吹雪に閉ざされた洋館にて……｜リアクション

吹雪に閉ざされた洋館にて……

●第二の犠牲者

「あなたが美野梨さんの家庭教師？」
「はい」
　ブリジットは混乱を押し隠し、真優理の聴取に答えていた。
（なんか違う人が死んでる、Why！）
　この日の為に、ブリジットは苦労して太平洋を渡ってこの国で日本語を学び、大学院の博士課程にまで進んで、この館の令嬢の家庭教師として入り込んだ。
（すべては憎いあいつに復讐する為に。動画サイトとニャキペディアで毒物について学んだ日々が思い起こされるわ）
「ええ、メイドさんにお嬢様にお茶をお出しするようにお願いしに台所へ行ったんです。」
（メイドの気を引いているすきにすり替えた毒入り角砂糖は確実に草太郎の命を奪い、私の復讐は遂げられる筈だった。名探偵の孫とか、蝶ネクタイにメガネの小学生でも出てこない限りは……）
　そう、完璧な復讐計画のはずだったのだ。
（なのに）
「どうして、ミスター黒崎が死んでいるのデスカ！？　ＷＨＹ！　Ｗｈａｔ　ｔｈｅ……イミガワカラナイデスネェ！」
「ブリジット先生、大丈夫ですか？」
　メイドの紫苑に優しく声をかけられ、ブリジットは我に返る。
（いけない、興奮してしまったわ）
　ブリジットは気を取り直し考える。
（犯人はメイド……確かに疑わしい。ま、本当は私が殺すつもりだったのに疑わしいとか言うのも何だけど。でも、もしかしたら、自然死の可能性も……）
　そんな考えも浮かんだが。
（ないわーそれはないわ。それとも、手違い？　あの男専用のカップに毒を入れたのに……）
　台所に確認に行きたい。
　しかしメイドでもない自分が今台所に行くのはリスクが大きい、と考える。
（犯人は現場に戻る、と言うわ。今行くのは危険すぎる）

　絢は台所に向かっていた。
（紅茶の砂糖に毒が入っていたのかもしれない）
　角砂糖入れを見つけ、蓋を開けたとき。
「毒殺か……よくも俺の獲物を横取りしてくれたな」
　そんな小さなつぶやきが耳に入り、絢は息を飲んだ。
「……！」
　振り向いた瞬間、相手と目が合った。
　その瞳には狂気が宿っていて、本能的な恐怖を感じた。
（逃げなきゃ）
　そう思うのに、体が動かない。
「俺の正体に気づいたのは褒めてやるぜ……だが頭が良すぎるのも災難だ、お前も俺の獲物だ」　
「ち、違……」
　何かがきらめくのが見えた次の瞬間、絢は体に衝撃を感じた。
　胸から、ごぼごぼと熱いものが湧き出してきた。
（真優理さん……）
　声が出ない。
　犯人が去っていく。
　絢は自分が助からないことを悟った。
　意識が薄らぎくずおれながら、絢は流れ出る自分の血に指をつけた──

　そして絢が動かなくなると、戸棚の陰から動き出す者の姿があった。
「……」
　血で書かれた床の文字を見てしばらく考えていたが。
　コップに水を汲むと、文字の上からかけ流した。　