寝子祭前日談　～準備はどうだい？～｜リアクション

寝子祭前日談　～準備はどうだい？～

「それは同感だなぁ。特に廊下がホラーだよな。でも、夜の学校に泊まるって中々出来ない体験だし、楽しみでもあるんだよ」
「作業もありますけど、いっぱいお話しましょうね、ロイスさん！」
　優菜がぎゅっ、と手を握って微笑めば、マリベルもちょっとほっとした顔になる。
　休憩がてら何気ない話や恋バナなどに花を咲かせれば、いつの間にか美和も加わっていたりして、和やかな空気になる。
「やっぱ、こういう時間もいいっすよね～」
　マコトがポテトチップスを食べながらぽつり、と呟けば「だよねぇ」と由貴奈がクッキーを取り出しながら相槌を打つ。作業の合間に家庭科室で作ったお手製で、おもわず手が伸びる。
「まさに青春って感じがします。ふふっ、明日からもっと楽しみですね」
「いい感じに仕上がっているし、うちも本番が待ち遠しかったり？」
「もうすぐ、なんよねぇ……」
　優菜が笑顔で言えば、由貴奈がくすっ、と笑い、マリベルが感慨深そうに呟く。響也はそれに頷き、
「やるだけの事はやった。後は本番、しっかり自分の役目を務めよう」
　としっかりとした眼差しでいう。マコトは笑みを強め、「だよな？」と頷いた。

　零が暫くしてから起きて警備に回ると、綾花に出くわした。
「おや、綾花殿。お主もアジトに戻るのか？　既に休む準備は出来ているでござるよ」
「ありがとうございます。でも、私はまだやることがありますから」
　綾花はそういうと、一礼してアジトへ。そこで美和に幾つか確認してもらうと、一礼して屋上へ向かった。少し眠たくなってきたものの、夜空の星たちをみると目がさえてきそうだ。
（あしたも、晴れそうですね）
　綾花はそっと夜空に微笑んだ。

　日付が変わるか変わらないか、という曖昧な時間帯に委員会のメンバーも休み始めた。
「おやすみ」
「うん、おやすみ～」
　響也が寝袋に入るのを、マコトは優しい笑顔で見送る。彼は優菜やマリベルと話を続け、ちょっと夜更かし気味になってしまった。そんな彼が寝坊してしまうのは仕方の無い事だろう。彼はうつらうつらし始めた２人にお休みを言うと、ステージで使用する機材の使い方についてのメモを読み直して就寝するのであった。
　いつのまにか、優菜は極彩色の空の下にいた。派手に彩られた寝子高の、これまた真っ白い砂の満ちるグランドで、彼女は踊って、走っていた。
（な、な、何ですか？！）
　顔に、制服に色々な色の絵の具を塗った寝子高生が、手をつなぎ、輪になって踊っている。それでいて、ハードルを飛び越えているのだ。ぐるぐる回る人の輪で、グランドを回っているのだ。
（目が、目が回りますっ！　ちかちかしますっ！？）
　仲間が、先生が、みんなが笑顔で、走って踊る。そんな世界の中で優菜は不思議と高揚感に包まれる。
（これが、サイケデリックで、ダンシングで、人類愛の世界ですの……？）
　走って、回って、飛んで。走って、回って、飛んで……。色とりどりの光を浴びて、どこからともなく聞こえる音楽に乗って……。

　すやすやと眠る優菜とマリベルの顔を見つつ、由貴奈はそっとアジトを後にする。そして、備品の最終チェックを１人でやろうとしていた。
（こういうのを他人に押し付けるのも気が引けるし。……それに小さいミスで悲しくなるのは嫌だからねぇ）
　メモを片手にチェックしていくと……、そこで出くわしたのは綾花。彼女もまた、似たような事を考えていたようだ。
「明日はいよいよ前夜祭だよ。寝ておいたほうがいいんじゃない？」
「大丈夫ですよ、先輩。私にもやらせてください。ほら、２人でやった方が捗りますから」
　綾花の言葉に苦笑し、由貴奈は頷く。そして、２人で静かに備品チェックをしつつ、本番が刻一刻と近づいている事を実感していた。

　――さぁ、寝子祭が幕を開ける。

　準備は整った。後は、お役様を迎えるだけ。２人は備品整理が終わると互いに笑いあい、ハイタッチして仮眠を取るべくアジトへと戻った。

（終）

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
みなさま、お待たせしました。寝子祭の前日談、漸く完成いたしました。
ほのぼのとして、その中に青春の一こまを感じていただけると幸いです。

前夜祭と本祭の方も執筆中ですね。
私も完成が楽しみだったりします。
いよいよ本番。みなさん、おもいっきり楽しんでくださいね！

それでは、この辺りで。
また縁がありましたらよろしくお願いします。

↑ページトップに戻る