読書会　～語ろう、あなたの一冊を～｜リアクション

読書会　～語ろう、あなたの一冊を～

【６番手　北玄　前向きな言葉】

「次は僕ですよ！　みんなが興味もちそうな、おもしろくて分かりやすい本、紹介するですよ！」
　そう言って気合いを入れて立ち上がったのは北玄。
　テンションが高く、場の空気が変わりゆく。
　そして、ちらほら興味の視線が玄に向けられる。
　だが、そんな事よりも、彼は一冊の本を取り出し、紹介する。
「智隆名人の『科学の限界』というですよ！　この本は科学の限界について書いた本ですよ！　すごくすごく平易ですよ！」
「平易……なのか」
　修が言う。というか、平易なのはひょっとして玄がそう思っているだけで、他の人からみれば難しいのでは……という疑問もあったが、まずは話を聞いてみることにした。
「たとえば、科学の法則はだいたい帰納法で見つかっているですよ！　帰納法は簡単にいうと、今までそうなったから、同じ条件なら、次もそうなるだろうってことですよ！　でも、今まで太陽が東から昇ったからといって、明日も東から昇るというのは根拠がないですよ！　帰納法を正当化しようとすると循環論法になっちゃうですよ！」
「ふぁ……どういうことなの？」
　目をぱちくりとさせる咲耶。
「料理は同じ材料なら、いつも同じ味になるよねって……ことね」
　丸美がなんとなくかみ砕いて言う。
「ん、なんとなく分かったの！」
　そういう咲耶。
しかし、周りは、なんとか今脳内で言葉をかみ砕いている最中だ。
「一瞬なんのことか分からなかったわ……」
　美野梨はやれやれと首を振った。
　頭が決して悪い訳ではなく、一気に言われたので一瞬頭が混乱したのだ。
「そして、ある科学の哲学者はこう言ったのですよ！　『最も新しく、最も攻撃的で、最も教条的な宗教的制度である』と！」
「……つまり、科学を盲信することは必ずしも正しいとは限らないと言うことだろ」
　巴が結論を先に言う。
「結論を言われてしまったのです！　僕、科学の恩恵を受けて育ってきたですよ！　これからもきっといっぱい恩恵、受けると思うですよ！　でも、科学が万能だと思うのは誤りですよ！　科学的じゃないからという理由で、なにかを強制するのは宗教ですよ！」
　と、主張を続ける玄。
「なるほど、著者はそういうことをその本に書いているのだね」
　そういって庵がその本を受け取りめくる。
「以上なのですよ！」
　そういって、玄は紹介を締めくくった。