酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
(うら寂しい空気が漂う廃教会。
そこへ置き去られたままの教壇へ
「ここは私の席だ」とでもいうように
自然な形で腰掛けて。)
…ねぇ。
極平凡な存在が特別な存在に成ろうとする事と
特別な存在が極平凡な存在に成ろうとする事。
そのどちらが大変なのかしら。
どちらがより苦しいのかしらね…?
(静寂を震わせるは少女の独り言めいた問い。
少女はそれきり口を噤み。
孤独の響きを孕んだ声は、静寂に呑まれ、溶け消えて。)
…………。
(ただ受け止めるのみ、答えを返さぬ「彼女」にか
その様な疑問を抱かずにはいられない自身にか
長い睫毛を震わせて、青の瞳を伏せては苦笑する。)