巨大虫討伐作戦｜リアクション

巨大虫討伐作戦

【その頃、あと一匹のトノサマバッタの行方】

　山の中では、二人の男が作業をしていた。
「きっちり道具は準備できた。洗剤やろ～バケツやろ～水のペットボトルやろ～ワイヤーやろ、あと暇つぶし用のエロ本」
「まて、最後のは何に使うんだ」
「暇つぶし用や」
　そうやって、わいわいと言い合っているのは須藤清一郎と八神修である。
　なお、エロ本を持っているのは清一郎の方だ。
「とにかく、ここらへんにトノサマバッタがいるのは間違いない、あとはこちらの仕掛けた罠に誘導するだけだ」
（残念ながら俺のろっこんは生物には効かないしな）
　そういって、修は仕掛けを作っていく。
　狙いは、虫の動きを鈍らせ、薬品で窒息させることだが……果たして効くのだろうか。
　さて、準備をしている二人の元へがさがさという音が聞こえた。
「バッタか？」
「準備はまだできとらんで！」
　修と清一郎はそちらを警戒するように振り返る。
「くまぁぁぁぁぁっ！　迷った！」
「「お前か！！」」
　藪の中から出てきたのは熊……ではなく士だ。
　実は事態が動くまで待つつもりだった彼は山の中で迷っていた。
　上空を見上げれば、アキアカネが何かと戦っているのが分かったり、町の方を観察すれば、どこかでバッタが炎上しているのも分かっただろうが、そんな余裕もなくさまよっていたようだ。
「……とりあえず、協力せい」
　士を捕まえた清一郎は、事情を話し協力を要請する。
「おう、迷ってばかりでも悪いしな！」
　そういって、士も協力することになった。
「……こんなものか」
　さて、そういうやりとりをしている間に、修は仕掛けを完成させる。
　丈夫な樹に綱の片端を結んだ物を何個か作り、蜘蛛の糸のようにし、それでバッタを引っかけるという算段だ。
「……よし、固定もできてそうやし……バッタ探すか」
　そういって清一郎は森の中へと入っていく。
「こちらは待機だな」
　修は士に向けて言う。
「作戦は……見てだいたい把握は出来るから問題ない。反対側でフォローしよう」
　そういって、士は修と別の部分に移動し待機する。
　さて、清一郎はほどなくして一匹の巨大バッタを見つける。
　どうやら、これが三匹の内の一匹のようだ。
「さて、作戦開始といこか！」
　そう言って、バッタへ向けて飛び出していく。
「なんか八神によると洗剤をぶっかけると界面活性剤？　的なもんで息ができなくなるんやて、けど、殺虫剤が効かんのに、息を止めれるんか？　まぁいい、やったる！」
　そう言って、発見したバッタに向かって、森で拾った大きめの石やら枝やらを投げつける。
「――？？？！」
　バッタはびくりと、動いたかと思うと一気に清一郎に向かって飛び跳ねて向かってくる。
「ッ！？　思ったより早いねんか！」
　清一郎は、なんとか飛びかかる攻撃をかわしつつ、走る。
　だが、バッタも負けてはいない。
肉を切り裂く強烈な顎が、驚異的な脚力によって弾丸のように清一郎をとらえようとする。
　清一郎は不慣れな山の中も相まって、疲労が蓄積していく……だが、何分か経過したとき、ついに視界の端に修と士それぞれの姿を確認し、罠を張った場所へと走る。
「いいぞ、こっちや！　いくで！　罠準備！」
　清一郎はそう言いつつ、追いかけてくるバッタの気配を感じ、やがて転がるように飛び退いた。
　バッタは飛んでいたので、そのまま網の方へと突っ込み、絡まる。
　清一郎の叫び声のタイミングも良く、修と士はてきぱきと行動していく。
「よし、上手くいった！」
　修がすさまじい勢いで引っ張られる網を見つつ、ほっとした用に言う。
「それにしても、デカい。……食えるかな？」
「いや、やめておこう」
　士はまじめに食材になるか検討するも、修に止められる。
「とりあえず、洗剤を気門に吹きかけるんやったな！」
　清一郎がすばやく行動に移る。　
　網に絡まったバッタの頭の部分へと回り込み、洗剤をまんべんなく吹きかけていく。
「そうだ、これで気門はふさがるはずだ」
　修も続ける。
「念のため、胴体とかは縛り上げておこう、網まだあったよな」
　士は念のためさらに網でバッタの行動を封じていく。
　こうして、三人は見事にバッタを退治するのに成功した。
「……さて、そろそろ本気出すか」
　士は、手伝いつつそんな風に思っていた。

　修達が後始末をしているとき、士は少し離れた場所で空を見た。
どうやら、まだアキアカネは存在しているようだ。
それを確認するとろっこん【天の救い】を発動する。
　架空の寝子島の世界に、局地的に雨雲が集まりはじめた。
　これが、どのような影響を及ぼすのか現時点では分からない……。

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巨大虫討伐作戦

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