――月華世界・冥晶宮
『贄姫行列』の成功と春祈節を経て、天狼族が『嵐の国』を奪還し、しばしの間穏やかな日々を迎えていた月華世界。
各国の王族が眠る『冥晶宮』では、かつて贄姫として捧げられた乙女たちをはじめ、多くの人々の魂が安息を得られるように、そして今を生きる人々が健やかであるように、と朱雀族の姫・華夜が現代の『贄姫』として祈りを捧げていた。
約一ヶ月にわたるその役目もあと3日となったある日。華夜のフォローとして冥晶宮へ来ていた玄武族の神官・綴は、神殿の掃除や書類整理などを行っていた。
「このまま何事もなく終わればよいのだが……」
呟きながら書類をまとめていると、扉が叩かれる。慌てた様子に胸騒ぎを覚えた綴が扉を開けると、彼の弟子である巫女が叫んだ。
「先生、呪皇軍から宣戦布告がありました! 今こちらに向かっているとの事です!」
「なっ……!?」
突然の出来事に、普段冷静な綴も言葉を失った。
呪皇・愛憐はその日、月華世界にある国々の王たちに宣戦布告を行った。
曰く『呪皇の名において世界への進軍を開始する』
曰く『呪皇に平伏すならば国を滅せず残しておこう。
なれど楯突くならば、我が名において殲滅する』
曰く『初戦は儀礼戦。古の盟約により、宣言しよう。
冥晶宮にて祈る晴ノ国が姫、華夜を贄姫として頂く』
すぐさま華夜の兄王は冥晶宮へと伝令を出し、ここに知らせが届いたのだ。
「これは、由々しき事態……。ここの守りを固めねば」
「援軍が到着するまで、早くても2時間。それまで持ちこたえられますか?」
弟子の言葉に、綴は頭を悩ませる。
彼はすぐさま兵士たちに近辺の様子を報告させる。と、既に呪皇軍と思わしき獣の群が迫っているという。
だが、兵士達の後ろには……見覚えのある人々の姿があった。寝子島の住人達だ。何度も月華世界に来ている者もいれば、初めての者もいるようだ。
「ん? なんか不穏な空気を感じるけれども……お困りかな?」
そう言ったのは、
ウォルター・ブラックウッド。寝子高の英語教師だ。傍らにいた赤い目の少年、
夏神 零も何かを感じたのか、厳しい表情のまま綴に問いかける。
「禍々しい何かを感じるで候。……話を聞かせてはもらえぬか?」
「各々がたに迷惑をかけるのは大変心苦しい。しかし、今、我々にとって各々方の存在がとても重要なのだ。申し訳ないが力を貸して欲しい……」
綴は深々と頭を下げ、状況を説明した。
その話を聞きながら、零は表情を更に険しくする。呪皇が進軍を開始した。その標的になったのは、華夜。話に聞いていた
過去の出来事が脳裏に浮かび上がり、何かの因果を感じてしまう。
(どんどん禍々しいモノが近づいてくる……。援軍が来るまで、持たせなければ)
零は、ぎゅっ、と手を握り締めると、外へ出て行った。
* : * : *
――? ? ?
玉座に腰掛けた呪皇・愛憐は、傍らに控える影の貴人が1人、帳に問いかけた。
「あら? 今回はやけに素直に従ったのねあの2人」
「いえ、あれでも出陣させるのに苦労したんですよ?」
愛憐の言葉に、帳は肩を竦める。そして、忌々しげに虚空を睨みつけた。
「ネコジマの住人達のせいで、彼らも変わり始めていました。そして、刹弦は我々を裏切り……浄化されました。このままでは、貴方さまの悲願が果されません! そんな事にならぬよう、僭越ながら、あの2人には細工を仕込みました」
帳はそう言うと、一礼して下がる。愛憐は「そう」とだけ答えると、小さくため息を吐く。
「全ては、貴方が悪いのよ。私を裏切った貴方のせい。
この世界の無残な姿を視ればあなたはきっと後悔するでしょう、白虹?」
――裏切った白虹を、恨みなさい。
愛憐の声が、空間に解けて消えた。
* : * : *
進軍する呪皇軍。
間近に迫るそれらを見、零は違和感を覚えた。なぜだろう、敵将らしき者から焦がれるような感情と共に相反する苦しみが滲んでくる。
(……何故、このように?)
胸騒ぎが止まらないまま、零は、敵を迎え撃つ。
貴方がたは、のこり2時間……援軍到着まで粘れるだろうか?
菊華です。
前作で「次は探索系の予定」とお伝えしてましたが、諸事情で変更しております。
今回は、冥晶宮防衛シナリオと相成りました。
説明がちょっと長めですが、基本はバトルです。その身体と頭脳で乗り切りましょう!
緊急ミッション:冥晶宮に篭る華夜を護りきれ!
難易度:★★★
(少し判定が厳しめです。成功を目指すなら気を引き締めてください)
※難易度について、くわしくはマスターページをご覧ください。
概要
あと3日で冥晶宮でのつとめを終える華夜を浚いに、影の貴人の1人『燈耶』と『星華』が動きます。彼は頑丈な亀型と、突撃攻撃を特技とする鹿型の魔物を連れて進軍してきました。
援軍到着までは敵の術もあり2時間はかかりそうです。
皆さんは襲い掛かる魔物を倒し、燈耶と星華の手から華夜を護ってください。
敵情報
敵将:燈耶
影の貴人の1人ですが、今回は虚な目をしています。
只管に華夜を浚う事に執着しており、何が何でも華夜を浚おうとします。
彼の望みは『華夜と結ばれる事』につきます。
しかし、表情はとても苦しそうです。
攻撃方法は、以下のとおり
紅蓮の腕(全体攻撃。炎の渦に敵を巻き込む)
茜指す刃(攻撃した相手に炎属性ダメージ)
なお獲物は黒い水晶の刃を持つ剣で、傷つけられると身体の力が抜けます。
PL情報:魔物を結晶化した『魔耀石』の可能性があります。
敵副将:星華
影の貴人の1人で、今回は仮面を被っています。
燈耶の様子を気にしているものの、愛憐の指示にしたがい、冥晶宮の人々を以下のアイテムをつかって惑わします。
赤い金平糖
口に入ると、恋焦がれる相手の事ばかり気になり、その人だけに関わろうといます。
青い金平糖
口に入ると、魔物に対する抵抗力を失い、少しの傷でも腐食の呪いにかかりやすくなります。
PL情報
敵将からは相反する苦しみの感情も漂っています。
その原因はどうやら頭に巻かれた輪にあるようです。
副敵将は、色々と複雑な感情を抱いているようです。
影の魔物
亀型:動きは遅いが防御力がある。また、近づく相手に対し棘を生やして抵抗する。
鹿型:突撃攻撃を得意とする。素早く、回避力にも優れる。正し、若干打たれ弱い。
登場するNPC
華夜
朱雀族の姫で、贄姫たちなどを慰めるべく祈りを捧げています。
戦闘中は祈りに集中しており、動けません。
綴
玄武族の神官で、今回は華夜のサポートをするべく冥晶宮にいました。
今回の戦闘でフォローをしてくれます。
何かして欲しい場合アクションに記載願います。
主な攻撃方法:結界、符術(雷を起こす等)、水を操る
獲物:月長石の槍
ウォルター・ブラックウッド
寝子高の英語教師ですが、巻き込まれました。
今回は戦闘のフォローをしてくれます。
何かして欲しい場合、アクションに記載願います。
主な攻撃方法:投擲、格闘
獲物:月長石の棒手裏剣
所持品:チョーク、スマートフォン、チョコレート
綴とウォルター先生にやってほしい事がありましたら、アクションに記載願います。何もなかった場合、ウォルター先生は前線に、綴は神殿の結界強化の為詠唱に集中します。
また、リアクションスタート時から戦闘終了まで、華夜とは直接話すことが出来ません。彼女に対して何か行いたい場合はモブの神官ないし巫女たちに頼むことになります。
支給品及び持ち込みに関して
※支給品
月長石のバングル
身に着けることで、影の魔物に対する攻撃力が上がります。
また、影の魔物たちが持つ呪いへの対抗手段でもあります。
聖水×1本
影の魔物に効果を齎す水です。かけると弱体化させる事ができます。
また、影の魔物から攻撃された後に服用すると、呪いを緩和できるようです。
月長石の武器
希望者は次の中から1種類だけ武器を借りることが出来ます。
・刀 ・長刀 ・棒手裏剣 ・弓矢(月長石の鏃の矢です) ・ナイフ
持込に関して
今回は、緊急事態として急に呼ばれました。
平日に持っていてもおかしくないものを全部で3つまで持ち込み可能です。
月華世界の住人
希望する方は、月華世界の種族に変身することも可能です。
白虎族
戦闘能力に優れた種族。白い虎にもなる事ができます。
白虎の耳と尻尾を生やすか否かはご自由に。
朱雀族
赤い翼で飛ぶことができ、熱や炎を操ることができます。
背中に赤い翼が生えます。
青龍族
雷や重力を操ることができ、角を持ちます。
龍に変化できません。あしからず。
玄武族
結界や水を操ることができ、見た目より頑丈です。
刃物で刺せません。分身たる亀(若しくは鼈)を1体召還できます。
麒麟族
治癒能力を持ち、人によっては運を無意識に操ります。俊足です。
髪が長くなりやすく、角を持つ人もいます。
天狼族
浄化の光を放つことができます。狼にもなる事ができます。
狼の耳と尻尾が生えます。
・変身できる種族は、1シナリオにつき1種類のみです
変身しないことも選択可能です(シナリオの途中での変身も可能)
・変身したからと言って愛憐の呪いの対象にはなりません(現段階では)
・同じ種族に連続して変身し続けると、種族としての力も上手に使えるようになります
・寝子島では月夜以外変身できません
・もれいびは『ろっこん』が、ほしびとは『星の力(虹)』が使えます。
ひとは『ろっこん』がない分、種族の力が強めです。
これまでの月華シリーズ
読んでなくても問題なくご参加いただけますので、ご安心ください。
1話完結のこともあれば、前作参加者が優先される明確な続き物のこともあります。
・月夜に囚われし姫君を救え
・トワイライト・フェアリーテイル ―逃げ出した姫―
・ふわりふる真珠、月の都の異邦人
・トワイライト・フェアリーテイル ―鳥篭の姫―
・狼は九夜山に吼える?
・漆黒の進撃・桜花寮篭城戦!
・<月華> 宵闇邂逅 ~それはフツウを壊すモノ?~
・<月華>トワイライト・スターダスト ~甘い星は島を蝕む~
・<月華>風花は、白く冷たき針
・<月華>月昂崩落 ―捧げられた姫―
・<月華>闘華降煌 ~求めよ、さらば与えられん~
・<月華>銀雷の夜 ――嵐の国奪還戦――
それではよろしくお願いします。