シナリオ「巨大虫討伐作戦」

巨大虫討伐作戦

　季節は秋。
　ある日の静かな昼下がり。
　今日も今日とて、寝子島の草木は風に身を任せて揺れていた。

　そんな何事もない平凡な日に、テオはてくてくと肉球をコンクリートに押し付けながら九夜山のふもとを散策していた。
　カサッ
　と、木々の隙間から音がした。テオが振り向くと、そこには小さなトノサマバッタが一匹。ぴょこん、と体格に似合わぬ跳躍力をテオに見せ付ける。
　テオはそれを無視して歩こうとしたが、いかんせん、猫には動いている物を追うという本能が生来より備わっているので、テオの思考とは関係なくテオの体はバッタの方へと向いてしまった。
「くっ……」
　なんとか飛び掛かりそうになる体を自制し、トノサマバッタから目を離す。
　すると、再び、木の枝が揺れた。
　テオが音の方を見ると、木の間から一匹の赤いトンボが現れた。アキアカネだ。
　空の彼方へ弾丸のように飛んでいったアキアカネを一瞥し、ニャゴニャゴ、と口を動かして悪態をつく。
「……秋は虫が多すぎるな」
　ガサガサッ
「今度は何だ？」
　テオは苛立ちながら言う。
　その瞬間だった。
　九夜山の草木の間から一斉に大量の虫達が飛び出し、テオの視界を真っ黒に覆ってしまった。その数は、四桁、いや、五桁はあるかもしれない。ともかく、とてつもない量。九夜山の虫と言う虫が一挙に飛び出してきたかのような光景。
「うおっ！」
　しかし、それも数秒。テオの視界は一気に晴れる。
「……何だったんだ？」
　テオは顔を前足で撫でながら、さながら黒い雲のようにどこかへ飛んでゆく虫の大群に目を向ける。そして、首を捻った。
「でもまあ、特に異変は……」
　テオは周囲を見回して何事もないことを確認すると、再び散策を始めようとした。
　――にしても、なんだってあんな量の虫が……？
　そうテオが考えていると、またしても九夜山の中から音が聞こえてきた。
　ズズンッ
　木々が薙ぎ倒される音。明らかに、虫の出すそれではない。
　――ああ、工事でもやってんか。
　呑気にそう思って、テオは不意に九夜山に目を向けた。
「……なんだ、工事じゃなかったみたいだな」
　普通でない光景がそこにはあった。
　そこにいたのは、巨大なトノサマバッタ。体長、すなわち、胴の長さは二メートルはあるだろうか。しかも、それは一匹ではない。二匹、三匹、と姿を現わす。
　それだけではない。見上げると、空に巨大なアキアカネが飛んでいたのである。こちらも、トノサマバッタと同じくらいの大きさで、三匹。編隊を組んでブオンブオンと不穏な音を響かせている。
「仕方ねえ」
　――万が一があるかもしれない。念のため、切り取っておくか。
　テオは、びょいん、と街の方へ飛んでいったトノサマバッタを面倒そうに見やり、ろっこんを発動した。

　こうして、テオにより切り取られた世界に駆り出された者は巨大虫討伐作戦を遂行することとなったのである。

運営部より

【追記】９月２８日
大変お待たせしておりまして、誠に申し訳ございません。
都合により、本シナリオの担当はじんのマスターに変更させていただきます。
リアクションの公開は、１０月２０日頃を予定しております。

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

じんの／空夜束

マスターコメント

はじめまして、空夜束です。
初のシナリオで拙い面もあるかと思いますが、よろしくお願いします。
虫は「触れるけど嫌い」です。あと、蜂はマジ天敵。

神魂の影響で巨大化した計六匹の巨大虫を倒してください。
トノサマバッタは単体で現れるようですが、アキアカネは編隊を組んでいる上に飛んでいるので人数によっては乱戦になるかもしれません。

とはいえ、所詮は虫。「ひと」でも十分に対処できるようです。さすがに、殺虫剤とかは効かないようですけど。

トノサマバッタは、驚異的な跳躍力を持つ脚と肉を切り裂く強烈な顎。そして、巨大化したことにより強化された外骨格が特徴です。
アキアカネは、羽を生かした俊敏な動き、餌を捕える無慈悲な刺々しい脚。空中からのえげつない捕食行動は注意が必要でしょう。

とはいえ、所詮は虫（大事なことなので二回）。弱点はいくらでもありますから、意外と簡単に倒せると思われます。

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運営部より

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担当ゲームマスター

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