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おてんば姫と二人の騎士
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◆三章「笑顔の裏に」
~遺跡内部・隠し通路~
手負いの騎士……キュイスを開けた通路で壁を背に座らせた主のティアは手際よく止血し、応急手当てを済ませた。
「この無様な姿……一生の不覚――」
「よい、気にするでないぞ」
その言葉を聞いてキュイスは俯いた。
「おや? あんたらも迷ったのか?」
不意に声を掛けられて身を固くするティアの様子に気づいてか柔らかな口調でその者は話し掛ける。
「いや、怪しい者じゃない。俺は
曖浜 鴻
。冒険者なんだが、遺跡に来て秘密の通路みたいなもんに入ったはいいが出られなくなっちまってな、途方に暮れてたとこだ。あんたらはなんだい? 見た所冒険者には見えないが」
「……」
キュイスもティアも無言のまま数秒が経った。
その沈黙を破るかのように
深縹 露草
が鴻の背後から顔を出した、
「なるほど、わけありデースね! イイデースよ? 特に何も言わなくても万事全部、オーケーデースッ!」
大仰ともいえるその身振り手振りと怪しげな口調。
緊張した面持ちだったティアは露草を見てつい吹き出して笑ってしまう。
「あっはっはっは! これが笑わずにはいられるか。くっくっく……いや、失礼したのじゃ。わしはティア。この遺跡を所有する王国の第一王女じゃ」
「オー、プリンセスデスねー! こちらこそよろしくなのデス。私は
深縹 露草
といいマース」
「いい名前だな、露草よ。そうだ、これからわしらは奥を目指して進まねばならんのだが……可能ならば同行を願いたい。冒険者というのだから腕に覚えもあるのじゃろう?」
ティアがそう申し出ると鴻は頭を掻きながら困った表情をしていた。
「あー、そうしたいのはやまやまだが……な。そっちのお連れさんは反対みたいだぜ?」
「……」
キュイスは警戒心の強い瞳で鴻と露草を見詰めていた――いや、警戒心の強い目というよりは……明らかな下賎な者を見る目線そのものであった。
鴻はどうにもその眼が好きになれなかった。
ともすれば斬り掛かってくるような……そういう危うげな雰囲気を感じる。
(キュイス、か。こいつには常に警戒しておく必要がありそうだな……)
「のうキュイスよ、わしらだけでこの先を突破する事は不可能じゃ」
「ですが……どこの馬の骨かもわからない連中と私は――」
「良いか、決めるのはわしじゃ。わしはこの者らと行く。気に入らぬならばお主はここで助けを待っているがよいわ!」
ふいっと顔を背けたティアに困ったような表情を向けながらキュイスはしぶしぶ了承した。
キュイス、露草が先頭を歩き、ティアと鴻がそれに続く。
「それにしてもお姫様が何だってこんな遺跡なんかにいるんだ? ちっとばかり場違いじゃねえか」
「貴様、姫に対してその口調……無礼にも程が――」
食ってかかろうとするキュイスを手で制し、ティアが笑って答えた。
「はっはっはっはっ。確かにそう思うのも無理はない。だが、わしは遺跡を見るのが好きなのじゃ。独特の雰囲気というか、旧時代を感じられるからの」
「すまねえな。かしこまった言い回しはどうも苦手なんだ。つっても護衛が一人だけなんて危なくねえのか? 遺跡と言えば罠やゴーレムぐらいはいるだろう」
「もう一人いたのじゃが……はぐれてしまっての。なに、あやつのことじゃ。きっとどこぞで生きておる」
キュイスが苦々しく顔を背けていたのが鴻の視線の端に映る。
(あの騎士……やはりなにか隠してやがるな。かといって追及しても答えねえだろうし、今は警戒するしかないか)
「随分と信頼してるんだな、そいつの事。どんな奴か教えてもらっていいか? 背格好だけでもわかれば、見かけたら教えられるかもしれん」
「そうじゃな、むすっとした顔をしていての。背は高い方じゃ。無礼極まりない奴じゃが、悪い奴ではないぞ」
「はは、なるほどな。大体は分かった気がする」
会話を楽しみながらも鴻は壁や床に対して気を配っていた。なぜなら遺跡という場所柄、どこに仕掛けが隠されていても不思議ではない。不意を付かれる事すらもあり得るだろう。
「いけないデース! 足元に何かがっ! オー、シット! ここは敵の巣窟のようデース!」
「なんじゃと!?」
全員が身構えると足元の床だったと思っていた場所に無数の目が開く。そうそこは床ではなく、小さな何かの上だったのである。
体に上ってくる小さな何かを払いのけながらそれぞれが戦闘態勢を取る。
「これはチビゴーレムじゃ! 見た目と違って知能は高い、纏わりつかれないように注意するのじゃ!」
「そんなこと言ったって、この数じゃッ! くそ、離れろ!」
鴻は体に引っ付いているチビゴーレムの一体を引き剥がし壁に向かって投げると赤く発光、次の瞬間爆散した。
「自爆デスね! これはベリーベリーあぶないピンチなのデース!」
飛び掛かってくる無数のチビゴーレムは振り払っても振り払っても襲い掛かってくる。
今は辛うじて防いでいるがこのままだと近いうちに防ぎきれなくなってしまうのは明白だった。
(全員伏せてくれ、退路を作る!)
頭の中に直接聞こえるその声に従い、それぞれは身構え伏せた。
その瞬間、人の半身程の大きな火球が後方から飛翔する。
熱波を撒き散らしながら火球は直進し、チビゴーレム達を容赦なく焼き払っていく。
「今のうちに退くんだ、後方に味方もいる」
「助かったのデース、ミナサーンここは一旦退きまショーウ」
殿を務めるかのように彼――
志波 高久
は逃げるティア達の後方についた。
戦闘の音を聞きつけたのか目の前には黒い人型の人影が数体顕現している。
「一、二……四体ぐらいか。音には気を付けたつもりだが……まあ、呼ばなかったほうか」
火球の魔法はぶつかれば爆発を起こす。強力だが乱用すればその爆発音で敵を呼ぶことに繋がってしまうのである。
ゆらゆら揺れる人影が志波に接近する。
志波は不意を付いた膝蹴りで前方の一体を即座に地に沈めると、もう一体が放つ首を狙った黒い刃の一撃を盾で防ぐ。
そのまま盾で人影の頭と思わしき部分を殴りつけ、よろめく人影の中心を杖で貫いた。
苦しむような素振りを見せた人影はその場で霧散する。
奮闘する志波の背後からキュイスが歩いてくる。
その瞳は彼の背中を見据えていた。荒い呼吸のまま彼は腰の剣の柄に手をかけた。
誰かの姿がキュイスの眼前にちらつき、フラッシュバックするように記憶が見える。
(味方を背中から狙うのは卑怯の極みです。どんな存在に落ちようとも、我々は騎士。そのことを忘れてはなりません)
彼が騎士同士の試合終了後、背中から襲う対戦者の攻撃を躱し、言った言葉。
唇を噛み締め、キュイスは腰を落として走りだし滑る様な動作で剣を振り抜いた。
鋭い白刃の軌跡が黒い人影を綺麗に両断、その身を影へと帰した。
「まったく、魔道士とは思えない戦い方ですね」
人影に志波は杖を投げつけた。真っ直ぐに飛んだ杖は人影の頭へとどずんっと音を立て突き刺さった。
すぐさま走り出し人影との距離を詰めた志波は杖を抜いて地面に人影を引き倒す。
その腹部に杖の先端を当て、意識を集中させた。
次の瞬間、人影の内部が膨れ上がり、ずんっとくぐもった小さな音を立てて炎を吹き出しながら破裂する。
「本当に……魔道士とは思えません、無茶苦茶だ」
「ああ、よく言われるよ」
ティアがひっかき傷や至近距離での自爆などによる軽い火傷に応急処置を施していると、後方から志波とキュイスが歩いてきた。
「何とか間に合ったようだな」
「さっきの声は主か?」
ティアの問いに志波はいい笑顔で答えた。
「そうだ。通路を進行していたら、戦闘の音が聞こえたんでな。急いで向かったんだよ」
志波が見渡すと遅れて向かってきた冒険者や魔法使い――といってもこの世界に転移させられた顔見知り達だが彼らも合流できているようで安堵する。
「それにしても結構な人数じゃな、皆主の仲間か?」
「ああ、そうだ。こういう遺跡は少人数で攻略に動くよりかは大人数で攻略するものだろ」
「確かにそうじゃな。パーティーとして挑んだ方が攻略は容易となるじゃろう」
それぞれが軽い自己紹介行う中、キュイスは俯いていた。
(どんどん人数が増えていく。このままでは……)
そのキュイスから少し離れた場所で皆から外れ、自分の血で紋章を描き露草は言葉を唱えていた。
(ジニアさん、光れ!)
しかし特に周囲に変化はない。
落胆する露草であったがふと目に留まったキュイスの表情が先程と違うように思えた。
俯いたキュイスに露草が話しかける。その露草の眼は鋭く、今までの雰囲気とは少し違う様に一瞬見えたがすぐさまいつもの笑顔を絶やさない表情へと戻って言葉を紡いだ。
「気分でも悪いのデースか? お水でも飲みマスか?」
「いえ平気なので。一人にしておいてください……」
「そうデースか。無理はしないようにしてくだサイね」
みんなの輪に戻っていく露草。その背中を眺めながらキュイスは思う。
このままではいけない。
これ以上計画を乱されるわけにはいかない。
(計画は実行されねばならない。全ては選ばれし貴族による、安寧の未来の為に)
「おい、その傷……仲間割れか」
「……ッ!?」
言っていない事実を言い当てられ一瞬驚いた表情をしてしまったキュイスであったがすぐに平静を取り戻し、彼――
龍目 豪
に答えた。
「あ、ああ……そうなんですよ。仲間の騎士ジニア、いえ仲間であった騎士……ですね。ははっ、信頼していたんですけど……ね」
(…………嘘だ。かまかけてみたつもりだったが、案外簡単にボロを出すんだな)
話しかける前からキュイスの傷口を観察していた豪はそれが誰かに付けられたものではないという事に気が付いていた。
右腹部の裂傷、端から見れば正面から斬りつけられた様に見える。
だが、その傷は自ら傷つけなければ届かないような背中付近の位置まで一筋で達していた。
どのような刃物を使っても敵が一度だけ斬りつけたにしては不自然な位置なのである。
(自らを傷つけてまでも偽装しなければならない事があったってのか、この騎士は)
考えを悟られないよう、なるべく顔には不信の色を出さずに豪は話を続けた。
「そうか、長いのか? その、ジニアって奴とは」
天井を仰ぎ見ながら遠い目をしてキュイスは答えた。
「はい。しがない場内警備任務の私と違って……彼は姫様の護衛役であり武術の指南役でした。まさに憧れの存在……ですね」
「へえ……凄い奴だったんだな、そのジニアって言う騎士」
「ええ、それはもう。士官学校すらでていないのに、自身の実力だけで今の地位を勝ち取った強者ですよ、彼」
悲しそうな瞳をしながらキュイスは言葉を続ける。
豪は立ったまま壁に背を預け静かにそれを聞いていた。
「私は――――追いつきたかったんです。自分の行く先で、光り輝く存在である彼に……少しでも近づきたくて」
悲しそうな、それでいて寂しそうな……そんな雰囲気を纏わせたキュイスに豪は何も声をかけることができなかった。
少々の間。静かに揺れる焚き火がぱちぱちと音を立てている。
「……少し話しすぎて疲れてしまいました」
「わかった、ゆっくり休んでくれ」
「……はい」
俯くキュイスに背を向け、豪はティアの元へと足を向けた。
話は片方から聞いても意味がない。ジニアに聞けない今、彼の事は彼女に聞くのが適任だろう。
ティアは壁にある意匠を凝らした飾りを弄っている最中であった。
「なんかあやしいのう……ひっぱったらカチって仕掛けでも発動――」
「――したら大変だろ。何してるんだお姫様?」
「ひぎゃああああ!? なにもしとらん! なにも、本当になにもしとらんぞ! ちょっと弄ったら隠し部屋でも出ないかなーなんてこれっぽっちも期待なんぞしとらんからな!」
深いため息をつくと豪は姫の肩をぽんぽんと軽く叩いた。
「罠があったらどうするんだ? 不用意に触るなよ。探検を楽しみたい気持ちもあるだろうが……ケガ人もいるんだ。慎重にいこうぜ」
キュイスの方を目で見る様に豪が促すと、ティアは先程までのはしゃいでいた自分を反省するように気を落とした。
「そう、じゃな。少し浮かれすぎておったわ……忠告してくれてありがとうなのじゃ」
「わかってくれればいいさ。探検で勝手な行動は自殺行為だ。自分だけならともかく、最悪……仲間全員が全滅する。よく考えるんだ」
「うむ、心に刻み込んでおこう」
「ああ。で、話しは変わるんだけどさ……ジニアってどういう奴だったんだ?」
近くの崩れた石に腰を掛け、ティアは楽しそうに話しだす。
見ぶり手振り交じりでさも大げさに。
「ほほう、あやつに興味があるか? よいよい、話してやろう。ジニアは……小言がうるさく、剣術の稽古も厳しくて死ぬかと毎回思うし、わしが姫であっても容赦や情けの一つもかけん」
その話の内容的に考えれば好印象を与える人物ではなく、厳しい堅物といったイメージであったが……楽しそうに話すティアを見ているとただ堅物なだけではないと思えてくる。
「挙句の果てには主であるわしを事あるごとにからかって遊ぶのじゃぞ! まったく――――――良き忠臣じゃ。常にわしの事を一番に考えてくれる。他の者みたいに姫だからという偏見を持っていない、そこも奴のいい所じゃ」
「そっか、ティアはジニアが大好きなんだなっ」
急に顔を赤らめ、とてもわかりやすい反応をティアは豪に返した。
「そ、そんなわけなかろうっ! わしはあやつのことなんぞ好きではないわっ!」
ばっと立ち上がったティアは豪の頭をぽかぽかと叩く。
「わかったって! いてっ! わかったから叩くなよっ!」
「ええい、そこになおれいっ! その記憶ごと末梢してくれるわーーっ!」
俯いていたキュイスの目にティアの騒がしい声が届く。
じゃれあうティアと豪の二人。
そこには身分の違いなんてない、対等な仲間という関係があったのである。
それを見て……どこだろうか、胸の奥だろうか。
締め付けられるような何とも言えない痛みが広がった。
「すごいデースね! 踵落としがまるでダンスのようデース!」
「そうじゃろう? 実はこの間な……」
ティアの責め苦から解放された豪は気づかって肩を貸してくれた
サキリ・デイジーカッター
に言う。
「ふう、助かったぜ……そうだ、キュイスの事でちょっと話がある。少し、時間いいか?」
「いいよ。話って何?」
「ああ、実は――――」
豪とサキリが話し込んでいる間、キュイスはティアを眺めていた。
皆と楽しく話すその様子を見たキュイスは考える。
果たして……必要なのだろうか。選ばれし貴族による統治など。
民が求めているのは皆が笑える世界、自分が自分でいられる場所……今見ている、こういうものではないかと。
そう思う彼の脳裏にフラッシュバックするある場面。
剣を振り上げる男数人。自分を守るために手を広げて盾となった姉。
千切れるペンダント。
(逃げるのよ……貴方は生きて……)
何もできなかった自分。逃げるしかなかった自分。
様々な過去の場面が波の様にキュイスに襲い掛かる。
雑踏の中、隠れてみる捕縛された親族達の処刑。
(ぐっ……何を惑わされている。そうだ。私は、自由というまやかしなぞ……)
胸から下げたペンダントを握り締め、彼は歯を食いしばった。
(全ては……選ばれし貴族による、安寧の未来の為に)
――――少々の休憩後、一行は地下二階へと進行した。その歩みは順調なものであった。
チビゴーレム達を捌きつつ、戦闘はなるべく避けて地下への階段を探す。
人数が増えた事により、前衛と後衛がしっかりと線引きでき、危なげなく進んでいく事が可能となった。
(ジニアさん……光れ!)
小さく唱えた露草であったが、周りに光るものは何もなかった。
「オーウ、はずれデスネ」
少々落胆した露草であったが本来の作業へ戻る。
今彼が任されているのは、床に張り巡らされた地雷の罠の解除である。
(外すべき場所よ、光れ!)
新たに紋章を描き、言葉を唱えると床の一部が発光した。
その床板を外すとそこには小さな水晶がはまっている。それを取り外すと、床に走る赤いラインが色を失った。
試しに小石を掴み、地雷の設置された床へと投擲する。
こつんっと音を立て床を転がる小石。床が爆発する様子はない。どうやら解除できたようである。
「OKデース、ミナサーン、解除したので先に進めマース」
地下二階の探索を半分程終えた頃、一行は大きな広間に辿り着く。
そこは天井がとても高く、まるで何かと戦う事を想定されているかのような広さを備えている。
「気を付けろ、どうもここは……きなくさい」
鴻は散開しつつ警戒を強める様に提案、皆はそれを了承し辺りの警戒を強めた。
皆が警戒してくれている間に露草は注意深く周囲を調べたが……辺りには階段どころか扉すらなかったのである。
「ふーむ、これはベリーベリーハードデースね。行き止まりに思えてしかたないデース」
露草がそういった直後、上空から何かが落下してくる。それは球状の物体に足や手が生えたゴーレムだった。
大きさとしては2メートルぐらいはあるだろうか。ボディの中心には機関砲の様な物が二門備えられている。
数体降り立ったマザーゴーレム達は浮遊しながら腕に装備されたビームチェーンソーを振り回し一行に襲い掛かった。
「マザーゴーレムじゃ! じゃが、こやつは近くでチビゴーレムに損傷を与えない限り襲ってこないはず……」
「だが、現に襲ってきている! 一体どういう事なんだ……」
志波が周囲を探るとナイフに刺され、もがいているチビゴーレムが地面に転がっていた。
「なんでこんな所にチビゴーレムが……しかもわざと急所を外して簡単に死なないようにするなんて……っ!」
急接近するマザーゴーレムに気づき、志波は迎撃の為、杖を構えた。
「こいつは熱いぞっ! 喰らえッ!」
志波は中程度の大きさの火球を放つ。燃え盛る火球はマザーゴーレムの胸部装甲に直撃。
しかし次の瞬間、それは吸収され反転させたように志波に向かって放たれた。
「なんだとっ!? 跳ね返しただって!?」
即座に盾を構え火球を受けるがその衝撃力は高く、腕を上に跳ね上げられた状態で後方に吹き飛んだ。
「ぐあああっ!」
吹き飛ぶ志波目掛けて両腕を交差させたマザーゴーレムが肉迫する。
襲いくるビームの刃を身を翻して空中へと避け辛うじて躱した志波はマザーゴーレムの頭部に手をつき、関節部分に盾を突き入れた。
「ここなら、その防御も意味ないだろ……燃え尽きろ!」
盾で開いた関節部に直接火球を生成、紅蓮の炎を弾けさせる。身体の隙間という隙間から激しく炎を吹き出しながらマザーゴーレムは機能を停止した。
「まずは一体!」
彼はろっこんを用い、皆の脳裏に直接弱点を伝えた。
(装甲表面に魔法は吸収されて跳ね返されるが、中身は平気らしい! 皆、関節や隙間から内部を狙え!)
志波の情報により、次々とマザーゴーレムを仕留めていくが、その数は増える一方であった。
「キリがないのう!」
ダンスの要領で足を振り上げたティアは高速回転で勢いを付けた踵をマザーゴーレムの腕に横から打ち込む。
鈍い衝撃音が響き、ぐしゃりとマザーゴーレムの腕は千切れ跳んだ。
「よし、このまま――――ッ!?」
ふらついたマザーゴーレムの腹部から黒い銃身が伸び、それはティアを狙っていた。
攻撃の余剰動作によりいまだティアは回避に動けない。
まずい、やられる……そう思った時、マザーゴーレムの背後から現れたキュイスが剣を首の関節部に突き入れ、そのまま全体重をかけて捩じ切った。
流れる動作で胸部装甲の隙間にキュイスは鋭い突きを放つ。
真っ直ぐに伸びた銀閃はマザーゴーレムの心臓部を貫き、活動を停止させた。
キュイスがゆっくりとティアに近づく。
「ああ、キュイス。助かっ――――がっ!?」
腹部を拳で打ち、一撃で昏倒させたティアに剣を振り被り、今まさに振り下ろされようとしたその瞬間、鴻が二人の間に滑り込みその凶刃を弾く。
「……っ!」
「やはりな。この事態を引き起こしたのもお前さんなんだろう。まあ、姫さんをここでやらせるわけにはいかないんでな。少しばかり、相手を願おうか」
地面を踏み締めると、鴻はキュイスを観察した。
隙がない。真っ直ぐに剣を構え、背筋をしっかりと保つその雰囲気は騎士そのもの。
なるほど、まさに教本通りの綺麗な姿勢といえる構え方なのだろう。
(だがな、その教本通りが実践じゃ仇となるっ!)
姿勢低く突っ込んだ鴻は足で床に積もった埃や砂を巻き上げた。
意図せぬ攻撃にキュイスは目と鼻にまともに埃を受けてしまった。
怯んだキュイスの隙を見逃さず、鴻は剣を振り抜くと右から一閃、そして返す刃でもう一撃くわえた。
「ぐあっ! 何だとっ!? 貴様……!」
まだ埃から解放されない片目を押さえながらも反撃しようと剣を構えようとするが、それは露草の放ったナイフで防がれる。
「させまセーン、大人しくされたらイカガデースカ?」
口調はゆっくりだが武器を構える露草には微塵も隙はなかった。
鴻に斬られた胸部から血を流しながらキュイスは後方に跳躍し二人から距離を取った。
「二人がかりとは卑怯な……!」
「戦いに卑怯もくそもあるか。大事なのは生き残る事だ、その辺……よく覚えておけ」
「そうデースヨ。命はベリーベリー、大事なのデース」
「ぐぅう……平民風情が。図に乗って……!」
怨嗟の込められた瞳で鴻と露草を睨みながらキュイスは背後の壁の一部を操作する。
すると、壁が開き彼の背後に細長い通路が出現した。
「逃すかッ! ――――ちぃっ!」
後を追おうとした鴻と露草であったが、上空から襲い掛かってきたマザーゴーレムに邪魔をされそれは敵わなかった。
「ん……う、何が、一体……キュイスっ!? ぬしは何処へ行くつもりじゃ! 待てッ!!」
「姫さんっ!? 目を覚ましたのか! ぐあっ! ダメだ、追うな!! 戻れ!」
「いけまセーン! はやく戻るのデース!」
通路に消えたキュイスを追いかけていくティアに二人は声をかけるが聞こえていない様だった。
追っていきたいところだが、目の前のマザーゴーレムがそれを許さない。
「聞こえてないのか! くそ、このままじゃ姫さんがまずいっ! だが……これでは……!」
チェーンソーを弾き返しながら応戦する鴻と露草の背後をサキリが走り抜ける。
「あっちは任せて。鴻さん達はこっちを頼むよ」
「OKデース、任されまシター!」
「わかった、姫さんを頼んだぞ!」
戦闘を継続する鴻達を背に、サキリは細長い通路へと入っていく。
通路にに飛び込むサキリは思う。
自身の考えと休憩中に豪から聞いたことが正しいのなら、彼は真の意味では敵ではない。
解き放ってやらなくてはいけない。迷いという苦しみの迷宮から。
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推理・サスペンス
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
13人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月19日
参加申し込みの期限
2015年08月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月26日 11時00分
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