恐竜と遊ぼう！｜リアクション

恐竜と遊ぼう！

☆フツウの危機？

　映画村の一番広いホールを使った、恐竜展示イベント会場にて。
「うぅぅ、何が何だかわかんないよ……」
　恐竜に顔をなめられた小学４年生の宮越裕司は、離れた場所に逃げて考えていた。
「…………あっ、そういえばお母さんは今どこにいるんだろう？　あんなのに会ったらあぶなそう……やっぱり放っておけない……」　
　不安げにあたりを見回す裕司だったが、一緒に来た母の姿は見つからなかった。
（……さっきの恐竜は知ってる、トリケラトプスだ、優しくて強い、僕も大好きな恐竜……）
　ふと昔のことを思い出す。寝子島に来る前、いじめにもあっていなかったころ。
（昔木で作ったなぁ、懐かしい、あんな迫力は出せなかったけど……）
　裕司は手先が器用で、人形づくりなどが得意なのだ。
（……だめだめ、“げんじつとうひ”してた……）
　我に返った裕司はボサボサ頭を振り、考える。
「どうにか逃がせたらいいけど……でもあんな大きいの相手に何もできないし」
　うつむいた裕司は無意識にポケットに手を入れた。
　その手が何かに触れる。

　御剣刀は70cmくらいのゴシックロリータの服に身を包んだ人形【ルヴィア】を抱えていた。
（怪獣映画のイベントがあるというので日差し対策してルヴィアと一緒に映画村へ来たが……展示してある恐竜が神魂の影響を受けたようだな）
　来場者はアトラクションだと思っているようでまだ騒ぎになっていないが、事故が起きて来場者が怪我をしたり騒ぎになることは避けたい。
「そういった事を防ぐ為にも見回ろう……さて、ルヴィアは何処にいきたい？」
　パンフレットとにらめっこしながら人形に話しかける刀。
（このまま何事もなく神魂の影響がなくなれば、アトラクションとして終わるか）

　中学２年の篠原翠響は、学校の友達数人と映画村に遊びに来ていた。
　今日のお目当ては忍者ミュージアムだ。
「その前に展示恐竜イベントを見ていこうか」
　と友達がいうのでここへ足を運ぶこととなった。
（さすがに模型とはいえ迫力あるなー）
　いろいろな実物大の恐竜模型を見て、
「これ、動いたらすごいだろうねー、がおー！」
「きゃー」
　友達は翠響に襲い掛かるまねをした。
　ふざけあっていたが、そのうち友人は飽きたらしい。
「時代劇のロケでも見に行こうか」
「うーん、もう少し適当に恐竜を見てから合流するね」
　翠響はいつの間にか恐竜を見るのが面白くなっていた。　
　友達を見送り一人になった後、
「ガオー！」
　地響きと鳴き声が響き渡った。
　何事、と音のした方向を見ると──１０ｍもある恐竜がガチで格闘している！

　ちょうど通り掛かった刀も足を止めた。
「喧嘩しているな。恐竜はああやって戦っていたのか、面白いな」
　写真つきの説明を見ると、アロサウルスとケラトサウルスであるらしい。
　ケラトサウルスにのしかかったアロサウルスは３本指の大きな腕でチョップを食らわせた。
「目の前で恐竜が戦ってるなんて！　これってロボット？　凄い迫力だよ！」
　興奮した翠響は目を輝かせてスマホを取り出す。
　そしてスマホのカメラでの撮影に夢中になった。
（ノックアウトされた方が倒れて怪我人とか怖いから、決着がつくまで眺めていよう）
　翠響に目をやりそんなことを思う刀である。
　しかし決着は延々とつかない。
「……大丈夫そうなら、次いくか」

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