゃがんで肘打ちを躱したキュイスは下からすくい上げるように長剣を振り上げる。
後方へバック転し、足下から襲い掛かる白刃をサキリは躱す。
「暗器ですか……なかなか味な真似をしますね。忍びや何かですか?」
自分の腕に刺さったナイフを抜きながらキュイスの眼光が鋭さを増した。
「さあ、どうだろうね。敵に素性を明かすほど馬鹿ではないよ」
下段の構えから数回の斬撃を放つキュイスだったがその全てはサキリに届かない。
サキリは瞬時に移動し背後に回っての回し蹴りを放つ。
それをキュイスは振り向き様に長剣の腹で受けて致命傷を避ける。
「それならっ! ふっ!!」
息を短く吐き、回し蹴りの勢いそのままにもう片方の足で後ろ回し蹴りを放つ。
その回転速度は上がっていき、次々と放たれる回し蹴りにじわじわとキュイスの防御が甘くなっていく。
「これでっ!」
ぐっと地を踏み締めた渾身の拳がキュイスの剣に打ち込まれた。高い金属音を悲鳴のように上げながらキュイスの長剣が折れて宙を舞った。
すぐさま後方に飛び退き、距離を空けたキュイスを追い打ちしようとしたがサキリは何か悪寒の様な物を感じ、足を止めた。
(この感覚、なんだ……体の内から内蔵を握り潰されるような……そんな嫌な感覚だ)
「私をここまで追い込むなんて……はは、あってはならない事です……そう、あってはならない事だ……ははは」
壊れた人形の様にカクカクと揺れながら、キュイスは笑っている。
「そう、欲しい、力が……あはは、はは、はははは」
「誰と会話してるんだ? 周りには誰もいないのに……」
サキリには見えない誰かとキュイスは会話しているように見えた。
「愚かだよ、愚かなんだよおおお人はアアアアア! 暴力を正当化して、誰かが救われれば弱い誰かヲ踏みにじっていもいい! 正義って何だ、何だよオォオ!」
叫ぶキュイスの身体に黒い霧が集まっていく。それは悪魔の様な神像から湧き出て彼に纏わりつき、次第に鎧の形を成していった。
何か言い知れぬ不安を感じたサキリはティアの元へ走り、彼女を抱えるとキュイスに背を向けて走った。
全力を賭してこの場から離れなければならない。サキリの感覚はそう感じ取っていた。
走るサキリの背後で頭まで黒い鎧に包まれたキュイスが吼える。
黒い長剣を地面から抜き放つと、腰だめに一息ためたかと思うと、キュイスはそれを無造作に降り抜いた。
「フウウウウウアアアアアアアアアーーーーッ!!」
直後、部屋に安置されていた悪魔を模した像が崩れ去り、階段が現れた。
彼は降りていく。静かに笑いながら。
手近な物陰に身を隠し、キュイスが降りていくのを見届けた頃、ティアが目を覚ました。
サキリの腕の中で目を覚ましたティアは酷く動揺している様であった。
「なぜ、このようなことになったのじゃ! あんな……」
裏切り、罠……そのような汚い手段や出来事を体験してきたのならばどうということはないが、彼女はそれとは無縁の世界にいた。
それがいきなりこの様な出来事に直面したのだ。動揺しないわけがない。
慰めてあげたい、だが……サキリにはこういう時にかけてやる言葉というものが上手く見つからないのであった。
瞳に涙を溜め、いまにも泣きだしそうなティアを前にサキリは静かに頭を撫でてやる事しかできなかった。
そこに後続の者達が追いついてきた。
風雲児 轟
は腰を下ろすとティアの肩を持ち自分の方へぐりんっと向けさせる。
「いいか、上に立つってもんがそういう態度でどうする。お姫様であり、彼らの主人でもあるお前がふらふらしてるから、ああいうおかしな考えの奴がでてきちまうんだよ」
「ふらふら……じゃと? それにわしが……主人」
「そうだ、主人がしっかりしてれば、下の者は安心して仕事に励めるしな。主人に大事なもんってなにかわかるか?」
轟の問いかけにティアは答えられなかった。
大事なもの。なんだろうか。潔さ、気迫? いや違うのだろう。そういった物ではない気がするが、わからない。
「それはな、信念だよ」
「信念……」
「そう、揺るぎない信念があればたとえ少しの迷いがあろうとも、最後には必ず道は開けるッ! そういうもんだ!」
轟のその言葉にいまだわかった顔をすることができずにいるティアに対して立ち上がった轟は背中を向けて言う。
「まあ、なんだ。口で言ってもわからない事だろうからな。俺がこの身で証明してやるよ、信念ってやつを! それみて、今後自分がどうするか決めなッ」
そう勇んで降りていく轟の前に四本の柱が現れた。
それそれが赤、青、緑、黄色に明滅している。
その真ん中に次の階層への道であろう階段が鎮座していた。
足元に転がっていた石を拾うと轟は階段に向けて放った。すると、四本の柱から次々と属性弾が飛んできて石を粉々に砕いた。
その音に呼び寄せられたのか天井の柱に見えた何かが彼の前に落下してくる。
「ん?…………おっと!?」
咄嗟に誰かに後ろに引っ張られ、体勢を崩して轟は尻餅をついた。
直後、さっきまで轟の頭があった位置に鋭い柱――――何かの足が突き刺さっている。
目の前の柱に見えた何かの中心部に赤い光が灯った。
「アラネア、遺跡に生息する石の魔物じゃ!」
「柱かと思ったら魔物かよ……ッ! 危ねえッ!」
ティアを突き飛ばすような形で通路へと逃がし、轟は紙一重でアラネアの足を躱した。
「無茶じゃッ! そんなに巨大な魔物、倒せるはずがないッ!」
「ふうーあぶねえあぶねえ。だがな、どんなにでかかろうが、強かろうが……逃げるわけにはいかねえッ」
とはいうものの、アラネアは四本の石柱の中心に鎮座しており、近づこうものならば石柱による属性弾が飛来する。
属性弾はそれぞれ風、炎、氷、土の属性を纏っているようで迂闊に近づけば、防御もままならず死が待っている事だろう。
例えそれを躱したとしてもアラネアによる鋭い攻撃……攻めるにはまず石柱をどうにかしないことにはどうにもならない状況であった。
「周りの部屋を調べてみる、それまで持ち堪えてくれ」
「ああ、そういうと思ったぜ……アラネアの事は任せな! その代わり、きっちりと仕掛けを止めてくれよ!」
轟のその言葉に
八神 修
は無言の背中で肯定の意を返した。今必要なのは言葉ではない、行動だ。
このアラネアの鎮座する広間の四方にはそれぞれ部屋があるようだった。
その部屋から緑、赤、青、黄色の線がそれぞれアラネアを囲む石柱に伸びていた。
(あの伸び方……恐らくエネルギーの供給か、それとも操作する為に回路? どちらにせよ、何かあるのは確かだな)
そう思った八神は仲間と手分けして四方の部屋を調べていく。
他を仲間に任せ、彼は青い部屋を調べるために入る。
足を踏み入れたその瞬間、身体を冷気が襲った。
凍える程に寒いその部屋は床や壁に至るまで全てが凍り付いている。ここだけ、雪山のようであった。
「くっ……カイロでももってくればよかったかもな」
寒さを耐えながら進むと、部屋の中心に青い機械の様な物が設置されていた。
そこには日本語で「属性石柱制御装置」と書かれている。
「この世界のロストテクノロジーは日本製なのか? 俺達の世界の人間が迷い込んで作ったんだろうか?」
つい思案に入りそうになるが肌を斬る様な寒さがそれを止める。
「……まずは、こいつを止めないとだ」
破壊すれば、とも思ったが装置に流れるエネルギーの暴走の可能性を考えるとそれはできなかった。
制御板を取り外し、回路を露出させると見た事もないような水晶や宝石で稼働している事が分かる。
だが、どれをどうしたらいいのか見当もつかなかった。
「適当に外すわけにはいかないし、かといって正解を見極めるにも……」
そうしているうちにも地響きはどんどん激しくなっている。これ以上の時間はかける余裕はなさそうであった。
「この水晶に小さく制御用輝石と書かれていマース。これではないデースか?」
露草がルーペでつぶさに観察していた水晶には確かに小さく制御用輝石と記してある。
「よし、これを外そう。手伝ってくれ」
八神と露草は細心の注意を払いながら青く輝く水晶を外した。
すると部屋の冷気は止まり、アラネアの方へ伸びる管が急激に色を失っていく。
そうやら石柱の一つを停止させることができたようである。
「他の部屋の皆にも知らせよう。この仕掛けは停止できると!」
――――アラネアと属性弾の同時攻撃に轟は防戦一方となっていた。
アラネアの足を跳んで避ければ着地点目掛けて属性弾が飛来する。
それを轟は鉤縄を壁に向ってかけ、自身の軌道を空中で変えるなどの三次元移動で辛うじて躱していた。
「流石に、そろそろ攻勢にでたい所だね!」
盾で属性弾を弾きながら
日暮 ねむる
も答えた。
「おまえも来てくれたか! チビゴーレム達はどうした?」
「みんな安らかにおねんね中だよ」
ねむるが視線を送った先には部屋の隅で山のように積み上げられたチビゴーレム達がいた。
この部屋に入った際、結構な数のチビゴーレムがいたのだが、ねむるが誘導し攻撃の届かない安全な場所に集めたのである。
そのおかげでどれだけ音を立てようが、天井に設置されているマザーゴーレム達は起動していないのであった。
だが、石柱の属性弾による攻撃とアラネアだけでも厳しい状況下なのは変わりがない。
「そろそろ、きついんだがな……八神、まだかよ……ッ!」
振り下ろされる足を後方へ跳んで躱したその時、八神の声が届いた。
「仕掛けは止めた! あとは好きに戦って構わない!!」
「その言葉を待ってたぜッッ!!」
轟は地面に刺さるアラネアの足目掛けて走り出した。
それに気づいたアラネアが足を振り上げるとつられる様にして轟も上空へと舞い上がった。
「なんじゃ、なぜ一緒に上へ……ッ! いや、鉤縄をかけたというのか、足にあのタイミングで!」
鉤縄一本でアラネアの足と繋がり、放物線を描く様に空を跳ぶ轟は柱の一本へ狙いを定めて蹴った。
更に別の柱を次々に蹴り、鉤縄を柱に絡ませていく。
「なんじゃ、あやつは……一体何を……」
最後の四本目の柱を一際強く轟は蹴った。
その勢いで更に空を跳んだ轟はアラネアの頭部目掛けて盾の縁を振り下ろす。
「うおおおおおおおお、いけえええっ!!」
反動と勢いのつけられた一撃はアラネアの頭部装甲を割り砕き、その巨体を揺らがせる。
ぐらついたアラネアは転倒、そこへ鉤縄に引っ張られアラネアの重量で引き倒された柱がアラネアに倒れ込んでいく。
「はははっ! どうだ効いただろ? 俺の一撃は!」
巻き添えを食らわぬように離れようとするが、腕を割れた頭部装甲に挟まれ、轟はその場を離脱する事ができそうになかった。
アラネアは最後の足掻きと言えるように足を振り回し、瞳から直線的なレーザーを放つ。
それは天井を砕き、瓦礫の雨をアラネアと轟に降り注がせた。
今だもがくアラネアの上で、轟は叫んだ。
「ティア! やるべき事があるはずだッ! 俺に構わずいけっ! 主人としての――――」
最後まで言葉を言う前に当たりは激しい轟音と地響きと砂煙に包まれて一切何も見えなくなった。
ティアは叫ぶ。そこにいるたった一人の為に。
「轟、轟ーーーーっ!!」
しかし返事はない。辺りが静けさを取り戻し、砂煙が晴れた場所には瓦礫の山とそれに潰され停止したアラネアの死体があった。
やはり轟の姿はない。
地面を叩き、ティアの頬を涙が伝う。
「なぜ、なのじゃ……みんないなくなる……誰も、誰も、わしの傍には……残らぬというのか」
「辛いですよね……姫様、じゃあ一緒に逃げますか?」
「え?」
顔を上げるとそこには
屋敷野 梢
と
御剣 刀
が立っていた。梢の瞳がじっとティアを見ていた。
ティアもその瞳をしっかりと見つめ返す。
「あなたは自分を傷つけながらも進まないといけない立場にいる、でもそれってすごく辛い事です。私なら、はは……どうなるんでしょうね」
無言のままティアは階段の方を見つめ直す。
「キュイスの反逆、それは君が歩いて出来た道を歩くことに不安を覚える者達がいたってことだろう、ここをでるまでに決めろよ。王として立ち……歩く姿を見せ続けるか、王を辞めるか」
「今逃げても、誰もあなたを責めませんよ」
「結論を出すのはゆっくりでいい、時間はいくらでも作ってやる」
涙を拭って立ち上がるティアにもう泣いているだけのお姫様の雰囲気はない。
それは誰かを背負って立つ決意をした王の姿。
「よい。時間などいらぬ。わしはここで決めた。のう、二人よ。宣言の証人となってくれ」
静かに頷いた二人の前でティアはゆっくりと呼吸を落ち着けた。
「もう逃げぬ。わしにはやらねばならぬ事が山ほどあるのじゃ」
(大事なのは何かわかるか……信念だ)
「轟……わしは行くぞ。お主の想い、わしは受け取ったのじゃ……部下の不始末は主であるわしがつけねばならぬ!」
「そうです、その意気ですよ。あなたには辛い道を支える人達がいるんですから。それを忘れなければきっと、大丈夫です」
「流石は王族って所だな。よし、先に進もう。キュイスを止める為に」
「もちろんじゃ!!」
三人が降りていくとそこは大きな広間であった。
奥に巨像が鎮座し、どこか祭壇の様な雰囲気を醸し出すその場所の中央に黒い鎧に包まれたキュイスがいた。
「遅かったですね。私の首が伸びきってしまう所でしたよ。あはは、のびたらどう責任とってくれるんですかね?」
「キュイス……お主、なぜこのような事を?」
顔を片手で覆い、壊れたように笑いながら彼は黒い長剣を振り回す。
「あは、なぜぇ? あははははは、姫様はご存じないのですか、そうですか、あはははは」
「何が言いたいのじゃっ!」
「ではお教えしましょう、ふはは。貴族への自由行動、自由を求める民達……私の出身地はそのような気勢に包まれていました。ある日、大挙して私の父の屋敷に平民達が訪れたのです。勿論自由と言う名の大義名分をもって、武器と共に」
無言のままティアと梢は話を聞いている。
「父と母、使用人まですべてが殺されましたよ、捕縛され……惨たらしく絞首刑でね。そして両親を捕らえた彼らは英雄と呼ばれ、称賛されたのです……ワタシノ平和を踏みにじった彼らが!」
長剣を力任せに振り、キュイスは地面を割った。
「わかりますか、目の前で何もしていない家族が……石を投げられ、罵られ……死んでいく様を自分の無力さを噛み締めながら見ている気持ちがッッ!」
暴れるキュイスに臆することなく、梢は歩き彼を抱きしめた。
「悔しかったんですよね、とても、とても。自分以外のすべてが敵に見えたんですよね……救いなんてどこにもないと」
「お前に、なにが……わかる……ッ!」
長剣を振って梢を振り払ったキュイスは怯える様に剣を構えた。彼は怯えている、自分の心の中を見透かされたような気がしてるのかもしれない。
キュイスが腰を落とし、突きの体勢に入る。が、その剣先は震えていた。
「何も知らない癖に……知った風な口を叩くなああぁぁぁああッ!」
風を斬りながら放たれたキュイスの突きを交差するように躱した梢。
必殺の距離から剣を振るが、既にそこには梢はいなかった。
ただ一匹、綺麗な蝶が空中を舞っている。
「くそくそくそくそ、なぜだ、なぜ当たらないッ! こんな小娘に!! 私が! 貴族の安寧の未来を目指すべき私が!!」
暴れ、だだっこのように剣を振り回すキュイスの背後に蝶化を解き、梢が再び現れる。
もう一度キュイスを背中から抱きしめる梢。
「もうやめましょう、怖くて怖くてすがりたかったんですよね? 恐らく大臣さんでしょうか、彼の言葉は甘く、優しく、心地の良い物だったはずです。でも、貴方がすがるべき人は彼じゃない……目の前にいるでしょう」
「あ、あ……あ」
涙を瞳に溜めたキュイスの背中を梢は軽く押す。
ふらふらとゆっくりとティアに向かってキュイスは歩く。
ティアはそんな彼を優しく抱きしめ、頭を撫でた。
「臣下の苦しみに気づかぬ憐れな主を許してくれ、キュイスよ。わしは強くなりたい、どんな者をも抱えられる強い主になりたいのじゃ」
「ひめ、さまぁ……ひめ……さま……すい、ません、ごめんなさ……い」
涙を流すキュイスの身体から闇の鎧が霧散していく。
「わしが目指す場所にいくには一人じゃ行けぬのじゃよ。ジニアも、勿論キュイス……お主も必要なのじゃ」
「はい…………こんな私で良ければ、一生、お仕えさせていただきます」
しっかりとティアを抱きしめるキュイスの胸元からペンダントが千切れて落ちた。
そこに現れた人物がペンダントを踏み砕く。
「あ、踏んで壊してしまいました。でも、これはもう必要ないでしょうし、別にいいですよね」
「ジニア、お主何処へ行っておったのじゃ!! こっちはもう大変だったのじゃぞっ!!」
「私も大変でしたよ。ですが、色んな方の助けでどうにかここまでたどり着きました」
彼は片手で手紙の様な物をひらひらと揺らす。
「あ、ちゃんと読んだんですねお手紙」
「はい、びっくりしましたよ? 手紙が蝶に変化したんですから」
――――時間はキュイス離脱前の休憩中に遡る。
みんなとの会話を終え、周辺の探索をしていた梢は奇妙な隙間を見つけた。
そこだけ何故か急に光り輝きだしたのである。
それは別の部屋に繋がってはいたが、眩しくて中の様子はよくわからなかった。
「惜しいですねー、お宝でもある隠し部屋かとそれにしても眩しい、これじゃ中の様子も――――うわぁっ!?」
隙間を覗き込んでいた梢は光の中に浮かぶ誰かの目と視線が合い、咄嗟に驚いて離れたのである。
「人ですか? いやーびっくりしました。まさか誰か他の人がいるなんて」
「……もしかしてジニアさんですか?」
「ええ、ですがなぜ私の名を?」
「よかった、こちらは貴方を探してたんですよ。無事ですか?」
「無事ですが……うう」
気分悪そうにするジニアに心配する梢であったが、ジニアの後方から聞こえる声を聞いて納得した。
「ほらほらぁー逃げちゃだめよ? うっふっふ、マッサージはこれからなんだから」
光が収まり中の様子が分かるようになると、彼の背後を筋骨隆々の大男に追いかけ回され、逃げ回る少女達が見えた。
その状況だけで梢は色々と察した。
「ああ……お察しします、大変でしたねー」
「やはりお知り合いですか」
「そういうことになりますかねー」
二人は合流できない事を考え、お互いに持っている情報を交換し合った。
「キュイスにはお気を付けを。恐らくどこかで尻尾を出すはずです」
「わかりました、そちらもこれを読んでおいて、後で合流を目指してください」
それだけ言うと、出発するメンバーに遅れないよう走り出しながら梢は小さな蝶を壁の隙間からジニアの眼前へ飛ばす。
梢の姿が見えなくなるとジニアの手に乗っていた蝶は小さな手紙へと姿を変えたのである。
そこには梢がこの世界に飛ばされる際に得た遺跡の仕掛けに対する情報や敵の詳細予測等が記されていたのだった。
――――そして現在。
小さなその手紙をジニアは懐に入れた。
「これがなかったらもう少しここへ来るのが遅れていたでしょうね。ほんとうに助かりました」
「助かりましたーじゃないわ! お主がいなくてどれだけ大変だったことか!!」
キュイスを抱きしめたまま、ティアはジニアをぐっと掴むと彼は苦痛に顔を歪めた。
「どうしたのじゃ!?」
「えと、はい、怪我ですよ。まあ、あちらの方々が介抱してくださったので大事には至っていません」
ジニアが視線を送った所には意気消沈した黒兎と真白が尾鎌に支えられる感じで立っていた。尾鎌が手を振っているがジニアはそれを気にしないようにしている。
「後は脱出だけなのじゃ。ほれ、そこに大型昇降機見える。あれを使えば一発で外にいけるのじゃ」
走り出すティアの背中を見ながら八神は考えていた。
果たして、このまま脱出が可能なのだろうかと。
この一件が何者かによって仕組まれた事である、というのは既に明白だった。
合流したジニアによれば、キュイスを焚き付けたのは大臣連中だろうとの事。
「大臣達が……こうなる事を予見できない程に愚かだろうか。まだ何か……ある気がするな」
「やっぱりそう思う? 僕もそう思うんだよね。こう胸の奥がざわつくというか、何か嫌な予感がするんだ」
警戒する八神とねむる。
「やはり……あっさりしすぎている」
「大臣たちの仕掛けが何もないって意味かい?」
「ああ、この場所に至っては人の手が入っているという事は大臣たちがここの存在を知らないとは考えづらい。それなのに昇降機は動くみたいだし、特に罠もない」
「言われてみればそうだね。まさか失敗するとは思ってなかったとか?」
「それも考えたけど……キュイスを精神的に焚き付け、追い詰める様な奴らが彼の能力を信じ切って全てを任せているとは思い辛いんだ。彼らにとって、キュイスは駒、だとすれば……」
ふと、八神が巨像を見上げると巨像の目が輝いた気がした。
「巨像……か、これだけ雰囲気が違うよね。他のゴーレムは丸型だったり、虫だったりするのにこいつは人型。おまけに他のゴーレムにあったような表面の不思議な紋様がないし」
「言われてみれば……何か時代が違うというか。これは古い感じがしない……ん? とういうことは……ッ!」
八神が走るよりも先にその隣を御剣が走り抜けていった。
「頼む、恐らくあの巨像は!」
「わかってるっ! 任せろっ!」
心の中で撃鉄がガチリと落ちるイメージを浮かべ、彼は世界の誰よりも早く走った。
全てがゆっくりに見える世界の中、彼はティア達のいる昇降機目掛け腕を振り下ろす巨像を見た。
剣を抜き、巨像の腕とティア達の間に滑り込む。
御剣は攻撃を見切り、巨大な腕の一撃を剣で的確にいなす。刀身の上を滑る巨像の腕と刀身が擦れ合い火花を散らした。
いなされた巨像の腕は地面に突き刺さった。
その瞬間を逃さず、御剣はその腕を足場に駆けあがっていく。
彼に呼応するようにジニアとキュイスも巨像との戦闘に入った。
「姫様はやらせませんよ!」
「ここは通行止めです……石は石らしく動かないでいてくれませんかね!」
御剣が振り向かずに八神へ声を飛ばす。
「俺達はいいから、昇降機を出せ! 後から追い掛ける!」
「わかった、昇降機は任せろ……スイッチ起動、動力は……大丈夫だ、生きてるぞ!」
八神が次々スイッチを入れると昇降機のランプが緑色に発行し、四隅に備えられた黄色の警戒灯が明滅を始めた。
巨像の頭に斬撃をくわえる御剣であったが、何度打ち込んでも効果的なダメージは与えられない。
「くそ、硬すぎる……こいつの装甲、なにで出来てるっていうんだっ!?」
巨像は攻撃を無視し、昇降機目掛けて走り出す。一歩踏み出すごとに立っていられない程に地面が揺れた。
振り落とされそうになる御剣であったが肩の継ぎ目の部分に剣を差し、何とかしがみ付く。
(どこか、どこか弱点の様な場所があれば……!)
「まだ動かんのか、この昇降機は!? なんかでかいのがこっちに来とるのじゃぞ!」
「あと数十秒は必要なんだ、直ぐには動かない……!」
昇降機の周りに設置された固定レバーが外れてゆっくりと格納されていく。動くまでまだ少し掛かりそうであった。
ねむるは迎撃に出ようとするが、ティアにしがみ付かれ身動きができない。
ジニアかキュイスに任せようかと周囲を探すが二人とも巨像と戦闘中の様でティアを任せることができなかった。
「は、離れてくれ、これじゃ、あいつを迎撃できな――――うあっ!」
揺れによってねむるはその場に倒れ、その上に覆い被さる形でティアがのっかり目を回している。
ねむるの目に昇降機のすぐ近くまで来ている巨像が目に映った。
(まずい、このままじゃ……!)
その時、天井が割れ誰かが落ちてくる。その手には火がついた爆薬を大量に持っていた。
「させるかよおおおおーーッ! 吹っ飛べェェェ!」
巨像の足元目掛けて何者かが放った大量の爆薬が地面ごと巨像の足を爆炎に包んだ。
地面が衝撃で割れ、そこに足を取られた巨像は前のめりに転倒し動かなくなった。
「おい、何寝てんだよ。まだ寝るには早いぜ、起きろよ、お姫様」
「う、く……あれ、ご……ご……」
うるうるとした瞳で降りてきた何者か――轟に抱き着く。
「轟ーーーーーーッ! 死んだかと思ったのじゃああああああああ! ばかあああああーーーッ!!」
「はっはっは! 言っただろ、信念ってのを見せるってな。諦めない事、これがどんな時でも大事だ。諦めない限り、終わりなんて訪れないんだよ」
「うむ、うむ、そうじゃの!」
動き出す昇降機の中でティアはしっかりと轟を抱きしめた。
ゆっくりと上昇を始める昇降機。
巨像を攻撃していた者達も引き揚げ、一同を乗せた昇降機は地上を目指して上がっていく。
しかし安心したのも束の間、下方の巨像が再び動きだしたのである。
柱を掴み、壁を破壊し、瓦礫を弾きながら猛スピードで巨像は昇降機を目指して昇ってくる。
ねむるは片手斧と剣をそれぞれの手に持つと、巨像の来る方向に仁王立ちで立った。
「瓦礫とか細かいのは任せたよ、八神君。攻撃をいなすのは……僕の役目だ」
ついには追いついた巨像の腕がねむる目掛けて襲い掛かるが彼はその動きを見極め、経験と勘で手斧を下から持ち上げる様に振った。
激しい火花が散り、衝撃音が響き渡る。
腕の軌道が逸らされ、昇降機へ攻撃が当たらずに体勢を崩した巨像は足止めを食らった。
動きが止まる度に暴れて瓦礫を撒き散らす巨像だが、瓦礫は八神が全て的確に分解していく。
「あと、地上まで600メートル! もう少し耐えてくれ!」
「任せろッ!」
しかしすぐさま体勢を整え、巨像は再びねむるに襲い掛かった。
両腕を振り下ろす巨像の攻撃を剣と手斧でタイミングを合わせて弾く。
再び体勢を崩された巨像は足止めされ、昇降機からすこし離された。
「この、一歩間違えは即お陀仏……この状況、スリル……病み付きになりそうだよ!!」
自分が笑っている事を感じたねむるは更なる昂揚感に包まれながら、巨像と対峙する。
振り下ろされる剛腕の一撃。
それを剣と手斧を交差させ、一瞬受けてから滑る様に外へと流す。
巨像の岩の様なごつごつした装甲と刃がこすれ合い、激しい火を散らす。
腕が千切れるんじゃないかと思える様な振動がねむるの腕を襲った。が、歯を食いしばってそれに耐える。
再び攻撃をいなしたねむるは口の端から笑みを零す。
「最高だよ、この感覚……命のやり取りをしている、この生きてる実感! もっとだ、もっと……感じさせてくれるんだろッッ! お前はッッ!!」
幾度となく繰り出される剛腕の連打を二本の武器で躱し、弾き、いなす。
その度に生が繋がり、次の死へと誘う一撃が彼に迫った。
「はははははははははッッ! そうだ、これだッ! 求めてたんだ!! もっと来いよッ!!」
「もう地上が見えた残り200メートル! 次の攻撃を躱せば助かるぞ!」
渾身の一撃と言わんばかりに巨像の腕が真っ直ぐに突き出され、巨大な拳がねむるを襲った。
それを長剣と手斧を交差させ、受け止める。凄まじい衝撃が身体を突き抜ける様に襲い、彼の膝を床につけさせた。
衝撃が振動で身体全体を貫き彼の口から血が垂れる。
「がふっ……いいよ、最高だよお前……ッ! でも残念だな……ここで時間切れだ」
交差して挟み込む様に受けたその拳を右へといなす。
巨像は自重で倒れ、即座に上半身を起こすが昇降機はもう腕の届かない位置へと昇っていた。
「悪いね、これ以上は遊んでられないんだ……僕らは地上に帰らせてもらうよ!」
その時、巨像の胸部が大きく開き、砲身が現れた。
長く黒い砲身とそれの周りに光を反射するような細長い板が四枚。
砲身の先に水晶があり、そこに光が急速に集まっていく。
「まずいのじゃ! あれは古代の粒子兵器……あんなものが放たれたひとたまりもないのじゃ!! 全員消し飛ぶぞ!!」
「くそ、何か……あれは!!」
御剣が注意深く観察すると、頭部に亀裂が入っているのを見つけた。
そこは先程、御剣が斬撃を与え、轟の爆薬でダメージが入った場所であった。
その奥にeme……の文字が見えた。
「頭部に亀裂がある! そこを集中狙いだ! みんな!」
八神の叫びに真っ先に反応し長剣を頭部の亀裂に目掛けてねむるは放った。
それに合わせる様にそれぞれが持ってる剣、爆薬を頭部の亀裂目掛けて投げ付けた。
次々と亀裂に武器や爆薬がぶつかり、広がる亀裂。装甲はもう意味を成さない状態となっていた。
そこに手斧が命中し、大きく装甲が裂け、その裂け目に爆薬が入った。
頭部装甲内部で爆薬が炸裂し巨像の頭は吹き飛んだ。
バランスを崩した巨像はぐらりと後方に倒れながら胸部から粒子ビームを天井に向かって放った。
粒子ビームによって崩れた天井が巨像を押し潰し、瓦礫の山に埋めていく。
それを見ながらねむるは言い放った。
「はははっははは、今のは流石に痛かったかい?」
直後、昇降機は地上へと着いたのであった。
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担当ゲームマスター
ウケッキ
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
推理・サスペンス
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
13人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月19日
参加申し込みの期限
2015年08月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
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