戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！｜リアクション

戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！

「めんどくせぇ……」
　ぼやきながら本宮虎治は、共同の台所でせっせとジャガイモの皮むきに勤しむ。

　ユウレイジャーの騒ぎを聞きつけてすぐ、虎治は部屋の先住人である鷲見貫司に情報を求め連絡をとっていた。
「ユウレイジャーか、懐かしい響きだな」
「先輩、知っているんですか！？」
「知ってるも何も、猫鳴館に住むのならまずは何はなくとも、あかずの間へご挨拶だよ。ある種守り神みたいなもんだからな」
「俺はそんなこと1ミリも知らなかったんすけど……」
「はは！　そりゃやらかしちまったなあ自治会長さん」
「で、俺はどうすりゃいいんですかねぇ」
　廃寮は困るんですが、と本気で参る虎治。
「分かった、俺もすぐ向かう。まあ、なんだ。とりあえずカレー作っとけ」

「カレー作っとけとか……意味わかんねぇし」
　面倒くさがりやの虎治だが、自炊には慣れたもの。手際よく調理は進み、あとは貫司が買ってきてくれるルゥを入れて煮込むだけの段階だ。
「調理場、共有させていただいてもよろしいですか」
「あン？」
　謙虚な口調で台所へ入ってきたのは森蓮だ。
「森か。あんたもカレーを？」
「はい。といっても私は本場インドの、サンバールやラッサムを黄色ユウレイジャーさんに振る舞おうかと。肉を一切使わない、裏庭菜園で採れた野菜だけを使用したものです」
「へぇ」
　それはまためんどくさそうなもんだな、と虎治は口に出しそうになるが、奉仕活動を喜びとする蓮らしい発想だなと鍋をお玉でかき混ぜながら思う。
（てかそもそもこのカレー、ユウレイジャーに食べてもらうためのものだったのか）
「バリエーションがあったほうが、ユウレイジャーさんも喜びそうですしね」
「その通りだ」
　蓮の言葉に賛同しながら鷲見貫司が入ってくる。両手にはスーパーの袋、3人入ると猫の額サイズの台所はキツキツ、今にも床が抜けてしまいそうだ。
「なんだ本宮、そんだけしか作ってねえのか」
「いやてっきり先輩が腹ごしらえしたいだけだと思ったから」
「そんなわけねえだろ、黄色ユウレイジャーへのお供えものだ。多ければ多いほどいい。保存食として加工して供えれば、黄色は向こう3年くらいは出てこなくなるよ」
「え、でも、そんなに大量に作っても腐っちゃうんじゃないすか？」
「だから俺が来たんじゃねえか！」
「あ！」
　貫司の“能力”を思い出し虎治は合点がいく。
「とにかく作れる限り作っておいたほうがいい。黄色はカレーを飲み物としか思っていないからな」
「飲み物すか」
「私が作っているインド料理は汁物なのでちょうどいいですね」
　と、そこへまた新たな寮生が。
「なぁ、よかったらこれも使ってくれ」
　虚金俊通。猫鳴館の屋根裏に住んでいるという変わり者だが、見た目は至ってフツウの高校生だ。
「豚肉か、ありがたく使わせてもらうぜ」
　感謝する貫司に、俊通はさらに付け加える。
「あとこれ」
　廊下から運び入れたのは重たそうなダンボール。
「レトルトカレーがたんまり入ってるんだ……実家から送られてきて。あと3箱くらい部屋にあるんだが……っと」
　力仕事が苦手な俊通、よろこけそうになり貫司に支えられる。
「グッジョブだ優秀な後輩。これで飲み物も万全だ」
　幸先のいいカレー組だった。

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