とある夕暮れのねこったー
「十二単のお姫様が飛んでる」
「え? そんな冗談でしょう?」
「ううん、ホント。旧市街の空に羽衣をつけた状態で」
「あれって相原先生じゃない?」
* * * * *
「ん?」
相原 まゆは仕事をはやめに終え、寝子高から旧市街にある自宅へ向かっていた。その途中で、ふわり、と夕焼けに漂う綺麗な着物をみつける。
「な、何よこれ……。誰かの悪ふざけかしら?」
不思議に思いながらも見つめていると、その着物は音もなくまゆへと襲い掛かり、彼女へと覆いかぶさる。
「きゃあっ?!」
悲鳴を上げたまゆだが、気がついたとき、彼女は十二単を纏ったまま空を飛んでいた。良く見れば、虹のような色合いを見せる羽衣も持っており、髪も長く長く伸びて風に踊っていた。
「な、なななんなのよこれ?! まるでかぐや姫みたいじゃない!」
「ええ、そのとおりです」
良く見ると、目の前に自分の衣服を着た黒髪の女性が浮かんでいた。顔だけみればどことなくまゆに似ているが、違うところといえば胸が小さいところと黒髪という辺りだろうか。だが、次の瞬間には、まゆと同じ色の髪になっていた。胸もまゆ並みに大きくなっていた。まゆと瓜二つの姿となった女性はもう一度くすっ、と笑った。
「私の代わりになってください。私、退屈してますの」
それだけ言うと、女性はふっ、と姿を消す。まゆは声をかけようとしたものの、間に合わなかった。
「ちょっとどういうつもりよぉ~! 私には仕事とかあるんだから~~!!」
* * * * *
旧市街のどこか。まゆに扮した女性――華夜――は楽しげに笑って町を歩く。
(ふふっ、素敵な殿方がいっぱいね)
彼女はまゆの家に帰るとシックな衣服に着替え、化粧もしなおし、黄昏の町を楽しげに歩いていく。空を見れば、十二単を纏って空に浮かぶまゆの姿が見える。よく見れば、空のかなたに虹色に輝く門が見えていた。あの中にまゆが入れば、完全に自分は入れ替わる事が出来る。
「ごめんね。そっくりさん。でも、お姫様でいるの、疲れちゃったの。宮廷の殿方はみんな面白くないし、お兄様もうるさいし」
華夜はそういうと、すれ違った男性を見て「あら、ステキな方」と胸をときめかせる。同時にふわり、と背中から紅の翼が生えるのであった。
* * * * *
そんな中。神魂の悪戯だろうか?
あなた方にこんなメールが届いた。
『相原まゆ教諭と入れ替わった存在アリ。
捕まえて正体を暴けば相原まゆは戻ってくる。
相手は、朱雀族の姫、華夜。異世界の月の姫君だ。
もし、相原教諭を取り戻さなかった場合……歴史が少し変わってしまうぞ』
果たして、朱雀族の姫、華夜はどこにいるのだろうか?
今回は異世界の月の姫、華夜(かよ)の策略により、相原先生がえらいことになっています。どうか助けてください。でないと……何故か歴史が変わります。
難易度:★★★★
(判定が厳しいシナリオです。油断すると、痛い目を見ます。)
※難易度について、くわしくはマスターページをご覧ください。
概要
異世界の月の姫・華夜
彼女は朱雀族の姫であり、向こうの世界で言えば結婚適齢期にあたる20歳です。
最近は高貴な男性と見合いをするのですが、そのだれもに面白みがもてずにいました。
そんな彼女が偶然みつけたのがこの世界の体育教師である相原 まゆでした。
華夜はまゆと魔術によって入れ替わりました。
現在は普段のまゆとまったく同じ姿をしています。ただし逆ナンしているので
すぐにわかるかもしれません。
彼女を捕まえて朱雀族の証である赤い翼を出させたらまゆを取り戻す事が出来ます。
相原 まゆ
華夜の魔法によって入れ替わってしまいました。
現在は十二単を纏い、夜の空を飛んでいます。このまま進むと空に浮かんだ虹色の門に吸い込まれ、入れ替わってしまいます。
まゆが門をくぐってしまうと元に戻れません。
そして何故か歴史に響きます。まゆ先生が関わってきた事からほつれ、影響が出るようなのです。場合によっては日本や寝子島の歴史が書き換わる可能性もあります。
制限時間に関して
相原先生は、ゆっくり空を飛んでいます。
時速5キロといったところでしょう。
門まで到達するのに残り2時間ぐらい、だと思ってください。
また、アクションによっては空を飛んでいる相原先生を回収する事も可能です。その場合は制限時間がなくなり、「まゆと華夜を会わせ、相手の正体を明かす」事で入れ替わりを解くことが可能になります(正し、難易度は高めです。ただ空を飛んで捕まえるだけでは相原先生を救出できません)。
登場NPC(相原先生と華夜以外)
桐島 義弘
仕事帰りに買い物があり、ちょっと旧市街に来ています。
相原先生は見かけていますが、異変に全く気づいていません。
五十嵐 尚輝
ろっこん『バードサンクチュアリ』が発動し、頭で鳥が鳴いていますが、
さほど気にしない状態で旧市街の金物屋に来ています。
それではよろしくお願いします。