吹雪に閉ざされた洋館にて……｜リアクション

吹雪に閉ざされた洋館にて……

〇真犯人？

　真優理はベッドの上で目を覚ました。
　……しばらく意識を失っていたらしい。
「気がつかれましたか。大丈夫ですか？」
　紫苑が声をかけてくれた。
　絢の無残な姿が頭をよぎる。
　夢ならばいいのに、と思いながら真優理は尋ねた。
「絢ちゃんは……？」
「黒崎様と一緒の部屋に安置いたしました」
「……そう」
　最愛の従妹の喪失。
　体中の血が逆流するようだ。
　できることなら縋りついてずっと泣いていたい。けれどそれでいいのだろうか。
「待ってて……犯人は絶対見つけ出す！」　
　心を引き裂かれた真優理だが、すぐに捜査を再開することにした。
「お食事されますか？」
「いえ、いいわ。ずっとついていてくれたの？　ありがとう」
「いえ。具合の悪い人は放っておきたくないんです。親近感があるというか」　
　時間を見ると２０時を過ぎていたが、空腹は感じなかった。
　とてもじっとしてはいられない。
　遺体を見るのが怖くて、まずは台所に向かった。
　ブルーシートをめくると、血だまりが残っていた。
「これは、水？」
　床に薄赤い液体が広がっている。
「血を洗い流した？　なぜここだけ……」
　ふと絢の遺体の様子がフラッシュバックした。
　人さし指の先が、血に染まっていた……
「何をしているの？」
　その時、声がかけられた。
　柚春と美野梨とブリジット、さらに樹が台所を覗き込んでいた。
「思いついたことがあるの。美野梨さん、実験室の薬品を使わせてちょうだい」
　真優理の言葉にただならぬ様子を感じ、美野梨は頷いた。

　しばらく後、調合を済ませた真優理は雑巾で赤い水をそっと吸い取り、薬液を床にかけた。
　そして電気を消すと。　
「これは……」
　床が青白い光を発する。
　それは三文字のカタカナのように見えた。
「絢ちゃん……私に伝えようとしてくれたのね」
　だが柚春が反論する。
「これ、たまたま字に見えるだけじゃない？　それに、絢さんが書いたとは限らないかも。犯人が捜査をかく乱するために……」
「いいえ、それなら水で流したりせずに残すはずよ」　
　真優理はきっぱりと言った。
「生贄の血を流した冥府の使者の正体を、指摘する時が来たようだな」
　樹も言う。
　しばらく考えた柚春は言った。
「……残念ながら間違ってるよ」
「えっ？」
　柚春は真顔で告げた。

「だって犯人は……私だから」

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