寝子祭前日談　～準備はどうだい？～｜リアクション

寝子祭前日談　～準備はどうだい？～

　ローブを作り終え、文芸部へと顔出しを終えた結衣香が新聞部と射撃部の元へ戻ると試食品を持ってきた真央や買出しを済ませた茉菜と出くわした。彼女と一緒に修も姿を現す。
　真央は休憩所にもなる場所へすぐに向かい、衝立に今までのカラー紙に印刷して隙間なく貼り上にラップ等かけ汚れない壁紙を作成する。机も同仕様という力の入れようだ。
「麦茶も用意しておくのだ。それからそれから、湯のみに、洗剤も用意なのだ」
　ジャグと、麦茶のパックなどを手早く取り出していく真央。小さな身体につまった元気でまだまだ頑張るようだ。
　茉菜は茉菜で占い師の部屋の仕上げにかかった。調達してきたダンボールに書かれたメーカー名前などは同じ色のテープや紙で誤魔化し、角度を計算してしっかりした物を作る。
（ちゃんと作れば、段ボールって小屋を作るのに立派な強度が出るの。段ボールの細工は親を泣かせるほど得意だよっ！）
　まぁ、ダンボール製の隠れ家っぽい物を修理する際学校に行かないどころか家にも帰らなかったというのは如何なものかと思うが……。ともかく、それだけ思いいれがあるようだ。
　街で買った布などで飾り付けを行えば、あっという間に出来上がり。その出来栄えに茉菜は満足げに笑みを浮かべた。
「中々魅力的ですぅ～！」
「でしょ～？」
　様子を見に来た美咲紀が目を輝かせれば、ちょっと自慢げに笑う茉菜。結衣香も感心したように見ていれば、いつのまにか修が傍にいた。
「皆、なかなか個性的で素敵な飾りつけだな。ん？　日々野が抱えているのは衣装か？」
「はいっ。さっき出来上がりましたっ」
　結衣香がローブを広げて見せれば、その出来栄えに皆が歓声を上げる。準備を終えた真央もまたそれを見、「まさに魔法使い！　って感じなのだ！」と楽しげに頷く。
「少し休憩を挟んでから、仕上げといこう。結構頑張ったから少しは時間に余裕がありそうだ」
　修は進行状況を確認し、静かに頷く。と、美咲紀が手を上げた。
「シュー君！　ちょっと用意したいものがあるので星が丘に戻ります～」
「あぁ、気をつけてな」
　修が頷くと、美咲紀はありがと、と言って駆け出す。真央は試作品のクッキーを美咲紀へ渡すと、皆にも振舞った。

　その頃、バスケット部にて。
「先輩、話ってなんですか？」
「それなんだけどね。単刀直入にいうよー。羽生ちゃんをミスコンテストにエントリーさせちゃいました」
「え……？」
　ポスターを貼り終えて戻ってきたところを同じ部活の先輩に呼び出された碧南。そこで彼女はおもいっきり頭を抱えた。
「ミスコン出場って……もうエントリー済み!?　ちょ、ちょっと待って！　そんなの聞いてないよ！」
　碧南がたじろぎながら声を上げる。何人ものバスケット部員たちはその反応に笑いを堪えたり苦笑したりしていた。というのも、彼女たちは碧南に内緒でミスコンテストへとエントリーさせていたのである。
「ちゃんと似合う物を用意しているから、ね？　せっかくだし碧南ちゃんのかわいいトコ、全校生徒に見せちゃおうよ～！」
「「ね～～♪」」
　という先輩＆同級生たちの反応に真っ赤になる碧南。その原因は、彼女たちから差し出された物だった。
「……ってこれ、ビキニじゃなぁい！　それになんかアクセサリーも大人っぽいし……に、似合うかなぁ」
　そう、水着部門だったのである。身長１８０センチの長身にすらりとした手足。程よく育ったバストと愛嬌のある顔。モデルにもなれそうな彼女に実に似合いそうな蒼いビキニに貝やシルバーをつかったアクセサリー。そしておしゃれなマニキュアも用意されていた。
　おまけに「当日のメイクとかもやってあげようか？」とか申し出る先輩もおり、碧南は退路を立たれていることをじわじわ実感するのだった。