ふわりふる真珠、月の都の異邦人｜リアクション

ふわりふる真珠、月の都の異邦人

結：幸を祈り握る真珠は……。

　――縁日。

　十朱此方もまた、『真珠飴』の屋台で「綺麗……」と思わず呟いていた。日本の屋台とはどこか違う雰囲気に好奇心が刺激されるらしい。
「これ、いただけますか？」
「もちろん。はい、どうぞ」
　此方は礼を述べて受け取り、早速口にしてみる。すると、ふんわりと甘味が口に広がり、幸せな気持ちになる。「美味しい」と呟きながら歩いていると、『星ランタン』の屋台へとたどり着く。柔らかな光に目を細めていると、店主が声をかけてきた。
「星の光を結晶にして、光源にしているんだ。長持ちするよ」
「それは凄い……！　いただけますか？」
「勿論。大切にしておくれ」
　店主から『星ランタン』を受け取り、ほんわかとした気持ちになる。
（寝子島ではたぶんつかえないかも。でも……、この素敵な世界のものを持っていられるなら、とても素敵）
　此方は楽しげに笑って『星ランタン』を手に屋台を巡るのだった。

サキリ・デイジーカッターはちょうど茶器が売られている屋台を覗いていた。屋台の主曰く、今の流行は白磁なのだそうで、屋台にも白磁の物が多めに置かれていた。
（どれもステキなデザインだね）
　目の保養になるな、と思いながらも、彼はシンプルなティーカップを選ぶ。
「そういえば、銀穣。砥石とかもあるかな？」
　再び縁日の方へ戻ってきた銀穣は１つ頷く。
「縁日には刃物屋もありましたから、恐らくは。こちらのほうです」
「助かるよ」
　銀穣に案内されていると、後木真央が『満月焼き』や『キナコ玉』の他、色々な食べ物を食べまくっていた。砂漠で取れた鳥を香草で味付けして焼いた物や卵の煮物などを食べてご満悦モードである。
「サキリちゃん、この香草焼きも美味しいのだ。お勧めなのだ。円ちゃんもどうなのだ？」
　真央は傍らにいた桜庭円は『うん！』と頷いてご相伴に預かり、爽やかな風味に目を丸くする。サキリも分けてもらったが、円と同じ反応だった。
「それは祝いの祭りでしか出ない物です。俺も後で食べようかな」
　銀穣が楽しげにそういえば真央はそんな彼にも鳥の香草焼きをおふくわけする。そんな様子にくすくす笑いながらも円は絵の屋台にやってきた。
「お嬢ちゃん、この絵はどうだい？　月に吼える虎だよ！　こっちは縁起物の真珠雪と踊る虎だよ」
「わぁ！　どれもかっこいいな！」
　円は飾られた絵を見、目を輝かせる。虎だけでなく悠々と舞う竜や鳥、亀など様々な動物の絵が生き生きと描かれている。
「祈り絵だから、飾るだけでご利益があるよ～」
「それじゃあ、この虎の絵にしようかな」
　円が選んだのは、虎が眠っている絵だった。花咲く木の下で気持ちよさそうに眠る姿は心を和やかにする。
「こっちの風景画もステキだな」
　サキリが色々眺めていると、丁度隣が刃物の店だった。使いやすそうな物を見つけると、それを手にした。
「まだまだ美味しい物がありそうなのだ。銀穣ちゃん、教えて欲しいのだ！」
　真央がにこにこ笑顔で問いかけると、銀穣もつられて笑顔になる。そして、真央はサキリと円も伴って美味しい物めぐりを続けるのだった。
　その途中で自棄食いしていた須藤清一郎と出くわし、のりのりで食べ比べに発展する。その様子を八神修共々お茶を用意しつつ眺めたりするがそれはそれで楽しそうだった。途中で出くわした此方も加わり、ほっこりとした様子でおしゃべりに加わる。
「桜庭とデイジーカッターは、いい物がみつかったようだね」
「あぁ。今日はとてもいい物が手に入ったよ」
「ボクもいいもの手に入ったよ♪」
　修にいい笑顔を見せるサキリと円。銀穣は仲の良い様子に朗らかな笑顔で頷いた。そして円は此方と共に、近くで買った『星ランタン』の明かりを見ながらこういうのもいいな、と思うのだった。

　縁日から少しは慣れた場所に、椿美咲紀は来ていた。彼女はふわふわとした雪の感触にはにゃぁん、と柔らかい表情になる。
（この世界の雪はふわふわしていてとても幻想的なのです。柔らかな光がとても綺麗です♪）
　こういうの、大好きです！　と心を弾ませながら雪に触れる。と、僅かに手が光に包まれたような気がした。
（真珠に変わるのも、素敵ですねぇ）
　美咲紀の故郷は、真珠の養殖を行っている地域もあるので親近感が湧くようだ。彼女はわくわくとした様子で「ゴールドの掛かった暖かい感じの真珠なのかなぁ？」といいながら探していた。
「あの、光の加減で七色光沢が出るのが好きなのです。拾ったらお守りにしましょう♪」
　しかし、美咲紀は真珠を見つけられず、しばらくの間右往左往するのであった。

（とりあえず、逃げ切れたかねぇぃ）
　そんな事を呟きながら真珠を拾っていたのは、縁日でまたたびをばら撒いた骨削瓢であった。彼は目一杯集め、寝子島に戻ったら売って一儲けしようと考えているらしい。
　そんな事を考えつつあちこち探していると、大小さまざまな真珠があちこちから見つかった。それを袋に詰めていると、なかなか真珠が見つからずしょんぼりしている美咲紀に会った。

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ふわりふる真珠、月の都の異邦人

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