――月華世界・? ? ?
この日、影の貴人である星華と燈耶は仲間の帳に呼ばれて研究室にやってきた。もうすぐ『嵐の国』自体を破壊するための作戦が始まる為だ。
「ようこそ、私の研究室へ」
「……刹弦はどうした? 彼も貴人の1人。戦に出るのではないか?」
燈耶が問えば、帳はくすり、と笑う。彼女は腰に下げていたホルダーから何かを取り出すと、ぷしゅっ、と音を立てて壁が開いた。
その中にあったものは、水晶の柱が入った大きな筒のような物だった。よく見ればその中に刹弦が入っている。これに星華と燈耶は眼を見開いた。
「これは一体どういうことだ!」
「そうですわ。何故、刹弦をこのような……」
帳は僅かに目を細め、冷たい眼差しを星華に向けながらため息をついた。
「刹弦には装置の一部になってもらうわ。本当は星華、貴方に入ってもらう予定だったんだから」
そう言いながら、帳は筒を軽く叩く。
「
呪皇様の恩を忘れたら、貴方達もこうなるわよ?」
燈耶は僅かに顔をしかめ、泣きそうな顔になる星華を背後に庇う。そして、帳の眼を見て静かに言った。
「確かに、私達は呪皇様のおかげで半分は救われた。だが、刹弦は……」
「黙りなさい。貴方も寝子島とやらの存在に絆されたの?」
帳の鋭い言葉が突きつけられる。彼女は悲しげな顔でこう言った。
「私、本当は男って身勝手だから大嫌いなのよ。呪皇様もそういう気持ち、お持ちなのかもしれないわね」
帳はそこまで言って漸く普段の穏やかな顔になり、静かに作戦について話し始めた。
――月華世界・神酒の国
その宮に呼ばれた寝子島の住人達を待っていたのは、天狼族の王、ライメイだった。
サキリ・デイジーカッターは彼の厳しい表情を見、己の表情を引き締める。
(なんとなく、予測はついているんだけれども……)
サキリがそう内心で呟いていると、ライメイは静かに寝子島の住人達へと話し始めた。
「集まってくれて、ありがとう。今回は、春祈節の時に話していた『嵐の国』の封印を解く作戦について説明するためだ」
ライメイはそういいながら大きなテーブルに地図を広げ、説明を続ける。
「これは、嵐の国が封じられているあたりの地図だ。今回はこの神酒の国から入り、封印の施されている祠を目指す。ただ、予見では呪皇軍がなにやら策を張り巡らせているらしいな……」
そう説明していると、彼の元に身軽な服装の男性が姿を現し、ライメイの耳元で何かを話した。ライメイはその男性に礼を述べて下がらせる。
なんとなくとその様子をみていると、ライメイが再び口を開く。
「今、偵察部隊が戻ってきた。曰く、大きな石人形っぽい物がうろついているそうだ。その他にもやはり、影の魔物もいるようだな……」
ライメイはそういいながら地図に得た情報を書き込む。そして、「あと……」と少し心配そうな顔になって言葉を続けた。
「水晶の柱が、祠の前に刺さっていたそうだ。それを中心になぜか吹雪が舞っていると」
その一言に、嫌な予感を覚えたサキリは、表情が険しくなっていた。
――作戦の決行は、魔力が高まる夜。
浄化の力も、この時が強まるらしい。
だが、影の魔物も強い時間帯なのだ。
「作戦に参加する、しないは君達にゆだねる。……できる事ならば、我々天狼族に、月華の住人に手を貸して欲しい」
ライメイは、真剣な眼差しで一同に頭を下げた。
菊華です。
月昂崩落の結果を受け、今回は封じられた『嵐の国』の解放作戦と相成りました。
戦闘だけではありませんっ!!
『ひと』も『もれいび』も『ほしびと』もみんなあつまれ~!!
説明が長くなってしまいますが、頑張って読んでくださいっ!
概要
『嵐の国』とは?
月華世界にある国の一つであり、天狼族の王が国を治めていました。
ですが、魔物の大軍に襲われた過去を持ち、現在は月光の力と共に封じられています。
今回は『魔物と石人形を退け、水晶の柱を破壊した上で封印を解く』事がメインです。
リアクションは作戦開始直前、戦場に到着した場面からスタートします。
難易度:???
成功条件:祠へ行き、封印を解く
PCが水晶の柱を破壊する
失敗条件:ライメイの死亡もしくは重傷
呪皇軍が祠を破壊する
皆さんは、以下の戦場で暴れてもらいます。
<封印の地の現状 略図>
祠
柱
石 石
(魔物がうろついている)
敵情報
・影の魔物
今回は豹のような魔物と、鴉のような魔物がうろついています。
豹タイプは素早く、牙には体を弛緩させる毒をもっています。
鴉タイプは熱を操り、爪で引っかかれると火傷します。
・石人形(2体)
黒曜石のようなものでできたゴーレムです。
力任せに殴ってきます。ただし動作は遅いです。
PL情報
石人形のどちらかに帳が憑依しています。
石人形を倒す事で帳が召還されます。
彼女の戦闘手段は明らかになっていませんが、予測が的中すると……?
・水晶の柱
六角柱上の水晶の柱です。
大人の男性が1人まるまる入ってまだ少し余裕があるほどの太さです。
中には、影の貴人が1人『刹弦』が入っています。
この柱の効果は『気温を下げ、吹雪を齎す』ことです。
この所為で周囲はとても寒くなっています。
因みに、雪が眼に入っても心を凍らせませんが体内に入ると眠たくなります。
支給品
月長石のバングル
身に着けることで、影の魔物に対する攻撃力が上がります。
また、影の魔物たちが持つ呪いへの対抗手段でもあります。
聖水×3本
影の魔物に効果を齎す水です。かけると弱体化させる事ができます。
また、影の魔物から攻撃された後に服用すると、呪いを緩和できるようです。
青龍の防寒具
薄くて丈夫で暖かい、青龍族お手製の防寒具です。
しかし、今回はコレをまとっていても寒いようなので工夫が必要でしょう。
月華世界の住人
希望する方は、月華世界の種族に変身することも可能です。
白虎族
戦闘能力に優れた種族。白い虎にもなる事ができます。
白虎の耳と尻尾を生やすか否かはご自由に。
朱雀族
赤い翼で飛ぶことができ、熱や炎を操ることができます。
背中に赤い翼が生えます。
青龍族
雷や重力を操ることができ、角を持ちます。
龍に変化できません。あしからず。
玄武族
結界や水を操ることができ、見た目より頑丈です。
刃物で刺せません。分身たる亀(若しくは鼈)を1体召還できます。
麒麟族
治癒能力を持ち、人によっては運を無意識に操ります。俊足です。
髪が長くなりやすく、角を持つ人もいます。
天狼族
浄化の光を放つことができます。狼にもなる事ができます。
狼の耳と尻尾が生えます。
・変身できる種族は、1シナリオにつき1種類のみです
変身しないことも選択可能です(シナリオの途中での変身も可能)
・変身したからと言って愛憐の呪いの対象にはなりません(現段階では)
・同じ種族に連続して変身し続けると、種族としての力も上手に使えるようになります
・寝子島では月夜以外変身できません
・もれいびは『ろっこん』が、ほしびとは『星の力(虹)』が使えます。
ひとは『ろっこん』がない分、種族の力が強めです
登場NPC
ライメイ
天狼族の王です。彼が作戦の指揮を取ります。
彼自身も棒を使った格闘術をたしなんでいるようです。
牛瀬 巧
過去にライメイと遭遇した事のある寝子高教師です。
今回は手伝いに参りました。
因みに、天狼族へ変化しています。
ライメイと牛瀬先生にやってほしい事がありましたら、アクションに記載願います。
何もなかった場合、牛瀬先生は前線に、ライメイは少し下がって指揮に専念します。
ただし、作戦がうまく進まなかった場合……。
帳
影の貴人が1人で、強気そうな女性です。
元は玄武族だったらしく結界を操ります。
その他影の魔物を結晶化させて道具にしたりできます。
刹弦
影の貴人が1人で、寝子島の住人達の説得により浄化されかけました。
ですが現在は……。
これまでの月華シリーズ
読んでなくても問題なくご参加いただけますので、ご安心ください。
1話完結のこともあれば、前作参加者が優先される明確な続き物のこともあります。
・月夜に囚われし姫君を救え
・トワイライト・フェアリーテイル ―逃げ出した姫―
・ふわりふる真珠、月の都の異邦人
・トワイライト・フェアリーテイル ―鳥篭の姫―
・狼は九夜山に吼える?
・漆黒の進撃・桜花寮篭城戦!
・<月華> 宵闇邂逅 ~それはフツウを壊すモノ?~
・<月華>トワイライト・スターダスト ~甘い星は島を蝕む~
・<月華>風花は、白く冷たき針
・<月華>月昂崩落 ―捧げられた姫―
・<月華>闘華降煌 ~求めよ、さらば与えられん~
それでは、よろしくお願いします。