吹雪に閉ざされた洋館にて……｜リアクション

吹雪に閉ざされた洋館にて……

〇真相

　自分が絢殺しの犯人だ、と主張を続ける柚春に、「なぜ？」と、真優理は尋ねたが。
　結局柚春は口を割らず、翌朝警察に連行されることになった。
（兄さんは幸せにね……）　
　未だに見つからないサキリに向けて、心の中で祈る。
　サキリは柚春の異母兄弟だった。少なくとも柚春はそう信じていた。
（とても素敵な兄さん、名乗り出れたらどんなによかったか……僕にできるのはストーカーだけだった。いつもは遠目に見ているだけだから、食事を共にしたり会話ができるなんて運命ではないかとロマンチックなことを考えたよ）
　台所に潜んでいて絢殺しを見届けた後、ダイイングメッセージに気づいて消した。
（まさかあれを読み取られるなんて）
　それでもあきらめず、庇いきれなくなったら、人質を取ったり殺人を犯すことも厭わないつもりだった。
（やっぱり兄さんはすごいな。先を越されちゃった）

「本物の冥府の使者だったな」
　サキリの狂気に満ちた目を思い出しながら樹はつぶやいた。
「だが、生贄は十分に捧げられ、これにて檻は開いた」
　犠牲は防げなかったものの、自身が無事だったことにひとまず安堵して、樹は帰途に就く。

「絢……絶対にあの犯人を捕まえてみせるわ」
　絢の遺体を収容したパトカーに乗り込む真優理を、紫苑が見送る。
「残念でしたけど、残された人が悲しんでいると死んだ者もつらいんですよ」
　慰める紫苑の言葉に、真優理は怪訝な顔をした。
「その言い方、まるで……」
「ふふ、内緒ですけど私幽霊なんです。かつてこの洋館で病弱で寝たきりのまま死んじゃって。年月を経て実体を持ってますけど」
「……は？」
「長い事この洋館で幽霊やってますけど、定期的にこういう事件起きるんですよ」
「……本当に？　あの、幽霊ってどうやったらなれるの？」
「水谷警視、時間押してますので車出します」
「ちょ、ちょっと待って……」
　無情にも答えを待たずに車は走り出す。　

「次の事件は、案外早そうな気がしますね」
　紫苑はのんびりとつぶやくのだった。

　そして屋敷には、主人の弱みを握ったメイドと主人の命を狙う家庭教師が残されたのである──
　

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
皆さまのアクションが素晴らしく、幸運にも犯人と探偵のバランスもいい感じで、楽しんで執筆させていただきました！
メイドさんが三人もいたのは想定外で、弥生さんいらなかったので執事に回ってもらいましたが（笑）

推理物を読むのは大好きですが、トリックを考えて矛盾なく書くのは難しいと思っていました。でもすごく楽しかったです。
おかしなところもあるかもしれませんが目をつぶっていただければ幸いです。

それでは、ご縁がありましたらまたのご参加をお待ちしております。

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