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<南校舎>
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1年1組
:喫茶店&ホラー喫茶、1年1組の教室(南校舎1階)
教室には二つの出入り口がある。その特徴を活かし、普通の喫茶とホラー仕立ての喫茶を出し物に選んだ。
普通の喫茶の扉が開く。制服姿の
御剣 刀
が入ってきた。着替えることなく、作業を開始した。
個々の机を集めて一つのテーブルに見立てる。幾つか作ったあとで刀は用意したテーブルクロスを掛けた。中央には花瓶を置いて季節の花を生ける。
余ったテーブルクロスは隅に寄せた教卓の下に潜ませた。
「汚れた時、すぐに出せる。それと――」
何も乗っていない教卓の上に
人形
を置いた。柔らかい薔薇の色合いのドレスが教室に華やかさを添えた。
「祭りに参加してくれよ。きっと楽しめるからさ」
二つの喫茶を仕切る調理場から
大田原 いいな
が顔を出す。
「刀殿、早いのう」
いいなは緑のコートにエプロンを付けて現れた。手にはメニューを持っていた。
「皆の写真入りじゃ。濡れても平気なようにラミネート加工もしてあるのじゃ」
「本格的だな」
刀は受け取ると中を開いた。二つの喫茶の特徴を活かしたメニューが並ぶ。
「本当はもう少し早く渡したかったのじゃが、ホラーの連中が衣装に凝り過ぎてこの有様じゃ。連中にも渡してくるかのう」
いいなはブツブツと不満を零しながら戻っていく。調理場を抜けてホラー喫茶に入った。
「おらんのう」
窓際の隅に設置された血塗れの一人用のロッカーは開いた状態になっていた。いいなが覗くと中には
愛のメモリー
と書かれた黒い箱が置いてあった。
「本当に誰もおらんのかのう」
無数の骸骨が縋り付いたような柱を見て回る。隠れている人物はいなかった。
調理場に目を向けた瞬間、上から骸骨が降ってきた。
「な、なんじゃー」
いいなは声を上げた直後に天井を睨み付けた。黒く塗られた天井は普通の喫茶よりも少し低い。禍々しい柱に支えられた疑似の天井で等間隔に細長い溝がある。その一本から
骨削 瓢
が顔を出した。
「あっしのお菊さんはどうだい?」
「儂を驚かしても意味はないのじゃ!」
「脅した内に入らないよぃ。お菊さんの仕掛けは色々あるからねぇ」
瓢は天井裏から腕を振るう。骸骨は被っていた赤い帽子を手で取り、礼儀正しく頭を下げた。いいなは、ほうー、と感心した様子で近づいた。
瞬間、骸骨は頭を上げてけたたましい笑い声を上げた。いいなは張り合うように声を出す。
「いい加減にするのじゃ! さっさと完成したメニューを取りにくるのじゃ」
「その必要はないねぇ」
瓢は骸骨にメニューを取らせて即座に天井に引き上げた。
「メニューはよく出来てるよぃ。さすがだねぇ」
「わかればいいのじゃ」
大股で調理場に戻ったいいなは得意げな顔付きとなった。
ボサボサの頭で
吾妻 優
がホラー喫茶に入ってきた。完全に夢から抜け切れていないような目で教室を見やる。適当な隅に陣取るとポケットから包帯の束を掴み出し、頭から順に巻いていく。
「意外に巻くのが面倒だな」
目鼻と口は避けて包帯を巻いた。使い切ると継ぎ足して胴体に取り掛かる。太い部分で手間取ったものの、仕上がりは悪くない。やれやれ、とミイラ男の姿で自身の肩を揉んだ。
勢いよく扉が開いた。
「我の登場である!」
自信に満ちた
ン・ガイ
が堂々とした態度で入ってきた。優を目にすると遊び相手を見つけた子猫のように駆け寄った。
「そこの面倒臭がり少年よ。それは何の仮装なのだ?」
「見ればわかるだろ」
ふむ、とガイは顎先に手を添えた。オッドアイがキラリと光る。
「トラックに轢かれた重症患者が手術を怖がって病院から抜け出した仮装であろう」
「どんな発想だよ。どう見てもミイラ男だろ」
ガイは掌を上に向けて鼻で笑う。
「我が吾妻にジャパニーズホラーの真髄を見せ付けてやるのである」
高笑いしそうな姿から急に縮こまり、教室の角に走ってしゃがみ込む。頻りに手を動かして顔に何かを施す。間もなく手鏡を取り出し、顔を小刻みに動かした。
「まだか」
「……完成したのである!」
ガイは背中を向けた状態で立ち上がると、焦らすようにして振り返った。その姿に拍子抜けしたと言わんばかりに優が口を開く。
「髪が乱れただけか」
「確かに見た目は右半分が髪に隠れた美少女ではあるが、我の扮装はそのような陳腐なものではないぞ」
自らの手で髪を捲り上げた。焼け爛れたような半顔が現れた。シリコン樹脂に生々しい血の彩色が施されているようだった。
「愛らしい美少女が一瞬で恐怖の対象となるのである。接客の途中でぎょろりと睨めば客共を震え上がらせることが出来るぞ! にゃはははは!」
「その情熱は認めてやるが、面倒は起こすなよ」
優は気だるげに言った。
廊下を走る音が聞こえてきた。一気に近づいて
猫又 翔琉
がホラー喫茶に飛び込んできた。
「今日の為に気合入れてきたぜ!」
優は一目で疑問を口にした。
「お前、その格好で学校まで来たのか?」
「当たり前だ。気合の入り方が違うぜ!」
翔琉は堂々とした態度を崩さない。執事を思わせる燕尾服には血飛沫が見て取れる。ホラーに適した外見に、何故か愛らしい猫耳と尻尾まで付いていた。
ガイは猫の特徴に好ましい目を向ける。
「猫はよいのだが、執事との組み合わせは奇妙であろう」
「怖いと可愛いのギャップ萌えを狙った奇跡の組み合わせだぜ!」
「あっしは怖さ重視でやるよぃ」
天井から瓢の声がした。暗い溝から骸骨が顔を出し、カチカチと歯を鳴らす。
「俺には取って置きの決め台詞があるんだ」
翔琉は猫の手を真似て尻を突き出した。尻尾を意識しながら笑みを作る。
「いらっしゃいだニャーン!」
「これがギャップ萌えなのか?」
「完璧にカッコカワイイぜ!」
翔琉の笑顔に優は、そうだな、と呟いて窓の外に遠い目を向けた。
訪れる人々を迎え入れる為に生徒達が材料を手にして廊下を行き交う。
飛吹 勘助
は邪魔にならないように端の方を歩いた。忙しくなるね、と胸に抱いたアンゴラ兎の縫い包みの頭を撫でる。
「…何か、あったの、かな」
1年1組の教室を廊下から窺う人物がいた。身なりは小さく、ポニーテールが小刻みに震えている。
勘助は優しい笑みを浮かべて近づいた。
「…どうか、した?」
「はわわ、勘助さん。教室の半分がおどろおどろしい感じなんですよぉ」
土方 伊織
は頬を赤くして不満を口にする。
「…ホラー喫茶、だよ」
「ほぇ? ホラーってなんですか。全然、聞いてなかったですよー」
「…聞いて、なかったんだ。でも、中は区切られて、いるから、平気だよ」
先に勘助が教室に入った。中を見回してから廊下に顔を出した。
「…怖く、ないよ」
「本当ですか?」
両手で身体を守るようにして伊織は一歩を踏み出した。隣の様子は見えないようになっていた。緊張が取れて弱々しい笑みを作る。
「はうぅ、僕、怖いのはちょっと苦手なんですぅ」
「…俺も、そうだよ。だけど、祭りを成功、させたいから、頑張るよ」
大きい身体を少し屈めて勘助は言った。縫い包みの頭に赤くなった顔を押し当てる。
「そうなんですか。僕も頑張らないと、ですね」
伊織は機嫌よく歩き出す。隅の教卓を見て少し表情が強張った。
「精巧なお人形さんは、じっと見ていると動きそうな気がしますぅ」
「大丈夫、今は動かないよ」
近くで作業をしていた刀が顔を上げた。伊織はプルプルと頭を振って言った。
「昔は動いていたのですぅ~?」
「え、いや、どうかな」
刀のはっきりしない態度に伊織は涙目となった。
「どうかしたのぉ」
ひょっこりと現れたのは
千鳥 雅人
であった。頭頂から飛び出た毛が緩やかに動いている。
「俺は掛け持ちだから、のんびりしていられないんだよねぇ」
垂れた目で教室内を見回し、見つけた仕事に着手する。身体を動かしながら、ごめんねぇ、と頭を下げた。
「戻ってきたら、ウェイターさんとして頑張るよー」
「あの、僕はクラスの出し物だけなのであとは任せてくださいですよ」
立ち直った伊織が意欲を見せる。その声が調理場にも聞こえたのか。
桃原 空音
が顔を出した。
「学校中が賑やか! 1年1組の出し物にもいっぱいお客さんが来るといいねー」
「そうだな。皆で集まって色々と相談したし」
思い出を語るような刀に空音が、うんうん、と頷いた。
「お客さんをもてなすのは大切だけど、あたし達も一緒に楽しめる喫茶店にしようよ!」
「…俺も、皆と、楽しみたいな」
勘助は縫い包みを胸にしっかりと抱いた。
「料理はあたし達に任せてね!」
何かを思い出したかのように空音は調理場に引っ込んだ。やめるのじゃ、ちょっと、と中から取っ組み合うような声がした。最初に小柄な
大田原 いいな
が押し出された。
「裏方は儂に任せるのじゃ」
いいなは一言で済ませて戻っていく。
「ほら、次は千歳ちゃんの番だよ」
空音に手を引かれ、
橘 千歳
が不貞腐れたように現れた。刀の姿を目にして少し表情を和らげる。
「お菓子作りは、それなりに経験があるから皆の足手纏いになることはないと思うわ」
「そんな感じで盛り上げて行くよ!」
空音の声で全員の気分は高揚して、間もなく開店時間を迎えた。
ホラー喫茶に
鬼久保 美桜
が取材で足を運ぶ。教室に入った途端、眠たげな赤い瞳を凝った装飾に向ける。近くの椅子に座ると人形を膝に乗せて持参した手帳に情報を書き込んだ。
「ご注文をお伺いするよぃ」
いきなり天井から異様な骸骨が降ってきた。美桜は書く手を止めて顔を向ける。
「……少し、待ってくれる?」
テーブルのメニューを開いた。一つの品に指を差す。
「……目玉型白玉ぜんざいにするわ」
「わかったよぃ」
骸骨を引き上げた
骨削 瓢
は溜息を吐いた。中腰で天井裏を身軽に移動して調理場の真上にきた。溝から覗くと
大田原 いいな
が見えた。
瓢は素早く骸骨を下ろして背中に抱き付かせる。
「な、なんじゃー!?」
「注文が入ったよぃ。目玉型白玉ぜんざいを一つだねぇ」
「わ、わかったから離すのじゃ」
瓢は骸骨を即座に引き上げた。
「こっちの方が脅かし甲斐があるねぇ」
にんまりと笑って呟いた。真下では文句を言いながら、いいなが注文の品を作っている。完成した一品はミイラ男の
吾妻 優
が引き受けた。
「お待たせしました。目玉型白玉ぜんざいになります」
優は普通のウエイターとして注文の品を届けた。美桜は落ち着いた様子でスプーンを手に取る。ぜんざいの中の白玉を掬い上げる。全体にとろみがあり、黒い瞳孔まで表現されていた。
「……かわいいね」
美桜の感想に優は小首を傾げて離れていった。
次々と客が訪れる。子供は泣いて怖がった。あやそうとした
ン・ガイ
が半顔の焼け爛れた特殊メイクで更に追い打ちを掛ける。
賑やかな声に誘われて赤い髪の若者が入ってきた。黒いジャケットの背中には大鎌を持った天使がバイクに跨った姿で描かれていた。若い女性の胸を血走った目で見て回る。粘ついた視線に何人かはそれとなく胸を隠した。
「明らかに営業妨害だねぇ」
天井裏で眺めていた瓢は薄ら笑いを浮かべて、犠牲者様お一人だよぃ、と楽しそうに言った。側で眠っていた骸骨が瞬時に目を覚ます。
「そこの赤い髪のお兄さん、良い女はロッカーにいるよぃ」
「どこからだ?」
赤い頭を小刻みに動かし、天井に行き着いた。
「その骸骨のことじゃねぇだろうな」
「隅のロッカーの中にいるよぃ」
溝から半身を出した骸骨が隅の方を指差す。若者は半信半疑の様子で一人用のロッカーの前に立った。中には黒い箱が置いてある。
「誰もいねぇぞ」
若者は怒りの目を天井に向けた。骸骨の姿はなかった。
その時、背後でカチャリと音がした。振り返った若者の眼前に骸骨が立っていた。黒い眼窩は瞬時に裏返り、血で洗ったような眼球が剥き出しとなった。
「おわあっ」
驚いた若者は後ろによろける。更に骸骨の首が伸びて若者をロッカーの中に追い込んだ。瞬時にロッカーの扉が閉まった。
「な、この箱は? なんなんだ、これは!?」
その後は言葉にならない。断続的に悲鳴が上がった。
天井裏の瓢は耳を澄まして聞いている。
「ホラー喫茶らしい良いBGMだねぇ」
間もなくして若者はロッカーから解放された。放心した状態で骸骨に付き添われ、外に出ていった。
その若者を
十朱 此方
と
鉄 時尾
が廊下で目にした。
「十朱さん、本当にホラー喫茶に行くのですか?」
「ホラーテイストのポスターは楽しそうだったよ」
「それはそうなのですが……」
夢遊病に近い状態の若者が時尾の横を通り過ぎた。此方は手で自身の顔に風を送る。
「少し動いて喉も渇いたよね」
「わかりました。二人でホラー喫茶に行きましょう」
時尾は行き先を指差して此方と一緒にホラー喫茶に足を踏み入れた。
突然、目の前に赤いビキニを着た骸骨が降ってきた。時尾には血塗れの死骸に見えたのかもしれない。咄嗟に掌で頭部を叩いていた。
「いらっしゃい、元気なお客さんだねぇ」
瓢は天井裏から声を出した。それに合わせて骸骨がお辞儀をする。時尾は天井に向かって言った。
「いきなり脅かされると心臓に悪いです」
「あたしは心臓が止まりそうになったわ」
此方は胸に手を当てる。
「そりゃ、あっしの方が怖い話だねぇ」
瓢は愉快そうな声で二人をテーブルに連れていった。
席に着くと此方がテーブルの上のメニューを開いた。時尾が興味深い目を向ける。
「あたしは目玉型白玉ぜんざい、それとナニカの生き血を注文するわ」
「わかったよぃ。そちらのパッツンはんは?」
「誰が、パッツンですか。そうですね、ぜんざいでは十朱さんと同じになりますし……」
時尾の目は『闇鍋』に注がれる。引き離そうとしても目が吸い寄せられる。
「わたしは『闇鍋』にします」
その決断に瓢の代わりに骸骨が小躍りした。ふらりふらりと歩いて調理場に伝えにいった。
注文の品を待つ間、此方は周囲の雰囲気を楽しむように顔を動かした。
「いい感じね」
「ホラー喫茶ではなくてお化け屋敷みたいです」
程なくてして注文の品が届いた。此方はぜんざいの中に半ば埋もれた白玉の目玉に微笑んだ。スマホを取り出して写真を撮る。
「こ、これは試練です」
時尾は視線を下に向けていた。置かれた闇鍋の取っ手の部分が耳の形になっている。中身は赤黒い。抜けた歯のようなコーンが見える。頭蓋骨の一部のような白い物が入っていた。
あまりにも危険な見た目に時尾は此方に声を掛けた。
「一緒に、どうですか?」
「美味しそうね。このぜんざいも美味しいよ」
二人は分け合って食べた。味は悪くないようで等しく笑みが零れていた。
巫部 紫苑
が制服姿でふらりと立ち寄った。揺れる胸に扇情的なガーターベルトが大人びて見える。
空いた席に座ると嫋やかに手を挙げた。近くにいた
猫又 翔琉
が笑顔で駆け付けて事前に考えた猫のポーズを決める。
「いらっしゃいだニャーーン!!」
色香の度合いに比例して力が入る。別のところで注文を聞いていた優が横目で様子を窺っていた。
紫苑はテーブルに置いてあったメニューを開く。
「ホラー喫茶と普通の喫茶ではメニューが違うのですか?」
「え、そうだけど」
ポーズを決めたまま、翔琉の笑顔が硬くなった。先程の台詞は聞き流され、少なからず動揺が見て取れる。
そこで路線を変えた。金色の前髪をゆっくりと掻き上げる。凛々しさを意識した青い瞳が紫苑を捉えた。
「貴女は深い森にうっかり足を踏み入れた。でも、それは違っていたんだ。そう、僕は無意識に貴女の姿を追い掛けて、二度と引き返せない恋の森の中に迷い込んでしまったんだ」
劇中の主人公のように悲哀を込めた表情で紫苑を見詰める。
「凝った設定ですね。注文なのですが、メニューに書いてあるものを全て持ってきてください」
翔琉の笑顔は崩壊寸前であった。笑っている目で周囲に助けを求めた。真っ先に優が動いた。二人で記憶を分担して調理場に伝えた。
瞬く間に調理場は戦場と化した。最初に悲痛な声を上げたのはいいなであった。
「なんじゃ、その出鱈目な注文は! どうなっておるのじゃ!」
作り置きの斧型のチョコレートを苺のショートケーキに挿し込んだ。上から鮮血に見立てた苺ソースをぶちまける。
「クッキーはどうなっているのじゃ!」
「もうすぐ焼けるわ」
橘 千歳
がホットプレートでクッキーを焼いている。表面がこんがりと色付き始めていた。
もう一人の調理担当、
桃原 空音
は禍々しい色合いのエプロンを着て筒状の器に食材を詰め込んでいる。
「特製ゾンビパフェはあたしに任せてよ!」
耳慣れない一品に居合わせた二人が同時に声の方に振り向いた。
不吉な名前の通り、器の中に血みどろの世界が表現されていた。持ち込んだ丸いアイスは黒く積み重なって歪な山を形成。大腸を模したゼリー状の物体が周囲に巻かれている。目玉の白玉が至る所に埋め込まれ、頂には黒い墓標が斜めに立っていた。
「ゾンビの手をトッピングー」
空音はクッキーの手を頂の周辺に万遍なく突き刺した。仕上げに赤と緑の液体を交互に垂らしてサイケデリックな仕上がりとなった。
いいなは出来栄えに感心しながらも疑問を口にした。
「空音殿、そのようなメニューはホラー喫茶にないのじゃが、どうするつもりなのかのう」
「メニューに闇鍋があったでしょ。あれって何が出てくるかわからない、って意味に思えるから、その枠で闇パフェを作ってみたんだよ!」
「注文した人が納得するかしら?」
千歳が口を挟んだ。焼き上がったクッキーを皿に盛り付ける。
反対にいいなは邪悪な笑みで、ありじゃな、と言い切った。
各種の飲み物は三人が力を合わせて作り上げた。難局を乗り切って心地良い笑みが浮かぶ。
出来上がった品は翔琉と優が運ぶ。傍から見ていたガイは軽快な動きで手伝った。
「我は良い子だからな」
運び終わるとガイは優に向かって言った。
「注文、いいですかー」
客の声を耳にした優が逸早く動いた。ガイも一緒に付いていく。
「我は良い子だからな!」
ガイは両腕を組んで誇らしげな顔になる。優は客の注文に耳を傾けていた。
「照れる必要はないのである」
無反応な優にガイは横目を向ける。腰の辺りに目が留まった。巻いてあった包帯が解けて先端がひらひらと動いている。その動きを目で追う姿は猫のようだった。
「お代官様が生娘によくやる、『あ~れ~』ごっこをするのである!」
嬉々として包帯の先端を掴んだ。ガイは間髪入れずに引っ張った。注文を聞いていた優の身体が不安定に回る。
「こ、こら、包帯を解こうとするな、このバカ猫が!」
「にゃははははは!」
取り押さえようとする手を掻い潜ってガイは逃げた。別の客の注文が入ると、すぐ行くのである、と声を返した。
包帯を巻き直す優にガイは胸を張る。
「我は良い子だからな」
「わかったから、さっさと行って来い」
優が反応したことでガイは目を細めて笑った。
同時刻、調理場に戦慄が走る。
「あの量を食べ終えたじゃと!」
人目を気にしてはいられない。いいなはこっそりと顔を覗かせた。テーブルに空の器が並ぶ。偉業を達成した紫苑は会計を済ませてのんびりとした足取りで出ていった。
「信じられないわ」
同じように目にした千歳が呆れて見送る。
「あたしが作った特製ゾンビパフェは気に入ってくれたのかなぁ」
空音の独り言に会計を終えた瓢が天井裏から答えた。
「美味しかったらしいねぇ」
「やったね!」
握った拳を突き上げて喜んだ。目の当たりにした千歳は思案に耽るような顔で口にする。
「ホラー喫茶は盛況ね。普通の喫茶も頑張らないと」
「その心配はいらないと思うよぃ」
「どうして、そんなことがわかるのよ」
千歳は天井に向かって声を掛ける。そこにソムリエエプロンを付けた
土方 伊織
が泣きそうな顔で飛び込んできた。
「はわわ、た、大変なことが起きたのです。お、落ち着いて聞いて欲しいのですよ!」
「伊織くんが落ち着きなよー」
空音はのんびりとした調子で返す。そ、そうですね、と伊織は大きく息を吸い込んで吐き出した。
「あ、あのですね。お客様の注文は全部だそうです」
「まさかとは思うけど」
千歳が動いた。空音が続いて、最後にいいなが顔を出す。
こちらに向いた姿で紫苑が座っている。まだかしら、と催促のような独り言を口にした。
再び調理場は殺伐とした戦場に叩き込まれた。
そこにどこかのんびりとした雰囲気の
千鳥 雅人
が入ってきた。白いワイシャツに黒いズボンを穿いていた。
「遅くなってゴメンねー」
いいなは答えられる余裕がなかった。千歳は手を止めずに目だけを寄越す。空音は血走った目で笑って、大変なんだよっ! と精神状態が危うい。
「俺もウエイターで頑張ろうかなぁ」
何となく現状を把握した雅人は肩に掛けた状態で鞄を開けた。中からソムリエエプロンを引っ張り出して手早く付ける。邪魔な鞄は靴先で隅の方に押し込んだ。
その時、客の呼ぶ声が聞こえた。雅人は笑みを浮かべて飛び出した。
「はいはい、いらっしゃいませー!」
頭頂から飛び出た髪が愛想よく振られる。客は一人の女性で紺のスーツを着ていた。細いフレームの眼鏡が理知的な印象を与える。
「こちらのお席が空いていますよー」
雅人は無邪気な笑顔でテーブルに誘導した。女性は椅子に座る直前に花瓶に目をやった。
「綺麗な花ね」
「ありがとうございます!」
雅人は元気よく言った。女性は優しい目となり、テーブルのメニューを手に取る。
「サンドイッチは卵とハム、飲み物はオレンジジュースにするわ」
「わかりました。出社前の一時を楽しくお過ごしくださいねー」
「ありがとう、可愛い店員さん」
雅人の読みは当たっていた。女性はスマホを取り出し、画面に映し出された英字新聞のような文章を読み始めた。
気を良くした雅人はスキップで調理場に戻る。
「サンドイッチは卵とハムで飲み物はオレンジだよー」
「わかったのじゃ!」
切羽詰まった声でいいなが即答した。
「ふふー、俺が来たからには、皆も大船に乗ったつもりでいてよー!」
踏ん反り返る雅人の前で、三人は調理に忙殺された。
人々で混雑した廊下を
深林 真瞭
と
深倉 理紗子
が寄り添うようにして歩いていた。端の方を選択しても子供は平気で当たってくる。避ける隙間を探す方が難しい状況であった。
「こんなに人がいるなんて思わなかったわ。りさちん、具合悪くなってない?」
「ゆっくり休んだおかげかな。大丈夫よ」
理紗子は微笑んだ。その顔を真瞭はじっと見る。裏に隠れている真実を見極めようとしているかのようだった。
「でも、無理は良くないわ。あそこで休むわよ」
真瞭は理紗子の手を握って1年1組の喫茶店に立ち寄った。ソムリエエプロンを着用した
御剣 刀
が切れのある動きで二人を迎える。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
刀は窓際の空いている席に二人を案内した。真瞭は外套を脱いで適当に畳み、椅子に座ると膝の上に置いた。ノースリーブの青いドレス姿に周囲の男性の目が自然に集まる。
気に留めることなく、真瞭は手前のメニューを開いた。
「紅茶のホットを二つ。それと手作りクッキーをいただくわ」
刀は小振りなメモ帳に注文の品を手早く書き込んだ。滑らかな動きで調理場へと歩いていった。
真瞭は横に顔を向ける。理紗子は白いタートルネックを着ていた。手袋を兼ねたように袖は長く、温かそうに見える。下は黒いパンツで活動的に思えた。
「ん、まーちゃん、どうかしたの?」
「仕事着の白と違って、なんか明るい感じに見えるね」
「そうかな」
理紗子の脳裏に普段の姿が浮かぶ。
「そうかもしれないね」
「絶対、そうよ」
真瞭は笑顔で太鼓判を押した。理紗子の表情に陰りは見えなかった。
二人は運ばれてきた紅茶とクッキーで取り留めのない話を楽しんだ。これから行きたいところを次々と口に出して賑やかに教室を後にした。
「りさちん、どんどん見て回るわよ。覚悟してね」
「それはちょっと怖いかも」
理紗子は笑って真瞭に付いていった。
一時の戦場を経て調理場は穏やかな状態を保っていた。少しの反省を踏まえて
大田原 いいな
がドリンクを作っている。
「慣れるには実践あるのみじゃ」
赤さを強調する為にグラスにブラッドオレンジを入れる。眼球を模した白玉を適度に配して普通のオレンジをゆっくりと注ぎ込む。不気味でいて艶やかな二層のオレンジジュースが完成した。
いいなの満足そうな顔が急に強張る。
「ホラーテイストを入れてどうするのじゃ! これは普通の喫茶のオレンジじゃ!」
「オレンジジュースを取りに来たのですけど」
そこに
土方 伊織
が遠慮がちに入ってきた。いいなは表情を緩めてグラスを差し出した。
「ここに出来ておるのじゃ」
目にした瞬間、伊織は顔を引いて震え出す。
「な、なんか目玉みたいなのが入ってないですか~?」
「儂からのサービスじゃ」
いいなの笑顔が深くなる。
「ぜ、絶対に違うのです。グラスの底の方が赤くて、す、すごく心臓に悪い見た目なのですよ~」
「気のせいじゃ」
いいなはグラスを回すように揺すった。オレンジは混ざり合って一色になる。
「まだ目玉が」
「サービスじゃ」
力強い笑顔でいいなはグラスを押し付けた。
「はうぅ、こんなの持っていったら僕が怒られちゃいますよ~」
「諺にもあるじゃろ。可愛い子には無理強いをさせよ、だったかのう」
「無理強いはさせちゃ、ダメですよ~。旅をさせよで、僕が旅立ちたくなったのです~」
「オレンジジュースを届けてからにするのじゃ」
いいなに手で追い払われ、伊織は目を潤ませて注文の品(?)を運んでいった。
「あ、あの、オレンジジュースをお持ちしましたのですー」
「なんか、入っているんだけど」
大学生風の男性が怪訝な顔で伊織を見た。厳しい視線に晒されて頬が赤らむ。告白の返事を待つような初々しい姿で、はうぅ、と子犬が甘えるような声を漏らした。
「まあ、個性的でいいよね」
男性は照れたような顔でオレンジジュースを飲んだ。驚いたような表情となり、グラスを眺める。
「これ、美味しいよ」
「あ、ありがとうございますです!」
一礼した伊織は転びそうになりながら、笑顔で次の注文を取りにいった。
四方に撥ねた髪を揺らしながら
遠野 まほろ
が廊下を気ままに歩いていた。胸に抱いているのは手作りの猫の縫い包みで首には赤いリボンの鈴が付けてある。時に軽やかな音を鳴らした。
まほろはとろんとした目をしていた。目的が無さそうに見えて、その足取りはしっかりとしている。
1年1組の教室の近くで小走りとなった。まほろは足を止めて扉と向き合う。
「……やっぱり、ホラーなんだ」
扉には鮮血に見立てた赤い飛沫が見て取れる。引っ掻き傷に触れると滑らかで誰かが描いた絵であった。
「勘助くんはどっちの喫茶店かな…」
頭の中に過去に会った赤い顔が浮かぶ。まほろはもう一つの扉の前に立った。
「たぶん、こっち…」
扉を開けると、いらっしゃいませ、と声を掛けられた。まほろは少し顔を上げた。過去と同じで
飛吹 勘助
は赤い顔をしている。
「…え、まほろ…? 俺、もしかして、また夢を、みてる?」
「夢じゃないよ…」
まほろはブラブラと手を振る。
「前みたいに手を繋いでなくても…眠くならないよ」
「…あの、えっと……今日は、どうしたの…?」
勘助の慌てふためく姿にまほろはきょとんとした。
「勘助くんのクラスが喫茶店をやるって聞いたから、来てみたんだよ……もしかして、やらないの?」
「や、やっているよ。俺が、ウエイターで、もふもふはウェイトレス…だよ…」
勘助は精一杯の笑顔を見せる。まほろは安らいだ顔で、よかった、と猫の縫い包みを抱き締めた。
「あの…席まで、案内、するよ…」
「その前に…少しいいかな?」
「…もしかして…もふもふが、気になる…?」
まほろの視線に気付いた勘助が聞いてみた。こくりと頷くので、いいよ、とアンゴラ兎の縫い包みを渡した。
「…ギュッて、してもいい?」
「…うん、いいよ…」
まほろは子供っぽい笑みで縫い包みを抱き締める。柔らかいね、と顔に押し付けた。角度によっては情熱的な行為に見える。勘助は頭の中で膨らむ想像に顔を真っ赤にした。
空のグラスを回収した
土方 伊織
は、はうぅ、と同じように頬を赤らめて通り過ぎる。
メモ帳に書き込んだ内容を目にしながら
御剣 刀
が勘助に声を掛けた。
「そろそろ案内しないと席が埋まるぞ」
「あ…そうだね…ありがとう…まほ……遠野さん、案内するよ…」
「もふもふ、触らせてくれて、ありがとう…」
まほろは柔らかい笑みで縫い包みを返した。
「…こちらに、どうぞ…」
勘助の誘導でまほろは一つの席に落ち着いた。ご注文は、と聞かれてメニューに目を向ける。手に取らないで、うん、と頷く。
「…一緒にお茶したり、できる?」
「え…その注文は、少し、無理、かな…」
「そうなんだ…」
しんみりとした言葉に勘助は慌てた。
「ここのオススメは、クッキーなんだけど、俺はイチゴショートケーキが、いいと、思うよ」
言い切った直後に勘助は目を見開いた。自身でも驚く程、滑らかに言葉が出た。
「勘助くんのオススメ、イチゴショートケーキを貰うね」
「…ありがとう。あの、フォークダ」
勘助は言い終わる前に口を閉じた。まほろの不思議そうな視線にぎこちない笑みを見せた。
「…フォークも、忘れないで、持って、くるね…」
元のたどたどしい言葉を伝えて調理場に向かう。
まほろを、フォークダンスには、誘えなかったな。
苦い笑いを区切りにして勘助は給仕に真剣に取り組んだ。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
145人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月22日
参加申し込みの期限
2015年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
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