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【寝子祭】歌って踊って楽しんで
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製菓部
:クッキー教室、家庭科室(北校舎2階)
大きな机が整然と並んでいる。
高梨 彩葉
は濡れた台拭きで丁寧に拭いた。終わると他の一台が気になり、次々と手を広げていった。
全ての机が綺麗になった。彩葉は背筋を伸ばして室内を見渡す。
自然と笑みが零れた。
「これからだよ」
自身に言い聞かせた直後に勢いよく扉が開いた。
「おはようなの!」
元気な声で
橘 明里
が突っ込んできた。長くて赤い髪には一対の小さな羽が付いていた。天使のように空を飛んできた姿を想像させる。
「おはよう、明里ちゃん。良いタイミングだね。道具を出すから手伝ってよ」
「あかりにお任せなの!」
やる気が全身から迸る。彩葉は調理器具が収められている棚に目を向けた。
「混ぜるのに使うからホイッパーを三つ用意して。同じ数のボールとゴムベラだね。あ、生地を伸ばすのに必要だから麺棒も三本だよ」
「四つの道具が三つずつなの!」
明里は棚に素っ飛んでいく。その間に彩葉はプラスチック製の俎板を机に並べた。
「あとは材料だね」
事前に補充した薄力粉を二袋。グラニュー糖の容器を机に運んだ。冷蔵庫からは無塩バターと開いていない卵のケースを持ち出した。
「デジタルのクッキングスケールに計量カップと計量スプーン。あ、ラップとアルミホイルも使うよね」
彩葉は道具を追加して全てが出揃った。隣り合った明里が腕を曲げた状態で両脇をぱたぱたさせる。
「頑張って作るよ! 前に食べたドーナツよりも美味しいクッキー生地を一杯なの!」
頭の中に以前の記憶が蘇り、明里は幸せそうな顔で口をもぐもぐさせた。
「最初は計量用の皿に薄力粉を――」
彩葉の真横から白い煙が上がる。明里は薄力粉の袋を逆さまにしてボールに白い山を作った。にこにこと笑っていて急に声を上げた。
「バターが先だったなの!」
「計量が先だよねぇ」
彩葉の声に、ちひひー、と明里は笑った。
「そんな細かいことはどうでもいいよね」
すっきりした声で彩葉は別のボールにバターを入れた。ホイッパーで溶けるまで掻き混ぜてグラニュー糖を加えていく。自身のボールも同じ状態にした。
明里は隣でそわそわしている。必死にすることを探すように目を動かした。
「明里ちゃん、卵を割ってくれるかな?」
「いいよ、何個でも割るのなの!」
「六個くらいでいいからね」
そこに
千鳥 雅人
が手を挙げて入ってきた。
「俺もクッキーの生地を作るよー」
「待っていたよ、千鳥君。道具と材料は揃っているから好きなところで作ってね」
「じゃあ、明里ちゃんの横でやるかなぁ」
雅人は肩に掛けた鞄を床に置いた。その上に脱いだ制服を乗せる。シンクで手を洗ってから自分用に新しいボールを取ってきた。
三人が揃ったところで明里が卵を掴んだ。
「あかりが華麗にパカンなの!」
赤い瞳がボールの縁を捉えて卵を打ち付けるような動作を繰り返す。隣にいた雅人は柔らかい笑みで明里の肩を指で軽く突いた。
「そんな細い縁に打ち付けたら、卵の殻が粉々になって中に入っちゃうよぉ」
「それは困るのなの! どうすればいいのかな?」
「こうすればいいんだよー」
雅人は明里から卵を受け取ると横にして俎板に打ち付けた。割れた部分を二人に見せる。
覗き込んだ姿勢の彩葉が納得の声を出した。
「割れ方が大きいから殻が入らないんだね」
「すごいのー! 尊敬の眼差しなの!」
「たまに家でクッキーとか作ってくるからねぇ。こんな豆知識なら俺に聞いてねー」
三人は助け合いながらも作業に打ち込んだ。ゴムベラで混ぜていた生地が程良い固さになった。俎板の上にラップを敷いた。その上に生地を乗せて更にラップで挟む。各自が手にした麺棒で生地を伸ばしていく。
急に明里の背筋が伸び上がる。
「あっ、そうなの! 生地にチョコチップを入れましょうなの!」
「チョコチップ入りねぇ。俺の生地にも入れて欲しいなぁ」
「あかりにお任せなの!」
服のポケットに手を突っ込んで堂々と取り出した。痩せ細った袋に残念そうな目を向ける。
「お腹がキューって鳴いたから、学校にくる途中でオヤツになってたの」
「たぶん、俺の家に余りがあったと思うんだよねぇ。二人が生地を作っている間に俺が家に帰ってチョコチップを持ってくるよー」
「ありがとなのー」
「始まる前に帰って来られるのかな?」
彩葉の疑問に雅人はとろんとした目で微笑んだ。
「間に合うんじゃないかなぁー」
間延びした声で雅人は飛び出していった。
残った二人は次々に生地を完成させた。黙々と冷蔵庫に入れて寝かせる。
家が近いのか、それとも足が速いのか。二人の予想を上回る早さで雅人は戻ってきた。
「チョコチップだよー」
明里に袋を渡すと目に付いた丸椅子に膝から崩れるように座った。
「何とか間に合ったようだねぇ~」
「ホントにありがとなの!」
「俺は少し休んだら行くよ。掛け持ちだからねぇ」
彩葉は何かを思い付いた様子で両手を合わせる。
「その間に宣伝に行ってもいいかな?」
「あかりも宣伝に行くのー!」
「俺としても助かるよ」
いつの間にか手にしたハンカチで雅人は顔の汗を拭った。
二人は揃って出ていった。間もなく宣伝の声が聞こえてきた。
「家庭科室でクッキー教室をやりまーす。定員は十五名の予定なのでー、お早めにー! 二百にゃっぽですよー!」
「そうなのー! 彩葉ちゃんのいう通りなのー! クッキーなのー! お安いのー!」
雅人は聞き惚れるような表情で呟いた。
「……癒されて眠くなるねぇ」
緩やかな時が流れていった。
一人で競歩をしているような速さで
郡 トモエ
が北校舎に突っ込んできた。興奮した笑顔が今日を全力で楽しむことを宣言していた。一階の出し物を足早に見て二階への階段を駆け上がる。
微かな甘い匂いに鼻が反応した。トモエは家庭科室の扉に貼られた『クッキー教室』の文字に目を留める。
「手作りクッキー、いいかもね♪」
後方から
花厳 望春
が走ってきた。制服のスカートを翻し、横滑りしながら扉に向かう。
一つの扉を同時に求めた結果、二人の肩が軽くぶつかった。
トモエは即座に謝った。
「あ、ごめんね」
「それは俺の台詞だ。ごめんな」
「へー、初めて見たよ。オレっ娘なんだね」
説明を面倒に思ったのか。望春は曖昧な表情で笑う。トモエは気にすることなく扉を開けた。
「クッキーを作りにきましたー」
製菓部の部員はトモエを笑顔で迎え入れた。あとから入ってきた望春には、そっちに目覚めたの? と心配そうな顔になる。
橘 明里
だけは別で目を輝かせて言った。
「可愛い女の子みたいなの!」
「え、女の子よね?」
トモエは望春に目を向けた。
「俺は1年2組のあべこべ喫茶と掛け持ちだから着替える暇がなかったんだよ」
面倒臭そうに説明して望春は製菓部の一員に加わった。
ほとんど間を空けないで燕尾服の
浅山 小淋
がスケッチブックと鞄を抱えてやってきた。それとなく集まる周囲の視線に小淋は首を傾げて微笑んだ。
『どうかしましたか?』
スケッチブックに書かれた文字に明里が元気に答えた。
「カッコイイ男の子みたいなの!」
『人が少ない間に制服に着替えます』
「俺と同じパターンだな」
『同じあべこべ喫茶ですから』
はにかんだ小淋は教室の目立たないところに向かう。着替えの壁役として
高梨 彩葉
が買って出た。明里はスキップで付いていった。
望春は速やかに教室を出た。余った時間を利用して慣れた様子で呼び込みを始める。興味を示した何人かが足を止めた。菓子に関しての知識を披露して次々に客を引き入れる。
僅かな時間で既定の人数に達してクッキー教室は始まった。
冷蔵庫で寝かせていたクッキーの生地を部員達が手分けして机に運んだ。この日の為に用意した大量の型枠を客達の前に万遍なく配る。他にはデコレーション用のペンに丸い粒状の砂糖菓子のアラザンを三色。食用の着色スプレーには数人の客が興味を示した。
彩葉は机を囲んだ客達に向かって手順の説明を始めた。
「それではクッキー教室を始めたいと思います。まずは俎板に乗せた生地にお好きな型枠を使って抜き取ってください」
客の中には小さな女の子も含まれていた。側にいた母親の袖を引っ張って意味を聞く。制服にエプロンを付けた小淋がスケッチブックに手早く文字を書き込んで中腰になって見せた。
『白いまないたの上に平たいものがあります。そこにぎんいろのものをおいて、上からおしてください』
目にした女の子は、これ? とハートの型枠を摘まんだ。小淋は微笑みを浮かべて頷いた。
『それを平たいものにおいて、上からおしてください』
女の子は生地の端に型枠を置いた。黒目勝ちな瞳を小淋に向けて、こう? と表情で聞いてきた。
『そうです。上からおしてください』
笑顔で勧められた女の子は、とお、という掛け声で型枠を掌で押し込んだ。自分の掌に目を向けて小淋に自慢げに見せ付けた。
「ハートだよ♪」
その愛らしさに小淋の手が自然に伸びた。女の子の頭を撫でて不意に我に返る。近くの母親は優しい眼差しで二人を見ていた。
「丁寧な説明をありがとうございます」
母親に一礼された小淋は赤らんだ顔で同じように頭を下げた。
大量の型枠を前にトモエは考えを巡らしていた。
「可愛いクッキーが作りたいなぁ」
型枠を摘まんでは元に戻す。目にした望春が後ろから声を掛けた。
「気に入った型枠がないなら、自分でオリジナルの物を作るのはどうだ?」
「どんな風にやればいいのかな」
「爪楊枝とスプーンを持ってきた。試しに俺が実演してみようか」
トモエは喜んで横を空けた。難なく収まった望春は生地の端にスプーンを裏向きに当てた。微妙な力加減で卵型に切り取った。
「卵のクッキー?」
「工夫はこれからだよ」
望春は卵型の輪郭に爪楊枝の棒の部分を押し当てて全体を波打たせた。尖端の部分で線を描く。
「わかった、葉っぱだね!」
「そうだよ」
ギザギザの輪郭の葉は葉脈まであって芸が細かい。
「オーブンで焼き上がったあとに着色すれば、もっと葉っぱらしくなるよ」
「あ、アルファベットの型枠もあるね。自分の名前のクッキーができるかも。アルファベットのクッキーって可愛いよね♪」
「まあ、そうだな」
トモエは夢中になって型枠を探し始めた。
「ちょっといいですか」
声を掛けられた望春は次の客の元に向かった。
銀杏並木の中を
朝鳥 さゆる
が歩いていた。風に翻弄される銀杏の葉のように上体は不安定に揺れている。
さゆるは歩きながら自身の額に手を当てた。
「……よくわからないわ」
掌を頬に押し当てた。ふと口から、温かい、と声が漏れた。
さゆるは寝子島高校に足を踏み入れた。受付を一瞥してふらりと立ち寄る。金券のにゃっぽを手に入れると校舎に向かって歩き出す。
薄い唇の口角を僅かに上げた。胸の中で自身に問い掛ける。
何がしたいのよ。
笑みが口元に深く刻まれ、呆れたような呟きになった。
「……何がしたいのかしらね」
風の次は人波に揉まれた。肌の色が病的に白くなる。熱っぽい目を北校舎に向けた。吸い込まれるように足が動いた。
校舎の中にも人はいた。喧騒に包まれて歩いていると次第に息が乱れてきた。さゆるの潤んだ瞳が一つの扉を見つけた。
「クッキー?」
貼られた紙に尋ねる。さゆるは肩口から扉に当たり、重々しく開けて出来た隙間に身体を捻じ込んだ。目の前にいたクラスメイトの
花厳 望春
に話し掛けた。
「クッキーを貰えるかしら」
「朝鳥さんか。良いタイミングだ」
「タイミングって何の話?」
「クッキー教室の一回の定員が十五名なんだよ。朝鳥さんが来てくれて二回目の定員が埋まったんだ」
「お姉ちゃん、サンマさんクッキーの作り方を教えてよー」
男の子が望春の制服のスカートを握って引っ張った。
「わかったよ。朝鳥さんも楽しんで」
「ここは喫茶店では――」
「こんな大きなサンマさんを作る! こんな、こーんなに大きいの!」
男の子の大きな身振りに望春は笑いながら付いていった。
さゆるの勘違いであった。考える仕草から動き出す。空いているところを見つけて客として加わった。
とんだ気紛れね。
心の中でそっと呟いた。俎板の上に卵色の生地が用意されていた。傍らには様々な形の型枠がある。胸に懐かしさが込み上げて周囲の音が急速に遠くなった。
両親は忙しく働いていた。休日と言えるような日はあまりない。構って貰えない私は寂しくてたまらなかった。広い部屋で枕を顔に押し付けて泣いていた。
そんな思いを母はわかっていたのだと思う。時間がある時は私に笑顔で接してくれた。外出するような余裕はないから、家でお菓子や料理を一緒に作った。その中には手作りクッキーも含まれていた。
当時の記憶は鮮明に残っている。そして、今更ながらに自覚する。自分が失ったものの大きさを――。今の私は悲しくても枕を顔に押し当てて泣いたりはしない。自傷行為的な生活で自分の心を切り付ける。そこから流れ出るものが多くなって、いずれ破滅する。
自嘲が儚い笑みを作った。さゆるは自然に手を動かした。生地を型枠で的確に切り抜いていく。余った生地は別の型枠の一部で加工して花柄に成形した。同じ物を幾つも作って型抜きした物に貼り付けた。
『お上手なんですね』
真横に
浅山 小淋
がスケッチブックを手に微笑んでいた。視線を合わせないでさゆるは言った。
「気分転換に作ることがあるのよ」
嘘ばっかり、と即座に胸中で否定した。
『そうなのですか。顔色が優れないようですが、体調でも悪いのですか』
「心配しなくてもいいわ。ミスコンの水着部門に出て少し熱っぽいだけだから」
さゆるは薄い笑みを作って見せた。その言葉に納得したのか。小淋は会釈をして戻っていった。
完成したクッキーは綺麗にラッピングされてさゆるの手元に届いた。出来栄えは上々で見詰める瞳が幼くなる。
――あの時、母と一緒に作ったクッキーと同じものだわ……。
花柄のクッキーは束の間、さゆるの胸に小さな花を咲かせた。
一通りの役目をこなした
志波 拓郎
は陸上部の部旗に目礼して走り出した。合間にジャージを羽織り、北校舎を目指す。
「…あれは、鴇波さん、なのか?」
少し前方を走っていた。赤いリボンに結ばれたポニーテールが印象的であった。拓郎は速度を上げて横に並んだ。
「思った通り…鴇波さんか」
「なんで拓郎くんがここにいるの?」
「…彩、ではなくて…甘いものが、気になって…製菓部に…」
「そうなんだ! あたしは製菓部の部員で家庭科室に行く途中なんだよー」
鴇波 羽衣
の笑顔が弾けた。
二人の行き先は同じであった。並走した状態で北校舎に駆け込んだ。往来の激しい廊下を羽衣は縫うように駆け抜ける。長身の部類に入る拓郎は少し手間取った。
羽衣は先頭で二階への階段を駆け上がる。一度、踊り場で振り返った。
「何かの競技みたいだねー」
拓郎に笑い掛けて残りの階段に挑む。最後は跳躍して一気に引き離す。廊下の人々を疾風のように走り抜けて扉を開けた。
「やほー、チョコペンの実技はあたしに任せてねー」
「…自分は、クッキー教室の…受講者です、よろしく、お願いします」
教室の一隅の机で生地を作っていた
高梨 彩葉
が顔を上げた。
「しばっち、来てくれたんだ」
他の人々の目を気にした様子で拓郎は彩葉の前に立った。
「…陸上部の、出し物が、結構、大変で…甘いものが、欲しくなって…それと…」
「言わなくても、私にはわかるよ。でも、びっくりだね。今日は楽しんでいってねー」
同じ机でチョコチップを生地に練り込んでいた
橘 明里
が声を上げた。
「彩葉ちゃん、急がないと生地が間に合わなくなるのなの!」
「そうだね。ふぃー、まるで戦場だね!」
彩葉は口元で笑って拓郎に軽く手を振った。
「彩葉さん、頑張って…」
拓郎は精一杯の笑みで励ました。
間もなくクッキー教室が始まった。拓郎は猫と靴の型枠を探し出した。夢中になって生地に押し付けて大量に作っていく。
「この丸い玉が……アラザンか。どんな味、なんだ?」
一粒を口に入れた。甘い物を食べて笑みが浮かぶ。靴の型抜きにアラザンを可能な限り敷き詰めた。
完成した物はアルミホイルの上に乗せてオーブンで焼いた。十五分程度で甘い香りが教室内を満たしていった。
拓郎は焼き上がった猫の顔のクッキーに向き合う。チョコレートの詰まったペンを手に取る。徐に自身の手の甲に線を引いて味見をした。
「これは…たっぷり、使わないと…」
拓郎は目を閉じた。頭に思い描いた柄をなぞるようにペン先が微かに動く。
「…簡単な、トラ柄に…する、か」
猫の額にペン先を当てる。一本目の縦線は出だしが太く、最後は掠れるように消えた。
「…次は、大丈夫だ…」
二本目の太さは均一。だが、激しく波打った。三本目は隅に押しやられ、点のような扱いとなった。
拓郎は溜息を吐いた。助けを求める目が羽衣を捉えた。
「…鴇波さん、上手く…描けなくて…困って、いるんだ…」
「あたしに任せてよ! 手本を見せるからよく見ていてね」
余裕の笑みでペンを手に取った。その実、目は笑っていなかった。怖いくらいに真剣で猫の顔のクッキーを睨み付ける。
「こう、ソフトに握って、ヘンに力を入れないのがコツだよね」
言いながら猫の額にペン先を当てて線を引いた。見ていた拓郎が疑問を口にした。
「…縦線では…無くて…横線、なのか?」
「え、そうだよ。トラ柄だけが猫じゃないよ」
同じ横線を続けようとして波形になった。羽衣の心の乱れを物語っているようだった。
「あれだよ。想像の翼を広げたら柄なんて無限大だよね!」
新しい線を付け加える。修正の意味で更に足す。その果てに隈取りのような厳めしい猫が完成した。
「これが歌舞伎猫だよ。そんな感じで伸び伸びと描いてね!」
羽衣はぎこちない笑顔で、その場を離れた。口が若干、への字になっていた。
あんなに家で練習したのになんでなんだー!。
心の中で叫んで他の客を見て回る。個性的な絵の出会いに心が和む。可愛らしい女の子はハートの形のクッキーを作っていた。
どんなのでもいいんだよ。ここで作ったクッキーを食べて笑顔になってくれたら、それでいいんだよね。
羽衣の思考が途切れた。
浅山 小淋
が出来上がったクッキーをラッピングしていた。
「小淋ちゃん、あたしも手伝うよー」
笑顔を取り戻した羽衣は元気に手を振った。
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
145人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月22日
参加申し込みの期限
2015年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月29日 11時00分
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