吹雪に閉ざされた洋館にて……｜リアクション

吹雪に閉ざされた洋館にて……

●容疑者たち

「深淵の英知をのぞかんとする同士よ、いざ行かん」
「……一緒に捜査しよう、と言うことよね？」
「……お嬢様、このような者とは関わり合いにならないのが良いと思います」
　樹の誘いに興味を持った様子の美野梨をブリジットが止める。
　その時、サキリが部屋に入ってきた。
「おや、捜査ですか？　僕にも何か出来ることがあったら手伝わせてください」　
「よし、いざ探索へ向かわん」
「何を探すの？」
「先刻部屋を出て行った娘がいまだ戻らぬ。新たな生贄となったのではないか気がかりだ」
　顔を見合わせた美野梨とブリジットは、樹とサキリの後に続くことにした。
　
「絢？」
　絢の姿が見えなくなったことに、真優理は気づいた。
（嫌な予感がする）
　トイレにはいない。風呂場にも……
「絢！」
　台所で、先に部屋を出た４人が棒立ちになっていた。
　胸から血を流し、こときれた絢の前で。
　目の前が暗くなって、そこから真優理の記憶はなくなった。

「あらあら、皆さんどうしたんですか？」
　メイドの紫苑が現れた。
「あら、またですか………呪われてるのかしら？」
　死体を見てけろっとそんなことを口走った紫苑は、絢を持ち上げようとする。
「ちょっと待て、現場保存が必要と国家権力からの派遣者が……」　
　驚く樹や皆に、紫苑は動じずに答える。
「これから食事の支度をするのですが、皆さんは気にしませんか？　寒いとはいえ、火も使いますし衛生的に心配ですね。そこで失神してる刑事さんは生きてるみたいですし、この方も運んであげたほうが」
「わかったわ。でもせめて写真を撮りましょう。なるべく触らずにおいて」
　美野梨が言い、ブリジットがスマホで現場の写真を撮影した。
「どなたか運ぶのを手伝っていただけませんか？」
　紫苑が言う。
　サキリが手を貸し、手袋をして紫苑と共に絢の遺体を持ち上げる。
「メイドとして協力は惜しみませんよ。今回の探偵さんのお手並み拝見ですね」
　遺体を運びながらのんびり言う紫苑に、皆毒気を抜かれて何も言えなかった。