僕のにゃるが現実に出てくるなんて好都合過ぎるっ！｜リアクション

僕のにゃるが現実に出てくるなんて好都合過ぎるっ！

●シーサイドタウンの出会い

　寝子島シーサイドタウンの街中には、二宮彰斗そっくりなにゃる、アキが姿を現していた。
　にゃるげの設定ではアキは男、20歳。大学生で主人公の家庭教師をしている。
　アキはシーサイドタウンをぷらぷらとウィンドウショッピングしたり、外にテーブルのあるカフェで、道行く男性に思わせぶりな視線を向けたりしていたが、その平穏は突如現れた思わぬ珍客によって破られてしまった。

「あのう、すいません。よろしかったら、ぜひ私と今からお付き合いしていただけませんか？」

　突然アキにそう話しかけてきたのは、一見した感じでは地味で物静かそうな中年サラリーマンといった風情のバーコード頭の男性だった。
　しかしどうやら、その中年男性はアキをナンパしようとしていたのだった。
　アキは最初はやんわりと断っていたが、サラリーマンは穏やかな口調ながらものらりくらりと一歩も食い下がらない。
　アキがそのしつこさにうんざりし、いよいよどうしたものかと思い始めた時――

「おっさん、もうその位にしておきなよ。彼も本当に嫌がっているじゃないか」

　突如現れて颯爽と２人の間に立ち入り、アキを庇ってサラリーマンに立ち向かったヒーローは屑利執、その人だった。

「これはこれは……これでは形勢不利ですね。それじゃあ私はこの辺で退散させてもらいますよ……失礼……」

　執の毅然とした迫力にひるんだのか、最後まで穏やかな口調を崩さないながらもサラリーマンはその場を退散した。

　実はこれはアキに思いを寄せる執が、何とかその思いを遂げようと、自分のろっこん『降臨の儀』で呼びだした本土に住む地味で物静かな中年サラリーマン『沼田さん』を召喚して打った一芝居だったのだ。
　
（ごめんよ沼田さん、後で育毛剤、奢るから……）

　悪役の衣を着せる事になってしまった沼田さんに執は心の中で涙を流して謝った。

「ありがとーえへへ。こんなところで助けられちゃうなんて。びっくりした、格好良いところもあるんだね」

　何も知らないアキは、助けてくれた執にお礼の言葉を述べる。

「ね、あの人まだ近くにいないかな。……ちょっと怖いから、しばらく一緒にいてくれる？」

「そ、そうだね。だったら一緒に映画でも見に行かない？　今面白いのがやってるんだ」

　会話をうまく選んで、計画通りにうまく映画に誘う事が出来た執。２人は並んでシーサイドタウンを映画館目指して歩きはじめた。

「あっ……」

　どちらからともなく漏れた声。
　それは２人があまりに近くを歩いために、お互いの手がぶつかったからだ。
　２人の視線が絡み合う。どぎまぎする執に意味深に悪戯っぽく笑いかけるアキ。
　そして少しの間があってどちらからともなく手を伸ばし、お互いの手を取って繋ぐ。
　それはそうする事が自然であるかのような流れだった。
　手が触れ合う瞬間、アキの指が執の手首をするりと撫で、執はぞわりとした感触にとらわれ、思わず中腰になる。
　刺激的な時間はまだまだ始まったばかりだ。

　一方その頃、何も知らない本物の彰斗は自分にそっくりな猫耳人間が出没してるなんて露ほども知らずに仕事中であった。

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