いざ行かん、買い物日和！｜リアクション

いざ行かん、買い物日和！

　５月は、丹羽紅葉が特に世話になっている２人の先生の誕生月だ。
（二人に誕生日プレゼントを贈りたいけれど、何がいいかしら）
　と考えて、紅葉は色々なショップを覗いてみることに決めた。
　お出掛けに当たって、ふんわりとさせたシニヨンで、髪型は清楚＆大人っぽく。
　萌黄色のゆったりとしたロングワンピースには、かすみ草が散っている。
　重ねて纏った、上品なフリルが彩る前開きタイプの白のワンピースをふわと揺らして、
　――カラン、コロン。
　と入口のベルを鳴らし、紅葉は、先ずは大人の女性向けのアイテムを取り扱うショップへと足を踏み入れた。
　品良くもきらきらしい小物達を前に、紅葉は口元に手を宛がって思案する。
（あれも、これも素敵。だけど、ただでさえ生徒からの贈り物って扱いに困るものかもしれないし……）
　あまり高そうなものとか大きなものは避けた方がいいわよね、と、紅葉は小物コーナーへ。
（カップケーキを作って、それに小物を添える位なら大丈夫……かしら？）
　受け取ってもらえますようにと願いながら、思い浮かべるのは若林沙穂先生の顔。
（……そうだ、沙穂先生にはシュシュとイヤリングなんて良いかもしれない）
　若林先生の誕生日は、５月１７日。
　誕生花は何だったかしらと、紅葉はスマートフォンを取り出し、そこに指を走らせた。
「ええと……わ、フクシア」
　零した呟きが、ぱっと華やぐ。
　フクシアは、釣鐘型の、品がありながら愛らしいフォルムの花だ。
　紅葉は早速、とりどりの小物の中にフクシアを思わせるアイテムを探した。
（釣鐘型のイヤリング、なんて素敵よね。綺麗なのを探しましょう。ああ、それから――）
　フクシャ色のシュシュ、というのも魅力的だ。
　時間をかけて、これだという品達を選び取る紅葉。
　納得の行く物を買い求めて、紅葉はまた別の店へと足を向けた。
　今度の店は、紳士物も含め、幅広いアイテムを取り扱うショップだ。
　次のお目当ては、ウォルター・B先生への誕生日プレゼント。
（誕生花であわせると、ウォルター先生はクレマチス……）
　これもまた、素敵な花だ。……が、しかし。
（うーん、紳士物で花柄ってなかなか難しいわね……）
　最初に琥珀色の双眸に留まったのは、ティーカップ。
（だけど、拘ってそうな気もするし……）
　ネクタイやハンカチならばと思ったが、これが中々見つからない。
「浴衣の柄では見かけるけれど……あ！」
　ついつい、声が少し跳ねた。
　視線の先には、これからの季節に向けた扇子を扱うコーナー。
（そろそろ汗ばんでくる季節だし、うん、いいかもしれない）
　早速、沢山の扇子の中にクレマチスを探す。
　じきに――紅葉は扇子の山から、白いクレマチスが咲き誇る１本を見出した。
「よし、これにしましょう」
　一つ頷いて、宝物を抱くようにしてレジへと向かう。
　先生達の笑顔を思い浮かべれば、自然、口元に柔らかな微笑が乗った。