酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
寧々子さんの気持ちわかるわ。
やりきれないわよね。
昔みたいに仲良くしたいのに、どうしてって。
でも私、八千穂さんの気持ちもなんとなくわかる気がするの。
これは私の勝手な想像。
だから事実とは違うかもしれないけれど。
八千穂さんもきっと、寧々子さんと昔のように
仲のいい姉妹に戻りたいのよ。
だけど、そうしない。そう出来ない。
だって、そうすれば寧々子さんまでお婆様に悪く思われるかもしれない。
大切な姉である寧々子さんに、これ以上の迷惑はかけられない。
使用人としていさせて貰えるだけ幸福だ。
自分は本来、いるべきでない存在なのだから
それ以上を望むべきじゃない。
そう考えているのかも。
…私が八千穂さんの立場だったら、きっとそんな気持ちになるわ。