寝子祭前日談　～準備はどうだい？～｜リアクション

寝子祭前日談　～準備はどうだい？～

「総合受付の設置、終わりました！」
　綾花がアジトへ駆け込む。傍らには響也も一緒だ。２人は先生がたへの確認を終えた後、共に総合受付の設置を行っていたのである。
「２人ともお疲れ。打ち合わせもざっくり終わったから、お夕飯にしようか。テーブル片付けて、皆で食べようよ」
「それ、いいな」
　響也は指を鳴らして喜ぶ。彼は空いた時間を使って既にコンビニでパンやおにぎりを購入していたので、テーブルに並べる。
「お菓子もあった方がいいでしょ？」
　と、部屋に入ってきたのは安本マコト。差し入れなのか、お菓子を持ってきてくれている。それに委員の皆が歓声を上げれば、美和が楽しげに笑う。
「私からも差し入れよ。しっかり食べて頑張ってね」
　美和の差し入れはペットボトルのお茶と、作っただろうサンドイッチだ。シンプルではあるが、とてもおいしそうである。
「あれ？　２、３人足りなくない？」
　メンバーの不在に気づいた響也が辺りを見渡すと、マコトが思い出したようにいう。
「そういえば夏神とロイスが家庭科室で何か作ってたっけ？　すっげぇ美味そうだった！」
「ナツくんが夕食にちょっとしたモノを作ってくれるんだって」
　由貴奈の言葉に、さらに色めき立つアジト内なのであった。と、その時。がらり、とアジトの戸が開き、修が現れる。
「いい匂いだな……。もしかして、委員メンバーも泊まるのか？」
「そうですよ。八神さんはどうしますか？」
　優菜が問いかけると、修は少しだけ苦笑した。彼は既に部活動での宿泊許可を貰っていたのだ。
「俺は、部活の仲間と泊まります。勿論こっちの仕事もがんばりますけど……」
「こっちは大体終わった。あとはトランシーバーの使い方を習うぐらいだし、今日はもう部活のほうに回っていいよ」
　由貴奈が穏やかにいい、付け加えるように「働きすぎて本番に熱出さないように」と念を押す。他のメンバーも何かを察したようで、修はその言葉に甘える事にした。

　家庭科室では、ちょっとしたものを……と、夏神零が食事を作っていた。マリベルもそれを手伝っている。
「手際がええねぇ！　でも、ええの？」
「一人分の食事もメンバー分の食事を作るのも同じ手間は掛かるからな」
　気にするな、と笑う零。彼は普段からお弁当を作って学校に通っている。「口に合うか解らんが」と少し心配そうにいうものの、味見したマリベルは笑顔で「おいしい！」と言った。
「お野菜にしっかり味が染みてて美味しいわぁ！　あ、ご飯も炊けたで」
「こっちも終ったでござる。では、皆のもとに行くでござるよ」
　２人は少しずつ作ったものを持っていく事にした。
　アジトに戻ると、既に夕食が食べられるようになっていた。今回は差し入れを持ってきてくれた美和も一緒に食べる事になったという。皆で配膳を行い、手を合わせる。一斉に「いただきます」と言って食べればそのどれもがとても美味しく感じる。
「！　美味い」
「こういうのも、良いものですね……」
　マコトや綾花の嬉しそうな声を聞き、零は僅かに口元を綻ばせる。その傍らで、マリべルが不安げに呟いた。
「そういえば、泊まり……。うちはええけど、皆さん、大丈夫ですか？」
「むしろ、望んでいます。こういうの、体験してみたかったんです！」
　優菜が目をキラキラさせて言えば、他の委員メンバーも多くが宿泊する事を告げる。
「あの、毛布が足りないようでしたら用意できますので言ってください」
　優菜はそういうが、彼女が用意する毛布は星ヶ丘寮から出される（無駄に）高級な毛布である。
「まぁ、足りないようだったらお願いしたいかも……」
　と誰かが言ったが、最終的にどうなったかは皆さんのご想像にお任せしよう。
　和気藹々とした夕食はこうして過ぎていき、マリベルをはじめ数名の桜花寮生徒が下着などを取りに一度戻るのだった。

このページにイラストを設定する