ふわりふる真珠、月の都の異邦人｜リアクション

ふわりふる真珠、月の都の異邦人

　白鋼はそう、穏やかに言い切る。宙太郎は「そっか」と僅かに表情を緩めてちらり、と円と此方の方を見、言葉を続けた。
「そっちの女子２人も応援してたみたいだけどさ。俺も、お互いを尊重しあった関係であるなら応援してやりたい恋だったんだぜ？」
「そうだったのか……」
　白鋼は少し驚いたような顔になり、宙太郎はこくり、と頷く。

　会話を楽しむ面々の様子を見ていた陽太であったが、彼は穏やかな笑顔のまま席を立つ。
「どーした？　まだお菓子、残ってるぞ？」
　宙太郎が首を傾げると、陽太は外を指差した。
「そういえば縁日もあるんだよね？　そっちの方にも行って見ようと思ってね」
　そういって一足先に、と礼をしてその場を後にし……自作の粘土細工を指でつついた。彼のろっこん『ＣＣＣ』を発動させるためである。
（前回、問題を起こした人がいるから念のために……ね？　ま、何もないのが一番なんだけど）
　彼はそう言いながら辺りを一応見回っておく事にした。

　陽太が出かけた後も、お茶会はゆるゆると続いた。
「そう言えば、私と似たような力がある人ってどんな人なのかしら？」
　ふと、此方がそう言えば、白鋼はにっこり笑った。
「宮に使える兵士の中には、神経を集中させることで姿を消す者たちもいる。この月の住人は、時にそう言った力を身に着けるものがいるのだよ」
　彼曰く日常生活において不思議な力を開花させる人もいるらしい。もれいびたちはちょっとだけ自分たちに似ているかもしれない、と思った。
　その後も色々と話していたが、しばらくして白鋼は穏やかにこう言った。
「縁日に行くなら、お代は気にしなくて良いぞ。今宵は特別でな、屋台の主に言えばそれだけで渡してくれる」
「お金とか、いいの？」
　お代の事を気にしていた一同を代表し、サキリが問う。と、白鋼は穏やかに答えた。
「今宵はめでたき日、無礼講だ。故に、金銭のやり取りはしない事にしている。気にせず買い物をするとよい」
　その言葉に、一同少しだけほっ、とするのだった。

　お茶会もお開きとなり、三々五々散っていく。だが、宙太郎だけがそこに残っていた。
「？　どうした？　土産ならば後で持たせよう」
「んー、そうじゃねぇんだ。ちょっとお願いがあってさ」
　宙太郎は、そう言ってにっこり笑った。

　お茶会が行われている頃。一足先に真珠探しをしている者たちがいた。須藤清一郎と八神修である。空から降るふわふわとした雪を眺めながら、２人は積もった雪に真珠がないか、おしゃべりをしつつ探していた。
「降ってる地域に向かってダッシュや！　ち思てたけど、あちこちで降ってるんやなぁ」
「これなら探し放題だな」
　清一郎と修はふわりとした雪を手に掬い、音も無く光となって消えていく様を見て少しだけ心が洗われていくような心地を覚える。だが、そんな事を繰り返していくうちに、ようやく暖かい光を零す真珠を１つ見つけることが出来た。その頃にはうっすらと清一郎の手が赤くなっていたが。
「おっ！　やっと見つけた……！　何かいい事ありそうやわぁ」
　清一郎はその直径１ｃｍほどの真珠を手に目を細める。初雪の真珠を拾えば幸運に恵まれる、という言い伝えを聞いた清一郎としてはどうしても欲しかったようだ。
「よかったじゃないか」
「あぁ……苦労した甲斐があったわぁ！　真珠雪拾えば幸せになれるんやろ！　俺は彼女が欲しい！　彼女がほしい！　彼女が欲しいんや！！」
「そこまで熱く言い放つとはな……」
　ぐっ、と拳を握り言い放つ清一郎に、妙に圧倒されてしまう修。そんな彼だがココに来る前、白鋼にお土産を渡して挨拶をしている。その際、見分け方を教えてもらっていたのだ。
（ふわふわとした雪の中に、丸い粒が入っていたらそれが真珠、と。そして真珠は何色になるかは解らないのだよな……）
　そう言いながら雪を救い上げていると直ぐに真珠の粒を発見した。こちらも直径１ｃｍほどである。
「なっ？！　早いなぁ……」
　苦労した清一郎は少し羨ましそうに呟くも、修は少しだけくすっと笑った。
「帰ったら地球の真珠と比べてみたいんだ。もう少し探してみよう」
「ほな、手伝うわ。色々見つけられるとええな」
　修と清一郎は笑い合いながら真珠を探す。そうして、クリーム色や淡いピンク、真っ白な真珠を見つけていくのであった。

　蛇足ではあるが、修が渡した苺大福は好評だったことを付け加えておく。特に女官と透がそれを気に入った模様である。

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